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第46話 缶詰め工場の激戦


 左側のタンクを囲む通路に、エリーゼは人影を見つけたが、そこを注意しながら眺める。



「ん? やっぱり、誰か隠れているわよっ!」


「はあ? マジかよ…………」


 皆は、それを聞いてから、直ぐさまハンヴィーの車体に身を隠した。



 エリーゼは、車体後部からタンクを眺めると、やはり、こちらに弓を向ける人物を見つけた。


 ダニエルは、トンプソンを出しながら、いつでも敵を撃ち殺せるように、身構えている。



「敵だっ! 他のギャング達が、武器を横取りしに来たぞっ!」


「奴らに取られて、たまるかっ!」


「銃は使うなっ! ゾンビ達を呼び寄せてしまうっ!」


 向こうも、こちらの姿を確認しているらしく、攻撃を仕掛けてきた。


 ミニボウが連射されたり、クロスボウの強力な矢が、ハンヴィーに当たる。



「何人か、弓矢を持つ連中が存在するようだっ! 普通なら援護射撃しながら前進するんだがっ!」


 ガツンガツンと、金属音を立てながら、車体を攻撃する矢を受けて、賢一は渋い顔になる。



「仕方ないよっ! ここは撃つしかないわっ! 援護射撃するから、突撃してっ!」


「分かったっ! 背中は頼むぞっ! 走るからなっ!」


「マジかよ? また、銃撃戦かっ!」


「私の拳銃じゃ、当てられない距離だわ」


 モイラは、ハンヴィーのボンネットから体を出し、M4カービンを単発連射する。


 その間に、賢一は手前に停車してある深緑色をした、M35小型トラックにまで走っていく。



 弓矢が頭上から、次々と降り落ちる中、彼は車体に無事たどり着く。


 だが、そこには、作業員や兵士の死体などが頃がっており、強烈な悪臭を放っていた。



 ダニエルは、車体後部から適当に何発か、トンプソンを何発か連射する。


 エリーゼも、スカンジウムを、一発二発だけ撃つと走り出した。



「ふぅ? 右側には、モイラとダニエル? 左側のハンヴィーには、ジャンとメイスー達か? エリーゼは?」


 賢一から見て、四人は向かい合う、ハンヴィーに身を隠しながら、敵と戦っていた。


 エリーゼは、どうやら右側にあるフォークリフトを、盾にしながら身を潜める。



「私の丸ノコは、あそこまで届かないですっ!」


「俺のペティナイフも届かん」


 メイスーとジャン達は、仕方なく、パイプガンとモスバーグ500から散弾を撃つ。


 もちろん、当たるワケではないが、敵の注意を引くために、やるしかない。



「グアア?」


「ギュアア~~~~」


「グルアアッ!」


 体中に、黒いウニが刺さっている水産加工職員ゾンビが、フラフラと何処からか現れた。


 フレッシャー&ジャンピンガー達も、道路から駐車場に向かって、勢いよく走ってきた。



 連中は、銃撃音に引き寄せられたらしく、四方八方から迫ってくる。


 これに、双方とも不味いと思ったが、どうにかして、ゾンビ達に対処するしかなかった。



「ゾンビが来やがったか? クソ、相手をしなければ成らなくなるっ! まず、先にギャング達から潰すか? うらっ!」


「ギャアアッ! グア? グゴ…………」


 賢一は、作業員ゾンビの脳天に、ゴボウ銃剣を突っ込むと、勢いよく走りだしていった。



「くそ、矢が飛んできやがるっ!」


 飛んでくる矢に、なるべく当たらぬように、ひたすら賢一は、ジグザグに走っていく。


 当たらなかった矢は、地面に刺さることなく、カツンッと、音を立てながら跳ね返る。



 そして、何とか建物の下へと、彼は無事に着いたが、周りはゾンビが歩いてきていた。


 左右から、フレッシャー&ジャンピンガー達が、挟み討ちにしようと、向かってくる。



「くっ! 前に進むしかないかっ! シャッターを開けて、中に入ってしまえばっ!」


「グルアアァァァァ」


「ギュアアアア」


「奴ら、銃撃してきてるぞっ! これじゃあ、ゾンビが寄ってくるっ!」


「仕方ないっ! 下がるぞ、下で向かえ討つんだっ!」


 中に入って、賢一は内部を見渡したあと、フレッシャー&ジャンピンガー達を待ち構える。


 外からは、屋上のギャング達が、後退している様子が、怒鳴り声により分かった。



「俺が突破口を開いたから、連中は下がるようだが? コイツらは…………」


「ウアアッ!!」


「グアアオオッ!」


 中にまで、入ってきたばかりのフレッシャーに対して、賢一は睨みながら、ゴボウ銃剣を向ける。


 ジャンピンガーに対しても、注意しながら決して、隙を見せないように身構える。



「グルアアッ! グルオッ!」


「はっ! 殺られてしまえっ!」


 フレッシャーが襲いかかってくると、賢一は冷静に、顎から脳天に向けて、ゴボウ銃剣を振り回す。



「アアアアーーーー!!」


「グルオッ!?」


「ウエエエエ~~」


「居たぞっ! あそこだっ!」


「白兵戦を仕掛けてやるぜ」


「援護するっ! 弓矢なら、ゾンビは来ないからなっ!」


 ジャンピンガーも襲いかかってくると、建物には、他のゾンビ達も小走りで入ってきた。


 作業員ゾンビが、シャッターから入ってきて、水産加工職員ゾンビも後から続く。



 そうかと思えば、今度は奥にある階段から、ギャング達が降りてきた。


 さらに、反対側の銀色カーテンが開かれた方からも、敵が続々と現れる。



 そちら側にも駐車場があり、連中はマチェットやトレンチメイス等を、振り回しながら走ってくる。



「銃が使えないから、弓矢と剣で、俺を殺そうってか?」


「ギャアアッ! グギッ!」


 賢一は、ジャンピンガーが飛びかかってくると、ゴボウ銃剣を、顔面に突き刺した。


 それから抱き締めるようにして、奴の死体を盾に取り、弓矢から身を守ろうとした。



 直後、肉盾に多数の矢が刺さり、中には貫通してしまう物もあった。


 特に、死体の右腕を破壊して、後ろにある壁に、深々と突き刺さる物もあった。


 それは、左側のギャングが射たったため、賢一には角度的に、運良く当たらなかった。



「うわっ! ヤバいっ! クロスボウかっ!」


「あの野郎を殺せっ!」


「連続攻撃だっ!」


「グギギィィ~~~~!! ギャッ!?」


「グルアアッ!! ギェェ…………」


 賢一は、肉盾を捨てるとともに、生死をかけて、左側にある大きな灰色の機械に走っていった。


 当然、その間も弓矢やクロスボウによる射撃は続くが、それを彼は何とか回避しながら逃げていく。



 ミニボウの玄を、何度も引いて、白人ギャングは矢を放ってくる。


 クロスボウを構え、黒人ギャングは膝だちで、狙い射ちしようと、目を鋭く光らせる。



 作業員ゾンビは、ギャング達が目に入ったのか、そっちに向かっていが、射殺されてしまう。


 ウニだらけの水産加工職員ゾンビも、弓矢が何本も刺さり、真後ろに倒れてしまった。



「ギャング達が、多いっ! 多勢に無勢って、感じか? ふぅ…………こんな場所で、死にたくないぜ」


 辺りを見渡せば、賢一が隠れる大型機械とは、反対側に、いくつかの赤いドラム缶が見える。


 さらに、奥には、木製パレットが山のように積まれており、そこから作業員ゾンビが歩いてきた。



「奴らは…………」


「ゾンビが出たぞっ!」


「ナイフを投げるっ!」


「グゲッ!」


 賢一は、ギャング達を眺めると、連中も同じく、ドラム缶や土嚢などに隠れていた。


 そして、そこから矢を放ち、ペティナイフを投げては、作業員ゾンビを仕留める。



「へへっ! 回り込めば、お前も終わりだっ!」


「奇襲成功っ! 死にやがれっ!」


 いきなり、背後から東アジア系ギャングが、ツルハシを振り回しながら、賢一を攻撃してきた。


 トレンチメイスを振るわんと、ラテン系ギャングは、後ろに武器を引いた。



「うわっ! しまった」


 二人の奇襲に、賢一は焦りながら、バックステップして、攻撃を避けようとする。


 もちろん、弓矢に射たれぬように、大型機械から出ないように、注意しながらだ。



「これ以上は、下がれんか?」


「ふへへっ! これは交わせないだろう」


「さあ、終わり…………ぐぶぅ」


 賢一の前には、東アジア系ギャングが、ツルハシを思いっきり、頭上に掲げた。


 トレンチメイスを勢いよく振るい、ラテン系ギャングは、さらに、もう一撃を喰らわせようとした。



「兵隊は、もう一人隠れてたんだよっ! 残念だったわねっ!」


「なっ! クソッ!」


 ラテン系ギャングを、マチェットを片手で振るいながら、腹を切り裂きつつ、モイラが現れた。


 それを見て、いきなり登場した彼女に、東アジア系ギャングは驚いてしまった。


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