目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第47話

目の前の男から読み取った記憶には、VRMMOとそれをプレイするための端末デバイスの活用が刻まれていたのだ。


VRMMOとは、仮想空間世界で疑似体験するオンラインゲームのことで、多くのユーザーに利用されている。


一時期までは家庭用ゲーム端末やスマートフォンなどのモバイル端末でプレイされていたが、近年ではアメリカの世界的ITメーカーより専用ヘッドマウントデバイス"NOAH"が発売され、日本企業が開発して同時リリースした神ゲー"DRIFTERS"と共に爆発的なブームを生んだ。


新開発されたNOAHのCPUはゲーム機のスペックを遥かに凌駕しており、これまでは実現できなかったバーチャル空間でのアクションを現実以上のものに引き上げた。


さらに、空間環境処理を担うLSIでも国際特許となる技術が惜しみなく使われ、プレイヤーの視覚や聴覚、嗅覚までにも影響を及ぼす仕掛けが可能になったのだ。


この家庭用機器を逸脱したハイエンド・ゲームユニットは、何度かハッキングやその他犯罪に用いるためのベース機器として使用されて社会問題となっている。しかし、その度に国家クラスの強権で騒動を握りつぶされたという噂が立った。この辺りに何らかの裏事情が絡んでいると考えられる。


売れるべくして売れたハードウェア。


それに絶大なシナジーを及ぼしたのが、"DRIFTERS"を生み出したベンチャーゲームメーカーのブルーオーシャン合同会社だった。非公開ではあったが、ブルーオーシャン合同会社はNOAHを開発したハイズビル・コーポーレーションのデベロッパーだったのである。


ゲーム業界におけるデベロッパーとは、実際にゲームを開発する会社や集団を指す。一方、そのデベロッパーに下請けとしてゲーム製作の依頼を行う─相互に企画を出しあうこともあり─会社をパブリッシャーと呼び、ハイズビル・コーポレーションはそれにあたった。


ハイズビルというと超能力研究の始まりと呼ばれるハイズビル事件を連想するが、これはおそらく偶然ではないだろう。


ハイズビル事件は、1848年にアメリカのハイズビルという田舎の街で行われた交霊ショーに関連した。


これは霊能力の一種をショービジネスとして開催したものである。これを発端として全米、およびイギリスにも交霊ショーのブームが到来し、各地域で嘘か本当かわからない霊能者が続々と現れ、交霊ショーも頻繁に行われるようになった。その熱狂的なファンが後に超能力や超常現象の研究、霊の科学的研究を目的とした英国心霊研究協会SPRを立ち上げたのである。


因みに、ハイズビル事件の当事者である姉妹が後に自らの行いは「詐欺だった」と公言しているが、現在でも一部の心霊研究家やスピリチュアリストの間では彼女たちの能力は本物だったと思われているそうだ。






この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?