目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第28話 盗賊作り出す魔族デッキ


デッキの作成に置いて重要なのはカード同士のシナジーとコストバランス、職業アビリティとの噛み合わせやドローソースだ


特に重要なのがドローソースであり、俺の場合はフィクスシャッフルを前提に組んでいた為にギリギリのバランスとなっていた為あまりドロー系のカードは多く入れてないが普通のデッキであればドロー系のカードをしっかりと入れていなければ手札が簡単に尽きてしまうのだ


そしてデッキに加えるカードコストのバランスもかなり重要だ、コストの重いカードばかりを入れていたら序盤でカードをまともに使うことも出来ずにアッサリと負けるのがオチだコストの低いカードもある程度必要になる


魔族のユニットカードには比較的大型のユニットが多く、全体的に要求されるコストは必然的に高くなるが魔族には他の職業にはないある特殊効果を持ったカードがある


コスト1のアクションカード《生贄》。

このカードの効果は自身のユニット一体を選んで死亡させることによって自身の最大MPを1増やすというイカれた能力だ


このカードは条件さえ揃っていれば下手したら2ターン目からすぐにでも起動してしまう為に序盤で許してしまうととてつもなく痛いアドバンテージを相手に許すことになる


《生贄》以外にも最大MPを増やすカードは無いわけではないがコストが4と微妙に使いづらい為こっちはそこまで警戒は必要ない




魔族の職業アビリティなのだが……癖がかなり強い


1つ目はコスト5以下の相手ユニット一体を選んで死亡させる《襲撃》

2つ目はユニット自分の一体を死亡させランダムな味方ユニット一体の攻撃力をそのターンの間だけ死亡させたユニットの攻撃力分上昇させる《恐怖の力》

3つ目が味方ユニット一体に"攻撃時死亡"を付与する代わりに攻撃力+5、《貫通》を付与する《死への覚悟》


このように強力な単体効果を持っている


今回のデッキのバランスは


1コスト6枚

2コスト4枚

3コスト2枚

4コスト6枚

5コスト3枚

6コスト5枚

7コスト2枚

8コスト2枚


ユニットカード19枚、アクションカード11枚


といった形となっている


攻撃的な魔族デッキにしては珍しい防御主体のデッキにはなるが上手く刺されば守り切るだけで勝てるためかなり相手の意表を突くことが出来るだろう


ひとまず完成したデッキデータを保存しておく


「デッキが出来た者達はデータ送信で私達教師に送ってくれ。

デッキの完成度も授業の評価基準にも関わってくるからしっかりと組めよ〜!」


クラスの様子を見てみると元々魔族を使っていた者達は比較的簡単そうに組んでいるようなのだがやはりというべきか本来使えない職業だった為にだいぶ苦戦を強いられているように見える


俺の場合は対面した時の対策で相手のデッキを分析したりとかはよくやっていたからそれの要領でなんとかなるがこの世界は基本が相手に自分の得意を押し付けるタイプだからな……


クラス中の反応が予想通りだったのか先生達は頷きながら何処か楽しそうにしている


改めて魔族の専用カードをいくつか見てはいるがやはりというべきか味方側のユニットが死亡する事を前提としたカードが多い


そしてそれを後押しするように死亡時に効果を発揮するタイプのカードも多く存在しており、死亡させたユニットをHP1の状態で復活させるなんて効果のカードもある


「ううっ……」


なんというか……久慈川さんとの相性が本当に最悪な職業だよなホント……。

肝心の久慈川さんもタブレットとにらめっこしながら涙目になってるし……




合同授業の1時間目は俺を含めた数人以外はかなり時間ギリギリまでタブレットとにらめっこして終了となった




合同授業の2時間目の時間に突入し、俺達は実技棟の2Fへとやってきていた


実技棟2Fの一番奥にある部屋、普段は貸し出しすらされていないその部屋へと入ると普段俺達が見ていたデュエルフィールドとは違う特殊なデュエルフィールドが10台設置されており、その部屋の壁には大型のモニターがいくつもあり、何やら解析用と思われる機器も並んでいた


「さて、ここが前半の授業で伝えた疑似転職システム採用型のデュエルフィールドだ。」


先生はさっそくデュエルフィールドを1台起動する……けれどフィールド上にコロッセオは生成されなかった


どういうことだ?


「まぁ見ての通り今回のデュエルフィールドはグラフィック系のシステムは疑似転職システムと膨大な量のカードデータが原因で最低限でしか搭載していない。

よってデュエルシステムを起動してもこのようにグラフィックは最低限しか展開出来なくてね、意識をデュエルフィールドに移しても服装なんかは悪いけど制服で固定させてもらってる」


むしろなんで展開出来てるのかが謎でしか無いんだが……


「さて、対戦するメンバーに関しては先程の休み時間の間に我々の方でランダムに割り振っておいたので正面のモニターの通りのフィールドへ移動してくれ」


俺の場所は……7番デュエルフィールドだな


「っと……浅麦か、こりゃ油断できないね」

「お前は確か魔族使いの……」

「そ、倉木 拓真。

君とはあんまり話してなかったけど前々から戦ってみたいとは思ってたんだ」

「なら素直に挑めば……あぁ、俺が勝った時の条件か」

「まぁね、君って基本勝負は受けるスタンスだけど勝った時はバウンティポイント根こそぎ持ってくから下手に挑めなかったんだよね……デッキも何種類もあるから読めないしリスクが高かったから授業でぶつかれるのを待ってたんだよ」

「別に先に言ってくれればその辺の相談くらいは乗ったんだが……まぁいいか」


まぁ手が読めない相手との戦いはどうしてもリスクが高いからな……前世だとそれが比較的普通ではあったがこっちの世界だと基本的に相手の手の内はある程度バレている事が前提となる場合が多いからどれだけ事前に情報を集められるかが鍵になるし


俺はタブレット端末をデュエルフィールドに接続する


「それじゃお手並み拝見!」

「悪いがいつも通り絡め手で行かせてもらう!」


俺達はデュエルフィールドを起動してその意識をフィールド内へと移していく


目を開けるとそこには先程と同じ制服姿の俺が青白いテスト空間に立っていた


確かに最低限のグラフィックって感じだな、かろうじてこちらの操作盤とフィールドのマス目が分かる程度だ


「これは……なんか結構違和感あるなぁ」


倉木もいつもと違う空間に若干戸惑っているようだ


すると目の前にウィンドウが投影される


『データ読み取り中……デッキ生成開始』


デッキエリアに半透明となったカードで出来たデッキが設置され、俺と倉木の目の前に5枚ドローされた状態で空中に投影される。

手札はそれなりに悪くない


「「デュエル!!」」

『貴方が後攻です』


後攻か……魔族同士での対面なのを考えるとあまり嬉しくはないな


魔族のカードを考えると序盤のムーブは基本2択になってくる


一つは他の職業でもよくあるアビリティポイントへの変換。

もう一つは最初のターンからのいきなりのユニット展開だ


これらの場合脅威度としては後者の方が高く、最初からいきなりのユニット展開となるとあり得る可能性としてはすでに《生贄》を発動出来る状態であるという事だ


「僕のターン、MPを1消費して前列右側に《プレゼントゾンビ》を召喚してターンエンドする。」

『ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛』


《プレゼントゾンビ》2/1


倉木側の前列右側のマス目に何やらプレゼント箱のような物を抱えた薄汚れたゾンビが現れる


《プレゼントゾンビ》……1コストで召喚可能なユニットの中でもかなり優秀な部類な魔族専用カードだ。

このカードの面倒な部分としては死亡時にカードをドローする効果を持っている為に倒しても相手にはメリットにしかならないという点が上げられる


特に《生贄》なんかとはかなり相性が良く、要警戒カードの一つだ


「俺のターン、MPを1消費して前列左側に《蠱毒の青虫》を召喚する」

『キシャアアァアア』


《蠱毒の青虫》1/1


対してこちら側の前列左側には全身を紫や黄、緑などの色で構成したかなり毒々しい見た目の巨大な青虫が現れる


「あちゃー、やっぱりそのカード入れてたかぁ……」


《蠱毒の青虫》は魔族デッキの中でもかなり採用率の高いカードだ。

確かにこのユニットは1コストで攻撃力もHPも1だ……だがその能力はかなり汎用性が高い


「《蠱毒の青虫》の召喚時能力発動!

このユニットは自分の正面にいるユニットをランダムに《毒》にする!」

『シャァァァアアアア!!』

『ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!?』


《プレゼントゾンビ》2/1《毒》


「ターンエンド、ターンエンド時に毒の効果発動だ。」

『ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!?!?』


《プレゼントゾンビ》2/1→死亡


「僕のターン、コストを2支払い《ボムゾンビ》を前列中央に召喚してターンエンドだ。」

『ぐぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛う゛う゛……!!』


《ボムゾンビ》1/3


前列中央に体が大きく膨れ上がったゾンビが現れる。

名前からしてどう見ても死亡時に効果を発揮するだろうなこれ……


《生贄》の餌にしてきそうで若干面倒だが下手にユニット出すくらいならここで《蠱毒の青虫》を破壊したほうが良さそうだな


「俺のターン、ドロー……っ!

運が良いな……《蠱毒の青虫》でダイレクトアタック!」

『キシャァァァアアアア!!』

「うえっ……」


《倉木 拓真》HP30→29


《蠱毒の青虫》から倉木は毒々しい紫色の糸を吐きかけられる


絵面が中々酷い……やられる側にはあまり回りたくないものだ


「さらにコストとしてMPを1消費してアクションカード《生贄》を発動。

《蠱毒の青虫》を犠牲に俺の最大MPを1増加させる」

『ギシャァァァァァアアアア!?!?』


《蠱毒の青虫》1/1→死亡

《浅麦 誠》最大MP2→3


この手の最大MP上昇系の効果はあくまでも最大が上がるだけであり、上がったターンはMPも同じ用に上がるわけではないので俺の残りMPは1。

一応カードが無いわけでもないんだがここは下手に出さない方が良い


「残りのMPをアビリティポイントに変換してターンエンド。」


魔族デッキはここからが本番だ……なんとか守り切りたい所だな



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?