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第27話 疑似転職

合同授業の日から1週間が過ぎた


相変わらずというべきか俺の評判は真っ二つに分かれており"曰く手段を選ばない卑怯者"、"曰く相手を嵌める事に特化した実力者"となっている


まぁ確かに手段を選ばないのはその通りだし相手を嵌める事に特化しているのは所持カードの都合上正面での殴り合いにかなり向いてないからというのもあるから地味に否定はできないんだがな


そんな事を考えながら昼食を食べていると正面の席に座っている久慈川さんから話しかけられる


「そういえば浅麦君のバウンティポイントって今いくつまで貯まっているんですか?」

「ん?俺のバウンティポイントか?

ちょっと待っててくれ」


俺はタブレット端末を取り出して起動し、バウンティポイント関連の部分を開く

確かにここ最近やたらと喧嘩を売られてたのもあってあまりこっちを気にしていなかったな


「…………26730ポイントだな」

「うぅ……わかってましたけど私の2倍以上です……」


俺の場合喧嘩を売られた時の報酬も面倒くさいからバウンティポイントにしてたからなぁ……授業で得られる分も含めればこのくらいは容易にいく


そう言えば先生はバウンティポイントか多ければ本来開示されない情報も徐々に開示されるようになると言っていたな……試しに今どんな情報が追加されてるか見てみるか


「ん?確かに新しい情報が開示されてるな……」

「ほんとですか?私まだ10000ちょっとしか無くて殆んど解禁されてないんです」

「どうも25000が最初のボーダーラインっぽいなこれ。

追加されてる情報は……この学園が設立された理由か?

何故これが秘匿情報扱いに……?」


まぁ重要度がそこまで高くないのは必要ポイントが授業で得られる分だけで半年もあれば開示されるためにそこからある程度察することは出来る


だが秘匿情報として入っていると言うことは何かしら理由があるはずだ


「……やっぱりこの学園、いやギガフロート自体が研究施設としての役割を担っている訳か」

「研究施設ですか?」

「あぁ、最初このギガフロートにくる時に可笑しいと思わなかったか?

あまりにも人の通りが少なすぎる上に商業施設らしい所が存在していないんだ」

「……あっ!言われてみれば確かにそうです!

それに買い物も寮内の施設で殆んどが済んでしまいますしバウンティポイントで取り寄せも出来てしまいます!」


学園に着いてからギガフロートの施設なんかも色々と調べては居たんだがその大半が居住区画とデュエル関連のショップや施設であり、所謂コンビニエンスストアはスーパーマーケット、商店街なんかの商業施設が不自然な程に無い


一応寮の部屋には備え付けのコンロなんかの生活家電も軒並み揃っているがそれを使った料理等をしようにも一階の購買で食材を買うかタブレット端末でバウンティポイントを使って商品を注文して配達してもらうくらいしか無い


「元々が研究の為だけに作られたというのならある程度納得はいくがそうなるとなぜここに学園を設立したのか、何を研究しているのかと言った疑問がいくつも出てくるがちょっとこれだけじゃ情報が少ないな。

次の情報開示までに必要なのは……およそ25000つまり50000程で解放か」

「なんでこういう形式で情報公開しているんでしょうかね?」

「さぁな、ただ一つ言えるのはこの学園が実力者を欲しているってくらいか?

そうでもないとこんな形式は取らないと思うしな」

「確かに……」


問題としてはなぜ実力者を求めているのかとか何故ここを研究場所として選びわざわざギガフロートまで用意したのかってくらいか……


「次の授業は確か職業学とデッキ構築学の合同授業だったか?」

「そうです、確か昨日の職業学で魔族の職業のデッキについてよく調べておいて欲しいって先生言ってましたよね?」

「魔族ねぇ……」


魔族の職業の特徴は主に3つ。

1つ目は《即死》、2つ目は《犠牲》、3つ目に《封印》だ


基本的に魔族という職業の特徴としては全体的に強力なデメリットを持ったカードが多い代わりにそれを遥かに上回る効果を発揮するカードが多い


その分デッキ構築の難易度が恐ろしい程高く使いこなせればすぐにでも一流のプレイヤーとして活躍出来るとも言われている


「浅麦君ならどういうデッキを組むんですか?

やっぱり似たようなデッキも持ってますし《犠牲》軸ですか?」

「それも悪くないんだがな、俺なら《毒》型でやる」

「へっ!?」


《毒》状態……お互いのターン終了時に1ダメージずつ受ける状態異常だが実は《魔族》のカードにはこのダメージを上昇させるカードや相手の"プレイヤー"を《毒》にするカードが存在する


まぁあまりにもマイナー過ぎて全く注目されてないんだがな


「久慈川さんは……相当やりにくそうだな」

「えへへ……」


まぁ仕方ないだろう、ただでさえ《犠牲》や《即死》なんかの部類は久慈川さんのプレイスタンスとは全く合っていないからな


「で、でも案が無い訳じゃないんですよ!」

「大方攻撃力ダウンでの盤面鎮圧後のデメリットカードでのデッキ破壊だろ?」

「なんで分かるんですか!?」


むしろ久慈川さんが使えるとしたらそれくらいしか無いからな……魔族には自分ごとではあるが全体の攻撃力を大きく下げるカードが存在してるし


「っとそろそろ時間だな、教室に戻るとするか」

「ですね、じゃあ向かいましょうか」


昼休憩が終わるまで後10分となった為俺達は食堂でトレーを返却してから軽く話し合いながら教室へと向かう


何故か最近久慈川さんといる時に数名からの視線を感じる気がするがまぁ気にしなくても良いだろう


教室へと戻ると久慈川さんは何かに気付いたのか首を傾げて俺へと声をかけた


「あれ?浅麦君、今日は2つしかデッキを持ってきていないんですか?」

「ん?あぁ、今回は今まで作ってきたデッキのユニークレアの大半を一つのデッキに纏めて来たから必然的に複数のデッキを持ち歩くのが難しくなったんだ

まぁデッキ破壊の方はユニークレアの効果の噛み合わせが悪いからそのままなんだけどな」

「え?それって本気のデッキってことですか?」

「まだあんまり試せてないから調整も甘いけどな」


正直バランスが難しすぎてまともに試せるバランスになるまで結局1週間も調整し続けながら採用するカードを絞り込んだ。

俺持っているユニークレアは合計10枚、内3枚は俺の職業では使えないカードの為論外として更にもう2枚はデッキ破壊型デッキ関連のカードだ。


ユニークレアを5枚も投入する以上下手なバランスで組む訳には行かなかったからな……




教室に到着してからしばらくすると午後の授業開始を告げるチャイムが鳴り、職業学及びデッキ構築学の先生がやってくる


「ほら、授業始めるぞー」

「席に着け、静かにするんだ」


先生の指示に従い、クラス中の皆が一斉に着席して私語をやめる


「さて、今日の授業は昨日ヒントを出してたからある程度察している奴も居るだろうが魔族のデッキ構築とその実戦だ」


実戦?


この世界において職業は一度決めてしまえばそれを変えることは上級職への進化以外に方法は無かったはずだが……


「実は数年前から職業を変更出来ないというこの問題点について解決できるシステムは実現していてね、それがようやく実用テスト可能になったから君達には今回そのテストついでで本来使えない職業に対する理解を深めるべく今回の合同授業を企画させて貰ったんだ」

「まずは君達のタブレットに今回の職業変更についての注意事項等を送らせて貰ったので先に読んでおいてくれ」


授業用のタブレットにデータが送信されて来たすると周囲の反応はかなりざわつき始める


「お、おい!?別の職業でやれるってすげぇワクワクしないか!?」

「こ、これって革命的じゃないかしら!?」

「え!?じゃあずっと迷ってて結局使えなくなった職業でもやれるってこと!?」


とはいえ現実はそう甘くない。

実際に注意事項を読んでみると正確には転職するわけではなくデュエルフィールドを専用の仕様にすることによるデータ的な転職……早い話ゲーム版の仕様をデュエルフィールドに適応したわけらしい




同封されていた使用可能なカードリストを開いてみたが……横5列縦10列のカードリストが2000ページ以上、つまり100000枚超えのカードの量……これもしかしなくても今まで確認された全てのカードデータ入力してるな?

ってか容量的によく入ったな……


「あぁ、気付いたか浅麦。

実用テスト可能になるまで何年もかかった理由がそいつだ。

毎年毎年何十枚も新しいの発見されるもんだからほんと終わりが見えなかったよ……アハハハ」


その……お疲れ様です


「とはいえだ、今回の職業は魔族。

使えるのはそれらの職業のカードの中では共通と専用のみだ、そこで画面右上にある漏斗のマークを押して共通と魔族の項目で絞り込みをしてみなさい」


絞り込みの機能を確認してみるとかなり細かい条件で絞れるようだ


コスト毎、能力毎、攻撃力順、HP順、職業毎


試しに魔族と共通だけで絞って検索をかけてみる。

すると2000ページ以上あったページ数が129ページまで減った


…………まぁ十分過ぎるほど多いんだけどな


「その状態ならば比較的欲しいカードを探すのは楽なはずだ。

まずはそのタブレットのデータで自分なりのデッキを作成して登録、専用のデュエルフィールドで読み込むことでその職業て実際に戦えるようになるぞ」


だが俺は先生の説明中にある事に気付く


「先生、質問良いですか?」

「なんだ?」

「これってもしかしてユニークレア関係はわざとデータに入力していない感じですか?」

「あぁ、流石にユニークレアはそもそも持っている奴自体が少なすぎるしデータ化しようにも解析させてくれるような奴は殆んど居ないからな……秘匿されているカードなんかもあるから単純にデータが足りないんだよ」


もしかしたらゲーム版のほうでもユニークレアを実装出来なかったのはそれが原因なのかもしれないな……




相変わらずこの世界は常識が大きく違いすぎるな……



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