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間章 俺の新しい身体 ダリア視点

 何ていうか無い筈の頭が痛いあいつと分かれて心器の身体になって以降、五感が無い状態が長く続いていたせいでついにおかしくなったのだろうか。


「あー、まじで頭いてぇ……」


 ……おかしいぞ、何ていうかいつもよりも可愛らしい子供のような声がした気がする。

そういえば何か背中に柔らかい感触があるような……、ん?俺ってそう言えばさっきまで何をしていたっけ、確かばあさんに連れて行かれて何かに繋がれた所までは覚えてるんだけど、記憶が曖昧だ……、昔の事は思い出せるのに今の事に関しては頭にモヤがかかったような感じで気持ちが悪い。


「……あぁでも、俺の新しい身体が出来たとか言ってたような気がするからもしかしたらこれって?」


 多分だけど、ばあさんが心器の中にいる俺を新しい身体へと移したのかもしれない。

それなら何となくだけどこの現状にも納得が出来る。

この頭の痛みと、体が伝えてくれる感覚、多分これは久しぶりの感覚に身体が敏感になってしまっているのかもしれない。

とは言え、さっきから聞こえる声が言葉に出す度に可愛いというか、幼いというか……何ていうか変な感じだな……正直新しい身体なのにこうやって自然に声を出せるのも何ていうか違和感しかない、俺の中のイメージだとリハビリを暫くしないといけないんじゃないかと思っていたから、これはこれで良かったのかもな。


「……とはいえこの身体が敏感になってる時に眼を開けるの勇気があるな?」


 とはいえまずは眼を開けてしっかりと体を起こさないと……、恐る恐る開けると思いの外視野に違和感が無い事に戸惑いを覚える、そのまま周囲を見てみるとどうやら俺はベッドに寝かされているようだ。

それに何となく感じていた事だけど、徐々に指の先から足先まで懐かしい感覚が戻って来る感じ的に、ばあさんが何らかの調整をしてくれてたのかもしれない。


「もしかしたらこのまま身体を起こす事も出来たりするんじゃないか……?」


 上体を起こすと身体を動かしてベッドの上から床に脚を降ろす。

起き上がる前に周囲を見渡すと、レースが着ているのに形がそっくりな白いローブと長杖が見える。

近くにある机には治癒術と薬草の専門書が積まれていて、何というかあいつの部屋に雰囲気が似ている気がした。


「……って、この部屋ってあいつの部屋か!?あのばあさん何考えてんだ!?ってやっべ!」


 驚いて立ち上がったのは良いものの、バランスを取る事が出来なくて前のめりに数歩歩くと机に手をついて止まる。

その瞬間……、プラチナに輝く綺麗な色の長い髪が前に出て来て思わず、キャッ!っていう女の子がするような驚き声を出してしまった。


「俺の髪色ってゴールドアッシュだったよな?、それなのに何でこんな綺麗なプラチナブロンドになってんだ!?」


 驚きの余り手で髪を何度も触るけど、何処にも以前の色をした部分が無い、これはもしかしたら顔や体系すら別人なんじゃねぇか?って……何となく下を向いたら透き通るように傷一つない肌が胸元から足先まで見える。

これって……


「裸じゃねぇかっ!何でだよっ!これじゃ俺あいつの部屋で全裸で寝てる不審者じゃねぇか!……、何か着る物はねぇのか!?って……ちょうど良い所に衣装棚があるじゃねぇか」


 なんとかよちよち歩きで、衣装棚まで行って開けると中には『レース0~五歳用、六~十歳用、十一~十五歳用』と書いて種類分けされていた。

なんつうか……、あのばあさん今迄捨てないで残してたのかよ……って引いてしまうけどこの中から丁度良さげな服を探すしかないか……。


「って……、俺に合う服六歳~十歳用かよ……、しかも何つうかそれでもシャツを着ただけで身体に張り付く位にきついしやべぇな」


 腕を通したまではいいんだけど、全体的にサイズが小さくて着れた物じゃない、かといってその上の歳の服にすると今度は大き過ぎて着れない。

しょうがないからこれで我慢するけど窮屈でしょうがない……、しゃーねぇから俺の方で服の形を変えるか。


「上は十一からのにして、丁度良い部分で魔術で切って……、うん良い感じだな……、下の方は下着がねぇから後で買うしかねぇけど取り合えず今は、このショートパンツでいいか」


 何ていうかあいつにあった時を思い出す、へそ出しルック風の服装になっちまったな。

とは言えあいつ小さい頃ショートパンツ履いてたのか……、どんな感じだったのか見てみたかったわ。

後は……、流石にこのまま外に出たら自分の身体に自身がある見せたがりの女の子だ。

流石に腰やお腹周りは出していた方が俺の好みだけど、腕や脚を不特定多数に見せびらかす趣味はない。


「……このローブもう使わねぇだろうし、俺の物にしちまうか」


……部屋にある白いローブに腕を通すと、それもちょうど良い長さに切る。

上は腰が全部見えるような感じで、下はショートパンツに縫い合わせて自然に広がる感じにすれば……、よしっ!俺様かっこいいっ!。

後は残った布でリボンを作って……髪の毛をポニーテールにすれば、にしし髪色は違うがいつもの俺様だっ!。

問題は鏡が無いからどんな顔してんのかわかんねぇところだな……、とそんな事を思っていると部屋の扉が開いて『水色の髪に同じ瞳の色をしている、眼鏡をかけた美しい女性』が入って来て『えっと、あなたがカルディア様が思念体で私に連絡してきた……ダリアちゃんだよね?、あの人の変わりにあなたの面倒を見るように言われたから良いかな?……、あ、自己紹介がまだだったよね?私は【ソフィア・メセリー】っていうの、宜しくね?ダリアちゃん』と言い出して、驚きの余り後ろに倒れてしまう。

な、なんで、この国の王……、『魔王 ソフィア・メセリー』がここにいんだよっ!?って思いながら、彼女から感じる圧倒的な実力差のせいで動けなくなってしまうのだった。

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