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第6話

「どうじゃ少年。 メイド一人......派遣してやろうか?」

「まじか!!......いや待て。流石にそれは」


 魅力的な提案に二つ返事しようと思ったが、蓮は耐える。

 だがすでに流水の手中にハマる。この好機を逃すまいと提案は続く。


「そうじゃ、さっきのメイドはどうじゃ?お主と同年の銀髪碧眼の美少女メイド。ちょうど少年の持っている雑誌と同じじゃの」

「......銀髪碧眼......美少女」

「考えてもみぃ。メイドの作ったご飯が食べれる、お風呂のご奉仕、おやすみご主人様の寝る前のアフターケア......まさにお家メイドプレイ」

「......お家メイドプレイ」


 悪徳勧誘のような手口。だが、この時の蓮は現実を見ず惹かれていた。

 いいじゃないかお家メイドプレイ...... と。

 お家メイドプレイ。それはメイド好きの蓮の想像すらしなかったこと。

あとは流れるように蓮は流水の口車に乗っかり屋敷から銀髪碧眼のメイドを派遣してもらうことになった。

 後に蓮は後悔した。詐欺にあったのだ。

 今蓮は振り返るとちょっとした契約書を一筆したが、「お家メイドプレイ」に関することが記載されてなかった。ただ、柳=ロゼリア=サキという銀髪メイドを派遣するという内容のみだった。

 それをサキ本人に確認をした。


「お家メイドプレイ?なんですかそれは」


 だが、派遣当日、蓮は初対面で銀髪碧眼美少女メイドにゴミを見る目で見られた。

 ゴミを見る目で見られて萎縮したが、蓮は 続けて「メイドさん。これからよろしく!」と馴れ馴れしく接したら機嫌が悪くなった。

 挙げ句の果てに、蓮と流水の会話を知ってからは冷たい目で 「メイドをなんだと思っているんですかこの変態」 なんて罵られた。

蓮は流水に他のメイドさんにしてもらおうと頼んだが 「契約書にサインしたではないか?変更は無理じゃぞ?」と言われてしまい、サキに契約やめるかと聞いたら「......仕事ですから」 と言われた。


 そんな一幕があり、サキは蓮の家に来てくれるようになったが、思いの外楽しい日常を過ごした。何より、家に自分の銀髪メイド萌ドストライクのサキが家に来てくれるのだ。

 まぁ、来るたびに揶揄われるが。

 それでも蓮にとっては銀髪メイドが来るだけで楽しいし、初めはぎこちなかったが、時間が経てば揶揄われる毎日も悪くないと思い始めた。

 サキの能力は目を見張るものがあった。彼女は万能メイドだ。

 とにかく飯がうまい。どう作ったんだよとツッコミ入れたくなるほどの豪華な料理。

 しかも業務スーパーや冷蔵庫の残りものの材料だけで作られていた。


 サキはミスなどしない完璧メイドだが、一度だけミスをしたことがあったのだ。


「あ、あのメイドさん。この部屋にあったものは?」

「......邪魔だったのでご主人様の実家にメイド雑誌を郵送しました」

「......ご、 ごめん。 もう一回言って」

「邪魔だったのでご主人様の実家に郵送しました」

「......ま、まじかよ」


 蓮は両手両膝をつき絶望した。今頃、家族に引かれている頃だろう。

 サキはその姿を見て鋭い視線を向けていた。まぁ、蓮の家族は蓮がメイド雑誌を集めていることを知られているので別にいいかとその後はケロッとしていた。

 その一件がきっかけだったのだろう。2人は徐々に打ち解けるようになった。

 派遣が始まり、サキに掃除炊事をしてもらい、時に揶揄われたりするなど、そんな日々を過ごしていたが、さらに2人の関係に変化が生じたのは蓮が夏休みに入った後、彼女がほんの気まぐれで起こした事件であった。


 サキが蓮の家に向かう最中、急な天気雨でずぶ濡れになってしまった日のこと。

 サキは濡れた服を風呂場で蓮から借りた服に着替えた。

 着替えが終わり、浴室から出ようとした時、サキは蓮を揶揄おうとした。


「ご主人様、すいませんが鞄を持ってきてくれませんか?替えの下着を出すのを忘れてしまって」

「......は?」


 サキは扉で体を隠しながら顔のみを出し、蓮は固まった。


「は、 はいメイドさん」


 蓮はオドオドしながら冷静を装う。ゆっくりとサキの鞄を渡す。

 その姿を見て悪戯心を持ったサキはわざとらしく扉を開いた。


「......あ」

「ふぁ!」


 蓮は条件反射で手で目を覆った。


「どうしたんですかご主人様」

「い、いやだってまだ裸!」

「ご主人様の妄想癖は存じてますけど、私はそんな痴女じゃありませんよ?」

「え?」


 蓮はゆっくりと視線を向けると......サキは蓮から借りた服を着ていた。

 サキはフッと鼻で笑いながらこう言った。


「変な妄想はやめてくださいね」

「あ、はい」


 やられたぁぁ!気がついた時には遅かった。


「......残念でしたね」

「べ、べ、別にそんなこと思ってねぇし!」


 サキは蓮の考えはお見通しだった。

 やられっぱなしは尺に合わないと考えて。だから、蓮はサキに仕返しをするために。


「じいさんどう思うよ。酷いと思わないか?」

「お主たちが楽しくやっているようで安心したわい」


 蓮は流水を頼るのだった。

 流水は事の顛末を聞き嬉しそうにしていた。



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