『これより1-B『郷田 タケル』対1-D『浅麦 誠』による公開実技授業を行います』
アナウンスと同時に開いたゲートから俺は闘技場型の会場へと入場していく
だが俺の対面側から入場してくる『郷田』の様子が明らかにおかしい事に気が付いた
何だアレ……職業を示す衣装にバグったようなノイズが走ってる?
それにあいつの表情からまるで殺意を滾らせているような強い敵意を感じる
耳を澄ませると郷田の声も聞こえてくるが……
「タタキツブス……ツブシテヤル……トウゾクフゼイガ……!」
何だアレは……?到底正気には見えない
「気にするならこれが終わった後にするか……」
俺はデッキを取り出して『フィクスシャッフル』を行ってデッキを自分の理想形となるように混ぜ、デュエル用の台へとセットする
郷田はかなり荒々しくガードをシャッフルして台に叩きつけたのを確認した俺は開始の合図を叫ぶ
「「デュエル!!」」
それにしてもあんな雑に扱ってカードは大丈夫なのか?
俺と郷田との間に巨大な天秤が現れ、天秤は俺側に傾く
どうやら俺が先行のようだな
「俺のターン」
俺は手札から最初の五枚を引いて『フィクスシャッフル』に問題が無いかを確認して早速動いていく
「MPを1消費して前列右側に『いたずらおばけ』を召喚してターンエンド」
『ケケケケ〜♪』
《いたずらおばけ》1/1
俺側の前列右の枠にまるで可愛らしくデフォルメされたような姿の白い布を被った子供のようなおばけが現れる
今回のデッキのコンセプトは嫌がらせだ。
序盤からどれだけカード効果を発揮できるかが後半になってから重要になってくる
まずはとにかくユニット召喚だ
「オレノ……ターン!
MP……アビリティポイント変換……ターンエンド!」
それにしても郷田は一体何に手を出したんだ?
明らかに目は虚ろな上にカタコト、殺意は剥き出し……しかも妙なノイズと来た。
誰がどう見てもヤバいのに手を出したとしか思えない
「俺のターン。
MPを2消費して前列左側に《いたずらの魔女》を召喚。」
『よーし!イタズラだぁ!』
《いたずらの魔女》1/2
「《いたずらおばけ》でダイレクトアタック。」
『ケーッケケケケケ!』
「……ッ」
『ちぇー、反応無くてつまんなーい!』
《郷田 タケル》HP30→29
「《いたずらおばけ》の攻撃時能力を発動、このユニットが攻撃後生き残っているのなら相手の手札からランダムな1枚を《ニセモノ》にすり替え、すり替えられたカードはデッキの一番下へと入れる。」
『いたずらしちゃうぞーー!!ケケケケ〜♪』
「……?」
《いたずらおばけ》の効果により郷田の手札からクラッカーのような音と共に煙が発生し、山札にカードが1枚加わっていった
この《ニセモノ》というカードの特徴としてはカードを使用するまで絵柄等のカード内容がデッキの下へと移動したカードと同じ物となり、カードを使用すると消費したコスト分のMPを回復して味方全体に2ダメージとランダムなデバフを付与してカードを1枚ドローするカードになる
デメリットとしてドローを加速させてしまうという点はあるが、このデメリットは特にそこまでデュエルに影響することはない為にそこまで心配はする必要がない
そして《いたずらおばけ》が能力を発動した事をトリガーにして《いたずらの魔女》の能力が発動する
「追加で《いたずらの魔女》の能力発動。
このユニットは1ターンに一度だけ味方の《いたずら》と名の付くカードが能力を発動した場合カードをデッキから1枚ドローする」
『もっといたずらしてちょうだい!』
この《いたずらの魔女》は効果発動が容易なドロー加速カードであり、1ターンに一度だけしか発動出来ないとはいえかなり扱いやすいユニットだ
俺はデッキからこちらの手元に浮遊してくるカードを受け取って手札として加える
「ターンエンド」
理想としては手札全てを《ニセモノ》にすり替える事だが途中で発動するだけでも十分なダメージソースになる
今回のデッキはコンセプトはユニットを何体も召喚して相手の手札に《ニセモノ》を数多く仕込む事、そして手札への圧力だ。
出来るだけ盤面は埋め尽くしておきたい
その為このタイミングでのドロー加速は非常に重要だ
「オレ……ノターン……!
MP……アビリティポイントニ……変換……ターンエンド。」
2ターン目も動かずか……手札はそれなりに重そうだな
だがこれはこれで好都合だ
「俺のターン。
手札からMPを3消費して前列中央に《いたずらゾンビ》を召喚」
『ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛……。』
《いたずらゾンビ》2/3《挑発》
今回のデッキでは出来るだけ《いたずらおばけ》と《いたずらの魔女》の2枚は生存させておきたい。
そしてこの《いたずらゾンビ》も例に漏れず手札への圧をかけるタイプのユニットでもある
「《いたずらおばけ》と《いたずらの魔女》でダイレクトアタック!」
『『いたずらだぁ!』』
「……ッ!」
《郷田 タケル》HP29→28→27
「《いたずらおばけ》の能力で手札のうちランダムな1枚を《ニセモノ》へとすり替える」
『ケケケ〜♪』
「更に《いたずらの魔女》の能力発動、デッキから更に1枚ドローする」
『もっともーっと楽しみましょう!』
「ターンエンド」
これで俺の今の手札は6枚、次ターンには7枚となるため今まで以上に柔軟に対応が可能だ
俺の今までのデッキは追加ドローが最低限だったのもあって固定の動きしか殆ど出来なかったが今回のデッキは全体的にコストが低い傾向があるアグロ寄りな為に手札を予め増やしておけば取れる選択しも自然と増えていく
「オ……オレ……ノターン。
MP……3消費……前列中央……《侵食:双剣の剣士》ヲ召喚」
っ!案の
《侵食:双剣の剣士》1/4《侵食》《2回攻撃》
しかも《侵食》持ち《2回攻撃》……!流石に残してはおけないな
「ターン……エンド……」
《侵食:双剣の剣士》1/4→2/3《侵食》《2回攻撃》
早速侵食発動か……この攻撃力アップが本当に厄介なんだよな……
「俺のターン、コストとしてMPを3消費して後列右側に《いたずらデビル》を召喚」
『ケケケ〜♪』
《いたずらデビル》2/3
今度はデフォルメした小悪魔のような姿のユニットが現れる。
このデッキほユニット全体的にデフォルメされた姿のユニットが多いから傍から見ると絵面がすっげぇほっこりするんだよなぁ……盗賊カードだけど
「更に後列左側に追加で《いたずらおばけ》を召喚」
『ケケケケ〜♪』
《いたずらおばけ》1/1
「《いたずらの魔女》でダイレクトアタック!」
『いたずらしちゃうわよ!』
「……ッ」
《郷田 タケル》HP27→26
「《いたずらゾンビ》と《いたずらおばけ》で《侵食:双剣の剣士》を攻撃」
『いたずらだぁぁ♪』
『ゥ゙゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛♪』
『ゥゥゥ……ァァァアアアアアア!?!?』
『キャー♪』
『ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛!?』
《侵食:双剣の剣士》2/3→死亡
《いたずらおばけ》1/1→死亡
《いたずらゾンビ》2/3→2/1《挑発》
「《いたずらゾンビ》の能力発動。
このユニットが攻撃時、又はダメージを受けた時生き残っているのなら相手の手札のうちランダムな1枚のコストを+1する!」
『ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛♪』
「盗賊……フゼイガ……!」
「更に《いたずらゾンビ》の能力発動をトリガーに《いたずらの魔女》の能力発動、デッキからカードを1枚ドローし、ターンエンド」
《いたずらおばけ》を一体使い潰す必要があるのは痛いが、《いたずらの魔女》をここで切るよりはマシだ。
さっき召喚したもう一体に加えて《ニセモノ》を混ぜるカードはまだいくつかあるからな
「オレノ……ターン!
MP……4消費……前列中央……《侵食:重装剣士》ヲ召喚……!」『ウグォォォォオオオオオ!!!!』
《侵食:重装剣士》2/6《侵食》《挑発》
また侵食ユニット……!まさか全てのカードが《侵食》されているのか!?
「ターン……エンド……!」
《侵食:重装剣士》2/6→3/5《侵食》《挑発》
「俺のターン」
《挑発》持ちか……まともに相手するのも面倒だな
「MPを5消費して前列右側に《いたずらピエロ》を召喚」
『キーッヒッヒッヒ♪』
《いたずらピエロ》3/3
「《いたずらピエロ》の召喚時能力発動。
このユニットよりもコストが低いランダムな敵ユニット一体を手札に戻させる!」
『ワタクシのマジックでこの物を消してみせましょう!』
『ッ!?!?』
《侵食:重装剣士》3/5→手札
特定の条件に当てはまっている場合、強制的に場にあるユニットを手札へと戻す
これの唯一の弱点はあくまでも手札に戻すだけな為に再召喚されてしまう事と召喚時効果を2回使われるリスクがあること。
だがその最大の強みは場から強制的にユニットを除去することであり、とにかく攻撃を通したい俺のデッキには特に相性の良いカードだ
「《いたずらおばけ》、《いたずらの魔女》、《いたずらゾンビ》、《いたずらデビル》でダイレクトアタック!」
『『ケケケケ〜♪』』
『オシオキなんだから!』
『ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!!』
「グゥ……ッ!?」
《郷田 タケル》HP27→26→25→23→21
「《いたずらおばけ》と《いたずらゾンビ》の能力発動。
手札からランダムに1枚を《ニセモノ》にすり替え、更にランダムでもう1枚コストを+1する。
そして《いたずらデビル》の能力発動。
このユニットは
『『ケーケケケケ♪』』
『ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛♪』
よし、これでかなりの《ニセモノ》を相手の手札にねじ込めた
「更に《いたずらの魔女》の能力によりデッキから1枚ドローし、ターンエンド」
さて、そろそろ起爆する頃合いだな