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第15話 不安な開拓

 死人使い……確かその名前は冒険者ギルドでAランクという実質的にはトップランクの人物だった筈だ。

何故そのような人がこのような辺境に居るのだろうか……。

しかもこの二つ名と防衛隊隊長の発言を合わせるとその人は死霊術使いであることが容易に想像が出来る。


「いえ、こちらに関しては私達の領分なので気にしないでください」

「皆には迷惑を掛けないから安心して欲しいっすよ」


 そうは言うけど同行する以上関わる事になるのは容易に想像が出来る。

ダートやコルクも同じ考えなのか複雑な顔で二人を見ているが……それは当然だと思う。

命を預けて行動を共にする以上はそういう隠し事をするのはして欲しくはない。


「よって此度の開拓においては今迄以上の危険が伴うと予測される為、村長の指示の仰ぎ今回は我々護衛隊以外にも外部から協力要請を出す事にした!」


 護衛隊隊長がそういうとぼく達の所へ歩いてくる。

村長の指示だったのかと驚くけど……そういう説明を一切されてなかったから連絡が上手く出来てないのはどうかなと思う。

……いや、伝えに来てくれた人をぼくが怒らせてしまったのが原因か


「ここにいる二人が今回の協力者だ!中央評議国【栄花】から視察に来ていただいたいる時に協力を要請したら喜んで受けて頂いた栄花騎士団:軍団長【アキ】様及び【ケイ】様だっ!二人は栄えある騎士団の最高幹部で在らせられるっ!この失礼の内容にっ!……そして残りの三人は戦力にならない荷物持ちだから貴様らに説明する必要はないっ!今回はこの両名が道中の危険なモンスターの討伐を担ってくれるから我々は開拓に集中すれば良いっ!以上だ!!指定の場所にて各々に割り振られた義務を全うする様にっ!」


 護衛隊隊長はそういうと護衛役と開拓に従事する作業者を引き連れて森の奥に入って行ってしまった。

何で栄花騎士団の最高幹部がここに居るのかも気になるけど、どうやらぼくらは荷物持ちらしい


「……うちら荷物持ちらしいで?」

「これは聞いてる話とは全然違うね?」

「アキさん、ケイさん私達に失礼だと思いませんか?」


 ぼく達の非難の声が二人に浴びせられる。

それを聞いたケイは気まずそうな顔をしてアキの顔を見て、俺の変わりに説明して欲しいと言いたげだ。


「……すいません。役職を明かさないでくれるようにお願いしていたのですが……グランツさんが守ってくれずに困惑させてしまったと思います……。こうなった以上は詳しく話しますね。」

「しょうがねぇっすよね……。今回俺達は冒険者ギルドから指名手配された元冒険者の居場所を探しに来たんすよ」


 アキが本を取り出すと中から冒険者ギルドからの指名手配書を取り出しその中の1枚を見せてくれる。

依頼に無い殺人や略奪等を行い冒険者資格を剥奪された者がされるとは聞いた事があるけど実際に見るのは初めてだ。


「それがAクラスの死人使いルードなん?」

「えぇ、本来は冒険者ギルドの職員が直接捕縛又は討伐する案件なのですが……Bクラス以上ともなると冒険者ギルドの幹部や職員ではどうしようもないので私達が出る事になった次第です」

「本当は今頃、ゆっくりおやすみしてる筈だったんすけどねぇ……こいつらのせいでお休み返上っすよ」

「……こいつらってどういう事なの?」


 思わず聞き返してしまったらケイが慌てた顔をしてアキが出した書類を本の中にしまおうとして手を滑らせてしまい落としてしまう。


「あっやべっ!」

「えっと……これに書いている人がその指名手配された人達なのですか?」


 ダートが落とした手配書をケイとアキが拾う前に次元収納にしまい手元に取り出してぼく達にもわかるように読み上げてくれる。


『以下の者達を世界の理を崩す禁忌を犯そうとした為、冒険者の資格を剥奪し世界反逆罪の宣告をする事とする。

以下冒険者資格剥奪者元ランクA冒険者【幻死の瞳:グロウフェレス】【死人使い:ルード・フェレス】【闇天の刃:ミュカレー】【死滅の霧:スイ】【紅獅子:ケイスニル・レイフ】【炎精:ガイスト】の7名の討伐し、此度の件に関しS級冒険者【黎明:マスカレイド・ハルサー】と裏にもう一人のS級が関わっている可能性が浮上した為彼の身柄の確保し情報を吐かせる事、それが不可能であれば討伐を命ずる。』


「……嘘、マスカレイドさんが指名手配?」

「これは偉い事になったなぁ……」


 正直言ってマスカレイドが何かをやっていてもぼくとしては違和感がない以上ついに討伐されるのかという気持ちでしかない。

確かにこの世界に魔術と機械技術を融合し魔科学を生み出した功績や魔導具を作り上げてくれたのはありがたいけど自分の事しか見えていない人だ。

【まだ見ぬ世界を手に入れる】という欲望の元周りを巻き込んでは壊して行くような人で、ダートをこの世界に飛ばしたのもこの世界に飽きたから他所の世界の神秘を手に入れたくなったとかそんなところだろう。


「見たっすね?これであんたらも仲間っすよ」

「……ケイ、あなた態とやりましたね?」

「その方が説明の手間が省けて良いじゃないっすか、こんな感じで大量のAクラスが詳しくは流石に言えないっすけどやってはいけない事をして討伐されることになったっすよ」

「皆さん本当に申し訳ございません……とりあえず今は私達と一緒に来てください。詳しくは道中でお話しします。」


アキはそういうと防衛隊隊長達が向かった先へと歩き出す。

それに続いてケイも付いて行きぼく達も悩んだ末同行する事にした。


「早くいかないと他の人達が不安になると思うから早く行くっすよっ!ほらっ!駆け足っす!」



……ぼく達は余りの話に言葉にすることも出来ずに無言になるしかなかった。

ケイとアキはそういう手合いと戦い慣れてる可能性があるから大丈夫かもしれないけど、ぼく達にはその人達と戦える気がしない。

でももし戦う事になったらその時はダートを守れるのだろうかと不安で胸が締め付けられそうになるけどこうなった以上この二人は逃がしてはくれないだろう。

ぼく達の日常が崩れて非日常がやって来る。

どうしてこうなるんだろうなと思わず口の端から笑みが零れた気がした。


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