目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第53話 新たなる切り札

『争奪戦終了のお時間となりました、専用の特設フィールドの転移を開始します』


アナウンスの声が聞こえると俺の視界は完全に切り替わり、講堂のような広い空間に出た。


その空間にはどうやらこの争奪戦に参加した全生徒が集められているようでかなりの人数となっている


「あっ!浅麦君!」

「ん?久慈川さんか、広い上に人も多いから合流出来るか若干不安だったが良かった」

「正直近くに居なかったら多分見つけられませんでした……それにしても浅麦君一度凄い勢いでポイント伸ばしてませんでしたか?」

「あぁ、ほぼほぼ運勝ちではあったけど3年生の先輩にギリギリで勝ててな」

「ホントですか!?」


彼女はキラキラと目を輝かせてこっちをみてくるが正直あんな勝ち方をした俺としてはどうにも申し訳なさが勝ってしまう為に何とも言えない気分にさせられた


俺からすれば全く誇れる結果じゃないからな……若干罪悪感がある


人によっては運も実力のうちという人もいるが俺としてはカードゲームとはその運要素も何処まで削って確実性を求められるかが重要になってくると思っている


何故なら運要素が大きく絡んでしまってしまえば安定性が大きく欠けてしまい、勝てる相手と勝てない相手の判別が難しくなってしまうからだ


特にギャンブル性の高いカードは一度失敗するたリカバリーが効きにくい


だからこそ俺は運要素が絡んでくるタイプのカードをあまり好んで使わない。

まぁ対象ランダムとかは普通に使うけどな……


「久慈川さんの方もだいぶ調子良さそうだったがどうだったんだ?」

「それが……全部勝てました!」


あぁ……特殊勝利は初見殺し性能高いからな……特にセフィロトガードはその特性上狙おうと思っても狙えないカードだからな……可能性があるとすれば対象ランダムな即死攻撃や封印くらいなものでターゲットとして指定できないという能力はそれだけ凶悪な証でもある


「特殊勝利は基本的に盤面無視だからなぁ……久慈川さんの場合最悪セフィロトガードだけ残ってれば良いだけの話だしな」

「そうですね、対象ランダムの攻撃や全体攻撃なんかでやっぱり狙ってきましたけどそもそもの耐久力がかなり高いので普通に耐えられるのも大きかったです」


俺は苦笑いしながら久慈川さんの話を聞いていると彼女は少し悩むような素振りを見せた


「ただやっぱり準備が整うまでに物凄い削られやすくって私自身のHPもセフィロトガードを出すまでに30近く削られて危なくなる場面がものすごく多かったです」


あぁ、こればかりは久慈川さんの数少ない致命的な弱点だな


彼女はユニットを攻撃することを嫌う都合上どうしても盤面を制圧したりすることが出来ずに相手に好き勝手されやすいのだ


確かに数を出したり等といった盤面には強いが《アイアンボディ》や《被ダメ軽減》の系統の相殺するダメージを超えたユニットを何度も出されたりするとその瞬間全てが崩れ去ってしまうのだ


結果準備が整う前に自分のHPを30以上削られてしまい負けてしまうというのが一番最悪のパターンだ


「こればかりはちょっと難しいかもな……相手に盤面の自由を譲るのはそれだけリスクがあるからな」


久慈川さんとお互いのデッキについて話し合っているとブザーが鳴り始め講堂のような空間の正面にある舞台の上に数名の人物が現れる


『これよりユニークレア争奪戦の表彰式を執り行います。

それでは初めに今争奪戦のランキングから発表したいと思います、お手元のポインターをご覧ください』


俺は司会の指示に従い、腕に装着されたポインターを起動しようとすると空中に今回の争奪戦のランキングが詳しく載っている画面が投影される


警戒こそしてはいたがどうやら俺のポイント獲得量を抜かれることは無かったようだ


『今回の争奪戦の結果はご覧の通りとなっております。』


その瞬間、俺の視界が切り替わっていき、目の前に映っていたはずの舞台の上に立っていた。

随分といきなり転移させるな……


「それでは今回の優勝者である浅麦 誠には景品であるユニークレアカードの授与を行いたいと思います。」


会場中から歓声とブーイングの両方が飛んでくる


まぁブーイングしている連中の半分くらいは考えなくても分かる、どうせ実力至上主義連中だろう。

だが恐らくもう半分は俺がユニークレアカードを既に多数抱えているからというのめ大きいだろう


そもそもユニークレアを持っている人物というのはこの世界ではほんの一握りしかいないのだ。

この学園にいるとたまに感覚がおかしくなりそうに本来こんなにユニークレアをポンポンと出していたり回収している俺や学園側おかしいのであって本来は持っている人物はほんの一握りしかいないはずのカードなのである


俺の目の前の空間に光が集まり、一枚のカードの形に固まっていく


まぁ現実空間じゃなくあくまでも仮想空間だからな……多分あとで戻った時に直接手渡されそうだが無駄に演出凝ってるな


俺は光が集まって出来たそのカードを掴んで内容を確認しようとする


すると光のカードは少しずつ通常のカードへと変換していき、どんなカードなのかが顕になった


「……?こいつは……」


カードに書かれた名前は《簒奪者・アーマゲドン》


一応全職業共通で使えるタイプのユニークレアカードの一種のようだが能力としては6コスト0/1、スタッツだけ見るなら尋常じゃなく弱いんだがあまりにもイカれた能力をしていた


その能力は"このユニットが召喚された際、前方にいる全てのユニットの『攻撃力』、『HP』,『能力』を奪って自分の能力とし、0/1にする"となっている


これは前方にいる前衛後衛含めた最大2体までのユニットの性能を全て奪って相手には0/1の置物を押し付ける事が出来るという今までにない面白い性能となっていた。

しかもこの能力は単体指定では無く自分の正面にあるユニットなので範囲指定の為に久慈川さんのセフィロトガードのような対象として選ぶことができない効果すらも無視して効果を押し付けることが出来るとんでもない能力だった


これであれば生徒会長のような武器型相手は無理だが久慈川さんのような特殊勝利ユニットなんかにかなり強く出れるな……これは良い切り札を貰った


とはいえ問題が無い事もない、このカードは相手の出方に合わせて使うユニットであるために出来るだけ早い段階で引いておきたいカードだが盤面次第では比較的腐りやすいカードとも言える少なくともまたデッキの調整は必須だろうな


そんな事を考えていると俺の視界の端辺りに通信用のウィンドウが現れる


視覚のみに投影されているようなので恐らく俺以外には見えず、声も聞こえないタイプだろう


『あー、浅麦君、聞こえてるだろうか?

そのカードの実物の譲渡で少し話があるんだ。

この争奪戦の閉会式が終わったら部屋を出ずにしばらくそのまま残っていてくれないだろうか?』

「あ、分かりました。」

『ありがとう、そこまで時間は取らないつもりだから安心してくれて良い

ではまたあとで』

「分かりました」


カードの譲渡について話?ただ渡すだけでは無いとなるとこのカードには何かあるのか?


その後俺以外のポイント上位者2名にはユニークレアとは行かないがその一つ下のランクのカードから好きなカードを自由に10枚まで選んで受け取る権利が与えられた


正直俺としてはユニークレアよりもぶっちゃけそっちのほうが欲しかったがこのカードは今までにない効果であり、本気のデッキに組み込まないという選択肢はない為にこれは口が裂けても言えなかった


……まぁ俺の場合は普通に買えば良いだけか


正直苦労に見合うかどうかで言えば十分なのだがどことなく気が抜けてしまう俺だった……




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?