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閑話とは言え、後々に繋がるエピソードです。ここでは末っ子・
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<本文>
薊が去り、春休みに入った。
兄の外出中、足音を立てずコッソリと忍び込み、相変わらず兄のベッドを占領し、枕をスンスン。そして妄想を膨らます澄美怜。
……私達、校内ですれちがったりしたら、毎日会ってるのにドキドキしそう。ウィンクとかしちゃうかも。ああ、ちょっと楽しみ……
ふと首を横振りして思い直す
でもお兄ちゃんに依存してばかりじゃ駄目だ。ちゃんと自立もしなきゃ。新しい友達とか作ってどこか行ったりしよう―――
今迄の澄美怜はクラスメイトとはプライベートで遊ぶ事はほぼ無かった。兄との時間が減るのを避けるため、誘いが有っても流していたのだ。
あぁ、私も遂に女子高生かぁ……どんな高校生活が待ってるのかな……。でも私はドラマチックじゃなくていいから平穏なのがいいナ、な~んて言ってるとフラグが立ちそうだから止めとこ。
……そう、ここで寛いでる様に平穏がいい。う~やっぱここが一番落ち着くよー。
そこへ廊下から忍び寄る人影。
『そろそろお邪魔虫しなきゃな……』
ノックもなくカチャリとドアが開き、一瞬ビクッとする澄美怜。溺愛する妹・蘭の愛らしい顔だけがドアからひょこり現れる。
「またお兄ちゃんのベッドを勝手に使って! もうそろそろ御使いから帰って来ちゃうよ」
人差し指を鼻先に当て、し――っ。内緒なんだから! と声を顰める。
「も~しょーがないなぁ……」
ひそめた声で両手で拝みながら
「お願い、静かに」
「はぁ……。ところで今度東京で私の見たかったアートカルチャ―展があるんだけど一緒に行ってくれない? 遠いから友達同士はちょっと、ってお母さんが」
私の天使からのお誘い……これはモチロンOK。
「うんうん、イイネ。じゃついでにオシャレな店とかいっぱいあるから服とか色々見て、おいしい店でランチとスイーツと、時間が余れば映画と~……」
テンションが爆上がりの
『じゃあ、おねがいね』
そう言って一瞬見せた蘭の笑顔は、何故か近年見た中で最高のものだった。
***
目的地は電車と徒歩で2時間近く。それぞれ高1と、中1の予備軍の姉妹で可愛くキメて、横浜のベッドタウンからいざ東京へ。
蘭はちょっと背伸びしたい時期。気持ちだけでなく、実際ここ一年でグンと背が伸びて
今日は姉妹ではなく友達同士で東京に遊びに来たカンジに見られたい様だ。そのためのアイテム。ツバのついた帽子をチョットカッコ付けて目深に被る。
澄美怜の3年前とほぼ同じ顔を持ち、まだあどけなさも少し残しながらもキャップアイテムにより発する大人っぽさと相まって妖精的な色気を感じる。
でもこうしてないと余りにも姉そっくりなこの子は姉妹とすぐバレてしまうから、目的としては正解。服もコ―デが被り過ぎぬよう前々から打ち合わせ済み。こんな感じでまずはお目当てのアートカルチャー展へ。
……蘭ちゃんってば、今までは全~部私と一緒のものが良いって言ってたのに、今は自分の世界観を持って楽しんでいる……
溺愛する姉としてはフクザツな気分だけど、このアート展はちょっとファンシーで可愛いからこんな自立はイヤじゃないな……。私もお兄ちゃんからこんな風にカワイく自立しないとな……
じっくりアート展を楽しむ二人。ふと気が付くともうお昼。早速事前にチェックして来た店で美味しくランチ。食べながらアート展のレビュー、そして最近読んだマンガやラノベの話に花が咲く。
小さな口で上品にモグモグと食べるところを眺めるだけでも癒される。
……小さい頃からいつもお姉ちゃん、お姉ちゃんってくっ付いて来て可愛いかったなぁ……。いや、今でも可愛いし……
この頃の私とそっくりだけど中身は少し違う。自分は真性のブラコンだけどこの子はどちらかと言えばシスコン ……かな? 自分で言うのも何だけど。
そうだ、その辺り現在はど―なのかちょっと聞いて見よう!