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第14話 戦場の経験

 取り合えずジラルドの無事が確認出来たから、次はクロウの事が気になるけど彼の治療は終わったのだろうか。

ぼく達がジラルドを起こしに行っている間に、クロウの事を治療しとくと言っていたから大丈夫だと思うんだけど……


「ジラルド……、今クロウの治療をミコトさんに頼んでるんだけど様子を見に行ってもいいかな」

「クロウが?……あいつが教皇の治療が必要になる位の傷を負うって何があったんだ?」


 ジラルドが驚いた顔をして聞いてくるけど、これはどう説明すればいいんだろう。

ミコトさんに合う為に彼を味方がぼこぼこにしたっていうのも聞こえ方が悪い気がする。

又は探し人がここにいると聞いて、問題無く事を進める為にクロウを叩きのめしたと説明するべきか。

んー、ダメだどっちにしろ問題にしかならない。


「レース?難しい顔してどうしたんだよ……、もしかして説明出来ない位にヤバいのか?」

「あぁ、いやうん……説明し辛いというか」

「説明し辛い?」

「それについては私が説明します」

「あ?お、おう」


 カエデがぼくに変わって内容を説明してくれたけど、その話を聞いている間難しい顔をしたのかと思うと、徐々に苦い顔に変わって行く。

まぁそうなるよなぁって思うけど、仲間を傷つけられたと聞いて怒らない辺り彼なりに何等かに考える事があるのだろうか。


「あぁー、理由は分かったけど、クロウが迷惑をかけたというかなんというか、というか栄花騎士団最高幹部となるとどう見ても俺達よりも格上の相手だぞ?、普段のあいつなら実力差を理解出来る筈なのに……」

「それほどジラルドとコルクの事が大事だったんだよ」

「分かるんだけどさ、仲間が危険な時程冷静な判断が必要になるんだよ、レースは冒険者じゃないから分からないと思うけど、冷静さを欠いて仲間を無策で助けに行くという事は俺達高ランクの冒険者の間では禁忌なんだ」


 禁忌って何を言ってるんだ。

仲間が危険な状態にあるなら助けに行くのが当然だと思う。

これだとそれ自体が間違いだと言ってるようで、クロウの気持ちが間違えみたいじゃないか。


「そんな怖い顔をすんなよ、俺だってクロウの気持ちが嬉しくない訳じゃない、むしろ嬉しい位だ」

「なら何故……?」

「レース、例えばの話をするがお前が冒険者で盗賊かモンスターである亜人の討伐依頼を受けて仲間と一緒に行動したとする、そこ一人が勝手に別行動をしたとしようか」


 いったいこの説明とクロウの事に何の繋がりがあるんだろう。

そもそもこれとぼくが冒険者じゃない事に意味があるのか……。


「暫くして、別行動をした仲間が負傷して助けを求めたらお前はどうする?」

「急いで助けに向かうかな……」

「それは駄目だ、相手はお前と同じ人間だし、亜人の場合は俺達と同じくらいに頭が回る奴等もいる、そいつが囮の可能性があるんだよ」


 囮って何を言ってるんだ……、負傷して出て来たという事は助けを求めに来たという事だ。

なのに助けない何て発想があるわけがない。


「お前が何を言いたいのかは何となく分かるけど、今はそういうの無しで聞いてくれよ、盗賊や亜人の場合敢えて逃がして仲間の場所に帰す時があるんだ」

「……帰すってどうしてそんな事するのか分からないんだけど」

「ジラルドさん横からごめんなさい、それはレースさんが戦場に出た事が無いからですよ、騎士団の新人団員さん達もそれで被害が出る事があるんです……、負傷者を利用して助けようと近づいて来た味方達を遠方から魔術や弓、狙撃用の銃を使って一人ずつ確実に仕留めるんです」

「別にいいよ、言いたかったんだろ?……、カエデさんが言った事もそうなんだけどさ、盗賊の場合は男が助けに来たら殺すし女が来たら慰み者だ、亜人の場合なら良もっと酷い事になる……、ここまで行って何を言いたかったのかっていうとさ焦って味方を助けに行こうとすると碌な目に合わないって事だ、ダートも冒険者だからそこんとこ分かってんだろ?」


 ジラルドが今迄黙ってぼく達の話を聞いていた彼女に返事を求めるけど、何て答えたらいいのか分からなさそうにしている。

……分からないのはぼくだけだったのか、ぼくもダートと同じ冒険者だったら説明をされなくても分かったのかな。


「……分かるけど私の場合空間魔術で救出出来てしまうから参考に出来ないと思う」

「あぁ、そっかダートはそれが出来るからしょうがないか……、だから俺はクロウに被害が及ばないようにあいつには連絡を寄越さなかったんだよ」

「じゃあどうしてぼく達に連絡を……?」

「お前らなら判断を仰ぐ為にアキラの所に行くだろ?、そうすれば栄花騎士団に連絡が行ってミントを助ける為に力を貸して貰えるかもしれないって思ったんだよ……、まぁ冒険者ギルド経由でクロウに連絡が行くとは思わなかったけど」

「ギルド職員には冒険者が死亡した場合仲間に報告する義務がありますから……」


 カエデの言葉にジラルドは困った顔をしながら『だよなぁ……、それを忘れてたわ』と言って頭を掻く。

何ていうか普段はだらしないのに冒険者として活動する時はここまで考えて行動できるのは凄いと思う……、最後の詰めが甘かったみたいだけどどっちにしろぼくでは出来ない事だ。


「まぁ、取り合えずそういうこった……、けどまぁクロウの取った行動はCランクまでの冒険者なら良くあるけど、国やギルドから直接依頼を受ける事が多い俺達AランクやBランクの奴等は滅多にやらないって覚えといてくれたらいい、ダートは例外な?空間魔術を使いこなせる奴って滅多にいないから参考にしない方がいい」

「ですね、ダートお姉様はAランク冒険者の中でも空間魔術と呪術に特化した唯一の人ですから例外です……」


……カエデが何故かどや顔で言うけど、何故彼女がそんな反応をするのかぼくには理解出来ない。

取り合えず二人のおかげで色々と冒険者について知れたから良いか。

そう思っているとジラルドがベッドから下りると身体を解すように軽く運動をしてミコト達のいる部屋へ続く扉へと歩いて行くと『取り合えずクロウの所に行こうぜ?来ちまったのはしょうがないし、あいつの無事をこの目で見たいしさ』と言って我先にと扉を開けるのだった。

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