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第6話 ストラフィリアへ ダート視点

 カエデちゃんと一緒に北の大国ストラフィリアへ行く準備をしているけど、確かあそこは一年の殆んどが雪に覆われている国だから暖かい服装をして行かないと、レースを助けに行っても体調を崩したら彼を助け出す以前の問題だと思う。

取り合えず動きやすいように寒冷地用の服を用意して、各国へと行く為の転移魔術が付与された扉がある部屋に着いたけど……


「お姉様、私達はストラフィリアには表向き冒険者ギルドから依頼を受けて入国した高ランク冒険者一行という事にしますが……、大丈夫ですか?」

「大丈夫って、私は大丈夫だけどカエデちゃんどうしたの?」

「お姉様は久しぶりに冒険者として活動するので気負い過ぎたりしないか心配で……」

「依頼と言っても、以前【メセリー】を視察しながら指名手配されている【死人使いルード・フェレス】を討伐に私達の所に来たアキさん達みたいに、ストラフィリアを視察中の最高幹部二人に同行するってだけでしょ?それなら問題ないと思うけど……」


 もしかしてだけどその二人の性格に問題があるとかで心配してくれているのかもしれないけど、私が見て来た栄花騎士団の最高幹部の人達は、変わってる人が多いけど良い人ばかりだから大丈夫だと思う。


「あのですね……、一人はアキラさんとチームを組んで行動する事が多い男性で【シン】って言うのですが、彼はまぁ常識人なんですけど」

「もしかしてもう一人の人に問題でもあるの?」

「はい……、トキさんという女性の方でストラフィリア出身の元武器職人です。彼女は自分の手で鍛冶に必要な素材を集めたいからという理由から過去に冒険者になり、異常な程に高い攻撃力と優秀な鍛冶師としての腕を買われて、団長が直接栄花騎士団にて好きに作りたい武器を作っていいという条件の元勧誘して最高幹部になった人なんですが……」

「……職人だから気難しい人なの?」

「はい……」


 カエデちゃんが申し訳なさそうに言うけど、職人は皆それぞれ我が強いイメージがあるからしょうがないと思う。

その性格のおかげで良い物が作れるなら本当に凄い人何だと思うし……


「それ位なら気にしないから大丈夫だよ?」

「お姉様がそう言ってくれて良かったです……、事前情報が会った方がいいと思うのでこのまま説明しますが、栄花にいる時は心器を扱う事が出来ない団員達の武器を作り続けている大変忙しい人で、何でも【心器という使い手の精神状況で性能が左右される不安定な武器よりも、優秀な武器を作って見せる】という考えで本当に優秀な武器を作ってしまえる人です。そこまではいいのですが」

「……聞いてる限りだと凄い人だと思うけど何かあるの?」

「いざ戦いになると、自身の魔力特性【狂化】により大変狂暴になってしまうので……、気を付けてください」


 確か【狂化】は、肉体強化に特化した特性で……、戦士型等の分類に縛られず五感を含めた全ての能力が上がる変わりに、制御が出来ないと理性を失い暴走してしまう危険な物だと聞いた事あるけど、実際に見た事は無いから実感がわかない。

でもカエデちゃんがそこまで注意をするって事は、もしストラフィリアで戦う事があったら近づかないように気を付けた方が良さそうかも……?


「シンさんって人は、トキさんと一緒にいて平気なの?」

「あの人は、相性が非常に良いので大丈夫ですね……」

「そうなんだ?」

「はい……、ではお姉様お喋りはこれ位にしてそろそろ行きましょうか」


 カエデちゃんがストラフィリアへと転移する扉の前に立ち、ダイヤルを回して合わせて扉を開けるとそのまま中に入って行く。

それに続いて入って見えた景色は。まだ日が高いのにお酒を飲んで笑い合っている男女の集団が沢山いる冒険者ギルドだった。


「初めて見ると驚きますよね、何でも仕事前に強いお酒を飲んで身体を温めてから行く文化が冒険者の間であるみたいなんです」


 冒険者ギルドの中はお酒臭さとお肉が焼ける美味しそうな匂いが混ざり異様に食欲を誘うけど、ここにいるだけでお酒に酔いそうだから早く外に出たい。

レースはこの国にいて大丈夫なんだろうか……。


「……私はお酒飲んだ事無いから分からないけどそれって大丈夫なの?」

「多分大丈夫なんだと思いますが、私も飲んだことが無いので……」

「それならレースを助ける事が出来たら皆で試しに飲んでみる?」

「確かに年齢的には十歳から成人なので飲めますが……、私は遠慮しときます、もし変な酔い方したら二人に迷惑かけそうなので」

「そう?ならレースと二人で飲んでみるね」


 前の世界ではお父様が食後にお酒を飲んでいたけど、少し飲んだら直ぐに寝てしまう人だったから私が酔うとしてもそんな感じだと思う。

そういう意味ではカエデちゃんが酔うとどういうなるのかなって気になるけど無理強いは出来ない。


「取り合えず冒険者ギルドから出て、シンさん達が滞在している宿に向かいますので付いて来て下さい」


……カエデちゃんと一緒に冒険者ギルドを出ると、辺り一面雪に覆われて白く染まった街並みと遠くにとても大きなお城が見える。

あそこにレースがいるのかもしれないと思うと今すぐ向かいたいけど今は最高幹部の二人と合流するのが先だとはやる気持ちを抑えながら二人で宿に向かうのだった。

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