ジラルドが先にミコトさんがいる部屋に行ってしまったから、ぼく達も急いで向かうとそこには……
「あら?あなた様は確か……、ジラルド様ですよねお目覚めになられたようで良かったです」
「おぅ、いきなり尋ねたのにこうやって助けてくれて面倒も見て貰ってありがとうなっ!この恩はしっかりと返すから必要な時があったら冒険者ギルドを通して依頼してくれよ」
「はいっ!高位冒険者のジラルド様にそう仰って頂ける何て嬉しいです、その時は是非頼らせて頂きますね」
お礼を言うジラルドと、まるでどこかのお嬢様のように清楚な雰囲気で対応をするミコトの姿があった。
先程のぼく達への態度はなんだったのかと思うけどこれは触れては行けない気がするけど……
「ダートこれって……」
「レース、今は触れない方がいいと思うよ?」
「でも……」
「レースさん、気にしない方がいいです……、あの人はアキラさんの妹さんですよ?」
やっぱり触れない方が良いのか……。
そんなやりとりをしている間にも二人の会話は進んで行く。
「ところでさ、俺の仲間がミコトさんに治療して貰ってるって聞いたんだけどさ……」
「仲間ですか……?それってもしかして狼の獣人さんですか?その人の事でしたら治療が終わったので大丈夫ですよ」
「よかった!治ったのか……、でも今持ち合わせが無くて治療費を払う事が……」
「治療費何て頂きません、あれは教会が組織を維持する為に勝手にやっている事ですから、私個人と教会は関係無いのです、私がこの方の事が心配になってしまい勝手に治しただけですからご安心ください」
「ミコトさんっ……ありがとうございます!」
……何だこれって思うけどここで割り込んだら絶対ダメな奴だ。
ダートやカエデもそう思っているのか、何とも言えない顔をしている。
「それにジラルド様のお身体の方も弱らないように定期的に治癒術で体の筋肉を刺激しておきましたから違和感もない筈ですよ」
「おぉ……そういえば確かに?、いやどちらかというと前よりも体が軽い気がする、何ていうか何から何までほんとありがとうっ!」
「ふふ、どういたしまして……、あぁそういえばもうそろそろ日が暮れますが何処かご宿泊なさる場所はあるのですか?」
ミコトはそう言いながらぼく達の方を見る。
これは多分さっさと出て行けと言いたいのだろうか、それにしても泊る場所かぁ今から部屋を取れる宿とかあるのかな……。
「はい、私の仲間が部屋を取っている宿にお世話になる予定です」
「あら?そうなのですか?、皆様ともっとご一緒したかったのに残念です……」
カエデがそう言うけど何時宿の部屋を取ったのだろうか……。
それに私の仲間って事は先程のエメラルドグリーンの髪色をした猫の獣人族の男性の事なのかな。
「ありがとうございます、ですが治療して頂いたクロウさんの事もありますし、そちらのジラルドさんと込み入ったお話しがあるので……」
「なら仕方ないですね……、分かりました道中気を付けてお帰りくださいね」
「はい、では皆さんいつまでもいる訳には行きましょうか、今日は本当にありがとうございましたっ!」
「……だな、クロウは俺が運ぶからレース達は手ぶらでいいぜ?、じゃあミコトさんさっきも言ったけど何かあったらいつでも依頼してくれよなっ!」
「えぇ、その時は是非宜しくお願い致します……、あぁ後レースさんだけ少しだけお時間頂けますか?」
皆が出て行こうとした時に何故かぼくだけ残る様に言われたけど、いったいどうしたんだろうか。
「……ぼくですか?」
「あの、それなら私も残っていいですか?レース一人だと心配なので……」
「ふふ、大切な人が女性と二人きりになるのが心配なんですね?、それならダートさんが居ても構いません、という事で皆さん申し訳ないのですが……」
「いえ、そう言う事でしたら大丈夫です、レースさん、お姉様、仲間の一人を残して行くのでまた後で……、あ、後ジラルドさん、外に出る時はこのマスクで顔を隠しておいてください」
「お、おぅ……、じゃあまた後でなっ!」
ジラルドは渡された仮面を付けるとクロウを肩に担いでカエデと一緒に部屋を出て行った。
……それにしても治療されたクロウを見たら分かるんだけど、焼け爛れた身体が綺麗に再生している。
あの短時間でどうやってここまで治療出来たんだろうか。
「あぁ、疲れたぁっ!あの男やっと出て行ったんだけどっ!もう疲れたよぉっ!」
「ミコトさん……?」
「あぁごめんね、気が抜けたら叫んじゃった、んでさダートっちにレースくんに聞きたい事があるんだけど、あっ!敬語とか使わないでいいからねっ!私堅苦しいの嫌いだから、何なら呼び捨てかミコトちゃんでいいよ」
「呼び捨てって……」
「そうしてくれないと私これ以上はっなしーませーん!」
ミコトはそういうとクロウが寝ていた場所に横になると、『うわ、何とも言えないお風呂に入れる前の犬の匂いがする』と呟いて飛び起きる。
それにしてもここで一瞬で雰囲気が変わるのは正直凄いと思う、ぼくなら同じ事が出来る自信が無い。
「匂いが付きそうでやだな……、グータラ出来ないじゃん」
「と、取り合えずミコトの話って何?」
「あ、そうだった忘れる所だった、飲み物は出せないけど取り合えず椅子に座って話そう?」
「あぁうん」
ぼく達が椅子に座ったのを見ると、彼女もゆっくりと座ってぼくの方を見て面白そうな顔をする。
「それでね話何だけど、君ってルディから自分の親の事って聞いた事ある?」
「え、無いけど……」
「レースの親って、実の両親の事?ミコトちゃん」
「そうだよ?……まぁルディの事だから言うの忘れてたのかもね、でもなぁ顔は母親似だけど雰囲気が父親の若い頃に似てくると後が大変そう、とは言えルディが言ってない事を私があれこれ言うのはなぁ」
……あぁやっぱりジラルドを起こしに行く時に聞こえた声は聞き間違えじゃなかったんだ。
とは言え何でこの人が知ってるんだろう……、そんな事を思いながらミコトの顔を見ると真剣に何かを考えて居るような顔をしている。
その姿を見たぼくは言葉に出来ない不安を覚えてダートの手を無意識に握ってしまうのだった。