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第12話 ダリアの居場所

 落ち着いたサリッサが経緯を教えてはくれたけど、どうやら途中で意識を失ってしまったらしくて肝心な何処に連れて行かれたのかは分からなかった。

これはどうしたものかと思っていると……


「話の経緯は分かりました、サリッサあなたは個室に戻り待機していなさい」

「で、でも覇王様にも報告をしないとっ!」

「あなたは休むべきです、多少落ち着いたとはいえ今のあなたではまともな報告は難しいでしょう?なのでここは私に任せてください」

「……わかりました」


 ミュラッカがそう言ってサリッサを説得すると、彼女は落ち込みながら部屋を出て自身の個室へと帰って行く。

本来なら侍女を連れて覇王ヴォルフガングの元へ行った方がいいんだろうけど、彼女の精神状態を考えたら休ませた方が確かに良いのかもしれないけど、個人的には一人にしたらそのまま場所が分からなくても助けに行ってしまいそうで心配だ。


「ミュラッカ、彼女が一人でルミィを捜しに行きそうで心配なんだけど?」

「それは問題無いと思います」

「なら良いけど、ダリア達の居場所が分からない事には……」

「居場所ですか……?分かりますよ?」

「カエデちゃん、それって本当なの?」


 この場にいる全員がカエデの方を驚いた顔で見ると、通信端末を取り出してテーブルの上に置く。

何でここでそんな物をと思うけど……


「ダリアさんは、私の予備端末を持っているのでそこから位置情報を探れば直ぐに分かりますよ?」

「カエデ様、どうしてダリアさんが予備端末を……?」

「先月にレ―スさん達がトレーディアスに行く時に、ダリアさんと一時的に別行動をする事になったのですが、その時に私のを貸したのです、そして団長や副団長は通信端末を持っている人の居場所を調べる事が出来ます」

「なるほど、それで居場所が分かるという事ですか……」


 ミュラッカが何やら考え込むような仕草をするけど、ぼくもすっかりダリアがカエデの予備端末を持っている事を忘れていたから、同じように考え込んでしまった。

その姿を見て意外そうな顔をしているダートがいるけどどうしたんだろう。


「ダートどうしたの?」

「ん?えっとね、こう考える時の仕草が似てるから驚いただけだよ?、こう二人して同じように前髪を弄るんだもの、そういう所やっぱり血の通った家族なんだなぁって」

「そうなんだ……」

「でも、ダート義姉様も婚姻はまだだとしても、既に私達の家族のようなものなので、立派な家族ですよ?」

「何か以外かも、ヴィーニの件があったからこの国の王族って皆彼みたいなものだと思ってたから……」


 カエデが通信端末を触って操作をしている間にそんな会話をしているけど、確かにぼくも最初はヴィーニの印象が強すぎて同じように考えていた時がある。

でも実際はそんな事は無くて彼が特別そういう自分勝手な性格だっただけだと理解出来たおかげで、今ではそんな偏見はない。


「あの子は第二王子と恵まれた適正があると言うだけで王位継承権を得て、覇王になる為の教育を常に受けて来ましたからね、トレーディアスに行ってレース兄様と会った事で今迄溜め込んで来た物が抑えきれなくなってしまったんだと思うのですけど……」

「その結果、ゴスペルを使って私の前からダリアとレースを強引に連れ去ったんだから、私の中での王族のイメージが悪くなるのは当然じゃないかな……」

「はい……、その件については姉として謝罪させてください、ダート義姉様この度は本当に申し訳ございませんでした」

「そ、そんな私は謝って欲しいだなんて……」

「これは私の気持ちです、自己満足の謝罪になってしまいますが、ダート義姉様とは好意的な交流をこれからも続けたいので……」


 何でミュラッカがダートとそんなに仲良くなりたいのかぼくには分からないけど、個人的には二人の仲が良くなって欲しいと思う。

それにぼく達が町に戻って以降も交流が続く事があるなら、友好的な関係を築く事は重要な筈だ。


「分かったけど……、それならミュラッカは敬語を止めて普通に話してくれないかな、私もカエデちゃんも気にしないから大丈夫だよ?」

「ですが……、初対面ですし」

「大丈夫だよ?、だって私はあなたの義姉さんなんでしょ?」

「……分かったけど、嫌なら言ってね?ダート義姉様、私ずっと年上の家族が欲しいなぁって思ってたの」

「私も妹が欲しいなぁって思った事があるからこれから宜しくね?、ふふ、こんな綺麗な子が妹何て嬉しい」


 さっきまでの雰囲気はいったい何だったのか、確かに二人が仲良くなって欲しいとは思ったけどここまで一瞬で良い関係になるとは思っていなかった。

ぼくの近くで手を繋いで笑顔で微笑みあっている二人を見ると何だか複雑な気持ちになる。


「皆さん通信端末の方を見てください、今からダリアさんの位置を表示します」


 言われた通りに皆がテーブルの上に置いてある通信端末を見ると、空中に地図が浮かび上がり丸い点が浮かび上がる。

それを見たミュラッカが驚いて立ち上がったけど、慌てて椅子に座り直す。


「驚いたわ……、栄花騎士団にはこのような技術があるのね」

「はい、ですが普段は使う事が無い機能なので……、ミュラッカ様はこの場所が何処か分かりますか?」

「いえ……、けど父様なら知っているかもしれないから聞いて来ても良いかしら」

「それならちょっと待ってください」


 心器のガラスペンで空中に浮いている地図の上に魔力で作られた文字を書いて、そこに一枚の紙を貼り付けるように押し付ける。

すると地図が綺麗に紙の上に描かれていた。


「これは……?」

「私の心器の能力で転写した地図です、これを持って行ってください」

「なるほど分かったわ、私は今から父様の元へ行ってきますので今日はもう直ぐ日が暮れる時間ですし、今日は王城内でおやすみください、カエデ様には客室を用意するから後で迎えの侍女が来たら付いて行ってね」

「あの、私以外にも栄花騎士団の者が現在王城内を視察中なので彼等の部屋も用意して頂きたいのですが」」

「それならこちら側で三人が滞在できる部屋を用意しますので後で合流してください、後はダート義姉様だけどレース兄様の部屋で一緒に休んでね?、久しぶりの二人きりの時間だと思うけど羽目を外し過ぎないようにしてくださいね?」


……ダートが何を考えたのか顔を真っ赤にしてミュラッカに『ここでそんな事はしないよっ!?』と言うけど、いったい何をするというのだろうか。

それにもしかしたら町に帰ったらそんな事をされてしまうのかもしれないけど、何か分からないから気にしない事にした。

ダートを見たミュラッカが面白そうな人を見るような顔で彼女を見ると静かに微笑みながら部屋を出ていく。

その後特に話すような事も無くてどうしようかと思っていると、カエデから『私は今から最高幹部の二人と連絡を取るので先に行ってていいですよ?』と言われたので、ダートと一緒に自室へと戻るのだった。

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