「ご、ゴォ~~~~ルッ!?!?」
と言いつつも、審判の男性が怪訝そうな顔をして、
「い、いやキミ、【
それから手元の腕輪――魔道具かな?――を見て、
「【
言いつつ審判さんが僕の腕をがしっとつかむ。
「えっ、ちょっと待って下さ――」
「その必要はないぞ!」
声がした――頭上から。
「さっきから見ていたが――その少年が使ったのは【
見上げると、そこには年若い男性――少年と言ってもいいような人が立っていた。
アリソン神像の肩の上に!
「あらかじめこの場所に【
男性が解説してくれた通りで、僕が使ったのは【
昨日、お師匠様たちと一緒に来たときに、【収納】口をここに展開しておいたんだよね。
【収納】口は普通、黒い空間として目に見えるものなんだけど、お師匠様に『隠しな』って言われて、『隠れろ!』って念じたら目に見えなくなったよ。
【
昔はそんなことできなかったから、スキルレベルが上がったことによるものなんだろう。
【収納】口同士を繋げるのは、これもお師匠様からやり方を教えてもらったのだけれど、だいぶ前からよく使ってる手だ。
道や川を作るとき、ノティアの炎魔法で広範囲を焼き入れするときなんかに、ノティアに【収納】口目がけて魔法を放ってもらい、それを道や川一面に伝播させるのに使ったりしてる。
「ちょっ、陛下! ダメじゃないですかまた勝手に外に出て!」
顔見知りらしい審判さんが、男性を叱る。
「悪い悪い」
男性が飛び降りてきた。
無詠唱の浮遊魔法だろうか、音もなく着地する。
「【
言って、男性が無邪気な笑みを浮かべながら僕の肩を叩いてくる。
「は、はぁ……ありがとうございます」
背丈は僕より若干高いくらいか?
長いストレートの黒髪に、吸い込まれそうなほど綺麗な、赤く輝く瞳。
男装だから男性だと思ったけれど、顔立ちはとても中性的で美しい。
そしてこの男性は、貴族のような――見慣れている領主様よりもゴテゴテした感じの無い、洗練された上質な衣装に身を包み、立派なマントと王冠を身に着けている。
……………………え、王冠?
「ちょちょちょ! いくら国民が相手とは言っても、もう少し距離を保ってください!」
審判の男性が慌てる。
「なぜだ、バフォメット?」
「なぜって警備上の問題でしょう!」
「他ならぬ近衛のそなたがこんなところで審判をしているというのに」
「こうなることを見越して、ゴールの真ん前で見張ることにしたんですよ! そしたらレヴィアタンのバカに審判の役を押し付けられて!」
「その割にはぼさっとしておったではないか」
「だって開始後1分もしないでゴールする者が現れるなんて思わないでしょう!? っていうかいつから居たんですか! 気配消してまで!」
「安心しろ、余に敵う者などおらぬよ」
「かも知れませんが、警護を怠ったことがバレたら、あとで私が怒られるんです! ベルゼビュート様に!」
「ふむ。つまりお前は、余の身の安全ではなく、お前自身の身の安全を憂いているというわけか。薄情な近衛もいたものだなぁ」
「う、うぐぐぐぐぐ……でも陛下が元凶じゃないですかぁ!」
何やら男性と審判さんの間で言い争っている。
「あ、あのぉ……?」
声をかけてみると、
「おお、すまんすまん!」
男性が笑いかけてきた。
「とにかく少年、キミが今日のレースの覇者だ! 余が保証してやろう――この、ルキフェル13世がな!」
「…………え?」
ルキフェル13世って――――……
「ま、ま、ま、魔王様ぁ~~~~ッ!?」