左側のタンクを囲む通路に、エリーゼは人影を見つけたが、そこを注意しながら眺める。
「ん? やっぱり、誰か隠れているわよっ!」
「はあ? マジかよ…………」
皆は、それを聞いてから、直ぐさまハンヴィーの車体に身を隠した。
エリーゼは、車体後部からタンクを眺めると、やはり、こちらに弓を向ける人物を見つけた。
ダニエルは、トンプソンを出しながら、いつでも敵を撃ち殺せるように、身構えている。
「敵だっ! 他のギャング達が、武器を横取りしに来たぞっ!」
「奴らに取られて、たまるかっ!」
「銃は使うなっ! ゾンビ達を呼び寄せてしまうっ!」
向こうも、こちらの姿を確認しているらしく、攻撃を仕掛けてきた。
ミニボウが連射されたり、クロスボウの強力な矢が、ハンヴィーに当たる。
「何人か、弓矢を持つ連中が存在するようだっ! 普通なら援護射撃しながら前進するんだがっ!」
ガツンガツンと、金属音を立てながら、車体を攻撃する矢を受けて、賢一は渋い顔になる。
「仕方ないよっ! ここは撃つしかないわっ! 援護射撃するから、突撃してっ!」
「分かったっ! 背中は頼むぞっ! 走るからなっ!」
「マジかよ? また、銃撃戦かっ!」
「私の拳銃じゃ、当てられない距離だわ」
モイラは、ハンヴィーのボンネットから体を出し、M4カービンを単発連射する。
その間に、賢一は手前に停車してある深緑色をした、M35小型トラックにまで走っていく。
弓矢が頭上から、次々と降り落ちる中、彼は車体に無事たどり着く。
だが、そこには、作業員や兵士の死体などが頃がっており、強烈な悪臭を放っていた。
ダニエルは、車体後部から適当に何発か、トンプソンを何発か連射する。
エリーゼも、スカンジウムを、一発二発だけ撃つと走り出した。
「ふぅ? 右側には、モイラとダニエル? 左側のハンヴィーには、ジャンとメイスー達か? エリーゼは?」
賢一から見て、四人は向かい合う、ハンヴィーに身を隠しながら、敵と戦っていた。
エリーゼは、どうやら右側にあるフォークリフトを、盾にしながら身を潜める。
「私の丸ノコは、あそこまで届かないですっ!」
「俺のペティナイフも届かん」
メイスーとジャン達は、仕方なく、パイプガンとモスバーグ500から散弾を撃つ。
もちろん、当たるワケではないが、敵の注意を引くために、やるしかない。
「グアア?」
「ギュアア~~~~」
「グルアアッ!」
体中に、黒いウニが刺さっている水産加工職員ゾンビが、フラフラと何処からか現れた。
フレッシャー&ジャンピンガー達も、道路から駐車場に向かって、勢いよく走ってきた。
連中は、銃撃音に引き寄せられたらしく、四方八方から迫ってくる。
これに、双方とも不味いと思ったが、どうにかして、ゾンビ達に対処するしかなかった。
「ゾンビが来やがったか? クソ、相手をしなければ成らなくなるっ! まず、先にギャング達から潰すか? うらっ!」
「ギャアアッ! グア? グゴ…………」
賢一は、作業員ゾンビの脳天に、ゴボウ銃剣を突っ込むと、勢いよく走りだしていった。
「くそ、矢が飛んできやがるっ!」
飛んでくる矢に、なるべく当たらぬように、ひたすら賢一は、ジグザグに走っていく。
当たらなかった矢は、地面に刺さることなく、カツンッと、音を立てながら跳ね返る。
そして、何とか建物の下へと、彼は無事に着いたが、周りはゾンビが歩いてきていた。
左右から、フレッシャー&ジャンピンガー達が、挟み討ちにしようと、向かってくる。
「くっ! 前に進むしかないかっ! シャッターを開けて、中に入ってしまえばっ!」
「グルアアァァァァ」
「ギュアアアア」
「奴ら、銃撃してきてるぞっ! これじゃあ、ゾンビが寄ってくるっ!」
「仕方ないっ! 下がるぞ、下で向かえ討つんだっ!」
中に入って、賢一は内部を見渡したあと、フレッシャー&ジャンピンガー達を待ち構える。
外からは、屋上のギャング達が、後退している様子が、怒鳴り声により分かった。
「俺が突破口を開いたから、連中は下がるようだが? コイツらは…………」
「ウアアッ!!」
「グアアオオッ!」
中にまで、入ってきたばかりのフレッシャーに対して、賢一は睨みながら、ゴボウ銃剣を向ける。
ジャンピンガーに対しても、注意しながら決して、隙を見せないように身構える。
「グルアアッ! グルオッ!」
「はっ! 殺られてしまえっ!」
フレッシャーが襲いかかってくると、賢一は冷静に、顎から脳天に向けて、ゴボウ銃剣を振り回す。
「アアアアーーーー!!」
「グルオッ!?」
「ウエエエエ~~」
「居たぞっ! あそこだっ!」
「白兵戦を仕掛けてやるぜ」
「援護するっ! 弓矢なら、ゾンビは来ないからなっ!」
ジャンピンガーも襲いかかってくると、建物には、他のゾンビ達も小走りで入ってきた。
作業員ゾンビが、シャッターから入ってきて、水産加工職員ゾンビも後から続く。
そうかと思えば、今度は奥にある階段から、ギャング達が降りてきた。
さらに、反対側の銀色カーテンが開かれた方からも、敵が続々と現れる。
そちら側にも駐車場があり、連中はマチェットやトレンチメイス等を、振り回しながら走ってくる。
「銃が使えないから、弓矢と剣で、俺を殺そうってか?」
「ギャアアッ! グギッ!」
賢一は、ジャンピンガーが飛びかかってくると、ゴボウ銃剣を、顔面に突き刺した。
それから抱き締めるようにして、奴の死体を盾に取り、弓矢から身を守ろうとした。
直後、肉盾に多数の矢が刺さり、中には貫通してしまう物もあった。
特に、死体の右腕を破壊して、後ろにある壁に、深々と突き刺さる物もあった。
それは、左側のギャングが射たったため、賢一には角度的に、運良く当たらなかった。
「うわっ! ヤバいっ! クロスボウかっ!」
「あの野郎を殺せっ!」
「連続攻撃だっ!」
「グギギィィ~~~~!! ギャッ!?」
「グルアアッ!! ギェェ…………」
賢一は、肉盾を捨てるとともに、生死をかけて、左側にある大きな灰色の機械に走っていった。
当然、その間も弓矢やクロスボウによる射撃は続くが、それを彼は何とか回避しながら逃げていく。
ミニボウの玄を、何度も引いて、白人ギャングは矢を放ってくる。
クロスボウを構え、黒人ギャングは膝だちで、狙い射ちしようと、目を鋭く光らせる。
作業員ゾンビは、ギャング達が目に入ったのか、そっちに向かっていが、射殺されてしまう。
ウニだらけの水産加工職員ゾンビも、弓矢が何本も刺さり、真後ろに倒れてしまった。
「ギャング達が、多いっ! 多勢に無勢って、感じか? ふぅ…………こんな場所で、死にたくないぜ」
辺りを見渡せば、賢一が隠れる大型機械とは、反対側に、いくつかの赤いドラム缶が見える。
さらに、奥には、木製パレットが山のように積まれており、そこから作業員ゾンビが歩いてきた。
「奴らは…………」
「ゾンビが出たぞっ!」
「ナイフを投げるっ!」
「グゲッ!」
賢一は、ギャング達を眺めると、連中も同じく、ドラム缶や土嚢などに隠れていた。
そして、そこから矢を放ち、ペティナイフを投げては、作業員ゾンビを仕留める。
「へへっ! 回り込めば、お前も終わりだっ!」
「奇襲成功っ! 死にやがれっ!」
いきなり、背後から東アジア系ギャングが、ツルハシを振り回しながら、賢一を攻撃してきた。
トレンチメイスを振るわんと、ラテン系ギャングは、後ろに武器を引いた。
「うわっ! しまった」
二人の奇襲に、賢一は焦りながら、バックステップして、攻撃を避けようとする。
もちろん、弓矢に射たれぬように、大型機械から出ないように、注意しながらだ。
「これ以上は、下がれんか?」
「ふへへっ! これは交わせないだろう」
「さあ、終わり…………ぐぶぅ」
賢一の前には、東アジア系ギャングが、ツルハシを思いっきり、頭上に掲げた。
トレンチメイスを勢いよく振るい、ラテン系ギャングは、さらに、もう一撃を喰らわせようとした。
「兵隊は、もう一人隠れてたんだよっ! 残念だったわねっ!」
「なっ! クソッ!」
ラテン系ギャングを、マチェットを片手で振るいながら、腹を切り裂きつつ、モイラが現れた。
それを見て、いきなり登場した彼女に、東アジア系ギャングは驚いてしまった。