「つ、つまりですね? ワタクシ、タマちゃんさんの使い魔になってしまったんです」
頬を赤らめ上目遣いでそう告げるアリアさん。
可愛い♪
ちょっと興奮した。
が、興奮している場合じゃない!
「えっ、使い魔!? アリアさん、俺の使い魔になったの!?」
「そうみたいです……。おかげで今度はワタクシの方がタマちゃんさんと1メートル以上離れられなくなりました」
「ま、マジか……? あっ! でもさ、もう1度【使い魔契約】を破棄すれば!?」
「無理です。誤作動とは言え、聖地の魔力は昨晩使ってしまいました。次に魔力が溜まるのは早くて5年、遅くて10年後です」
ふるふると首を横に振りながら絶望的な事を口にするアリアさん。
おいおい、マジかよ?
それじゃ俺は5年間もこの美少女と寝食を共にしなければいけないと言うのか?
この優しくて気立てもいい、気品あふれるロイヤルお姫様と一緒に……。
朝も昼も夜も一緒で、お風呂も着替えも寝る時も一緒。
……ナニそれ? 最高かよ?
俺は今初めてあの変態オカッパメガネに感謝した。
「今度はお姉ちゃんが使い魔になっちゃったの?」
「そのようです」
「じゃあ、これからはお姉ちゃんがタマちゃんのタマタマを一緒に探すんだね!」
無邪気に笑みを溢すリリアナちゃんに、困ったような顔を浮かべるアリアさん。
困惑している彼女の愛らしい。
結婚したい。
「そ、その前に1度、金色水晶様にお会いしに行きましょう!」
「あの猥褻物に?」
アリアさんは「はいっ!」と大きく頷きながら、ゆっくりと立ち上がった。
「あの全てを見通す金色水晶様なら、ワタクシとは違う【使い魔契約】の破棄の仕方を知っているかもしれません!」
グっ! と拳を握りしめ、そう口にするアリアさん。
よほど俺と一緒に居たくないのか、必ず【使い魔契約】を破棄するという意思が身体の節々からオーラとなって飛び散っていた。
ふっ、俺も嫌われたモノだな。
あと少しメンタルが弱ければ、膝を抱えて泣いているところだ。
「さぁ行きましょう、タマちゃんさん! 金色水晶様の居るあの祠へ!」
「えっ? 俺も行くも?」
「当然です! ワタクシの行動はタマちゃんさんを基盤に1メートル以内しか動けないのですから!」
ハリーアップ! と戸惑う俺の手をむぎゅっ! と掴むアリアさん。
柔らかい、好き♪
だけどちょっと待って欲しい。
「ま、またあの険しい道のりを行くんですか? 流石に2日連続はちょっと……」
「安心してください。今日は乗り物で行きますから、楽チンですよ」
「乗り物?」
『そんなモノがあるのなら、昨日のうちに出しといて欲しい』という気持ちをグっ! と堪える俺を横目に、アリアさんはどこか自慢げに笑みを溢した。
「はい。ワタクシのペットのマッポちゃんです。今日は彼女に乗って祠まで行きます」
「アリアさんのペット……」
王族のペットか……それはさぞ高貴な生き物に違いない。
多分俺が想像している100倍くらい高貴な生き物に間違いない!
ヤッベ、ちょっと会うのが楽しみになってきた!
「よし、行きましょうアリアさん! マッポに乗って!」
「はい、行きましょう! 金色水晶様の居るあの祠へ!」
「ボクは授業があるからお留守番しておくね?」
いってらしゃーい! と手を振りリリアナちゃんをその場に残して、俺とアリアさんは部屋を後にした。