《スパルタンソルジャー》がユニットとしてではなくプレイヤーとして現れる……明らかに異常事態だ。
職業としてユニットカードの物が使えるようになった?
いや、むしろ『デュエル世界』のユニットがこの世界で人に化けていたと考えるほうが自然だろう。
一体何が起こってるんだ?
「ォォォ……オォォォォォォォォォオオオオオオオ!!!」
言葉を話すだけの知性は無い……いや、話せないといったところか?
俺はデッキケースからデッキを取り出して『フィクスシャッフル』を行って目の前の台座をセットし、合言葉を言う。
「デュエル!!」
「ォォォオオオ!!」
巨大な天秤が俺達との間に現れ、相手側に傾いた。
だがその瞬間俺は相手の状態を確認して驚愕することになる。
「なっ!?最初から武器がセットされてる!?」
そう、本来であれば最初のターンはお互いにフィールドにもプレイヤーにも何も無い状態となっているはずなのに相手の《スパルタンソルジャー》だけは最初から攻撃力2、耐久力無制限何ていうふざけた武器がセットされていた。
おそらくだが相手側がただのプレイヤーではなくデュエル世界に存在するユニットであるからこそ起きた現象なのだろうが相手する側としてはあまりにも面倒極まりなかった。
「ォォォ……オオオ!!」
最初のターン、《スパルタンソルジャー》は何も召喚せずMPを消費する。
おそらくアビリティポイントに変換していると思われるが叫び声のような声を上げるだけで何も喋らない為にかなり分かりにくいな。
「ォォォ!!」
「くっ!?」
《浅麦 誠》HP30→28
先攻1ターン目から攻撃出来るとかアリかよ!
しかも2ダメージは1回の攻撃としてみれば弱いが先攻1ターン目からなんのデメリットも無かったのだとしたら明らかに強すぎる!
だがその時、また予想外な事が起きた
「グゥゥウウ……!」
《スパルタンソルジャー》に突如として鎖が現れて全身に巻き付き、動きを封じてしまう。
《スパルタンソルジャー》HP30《行動不能》《常時武器攻撃力+2》
《行動不能》……おそらく発動したトリガーはさっきの攻撃。
となると《スパルタンソルジャー》は自身の攻撃をトリガーに1ターン自身……というよりも武器による攻撃に対して《行動不能》を付与する代わりに常時武器の攻撃力を+2する。
そしてこの攻撃力上昇は武器を装備していなくても有効……通りで耐久力が無限扱いになってるわけだ。
そうなると厄介なのがこれがプレイヤー側自信に付与されている能力の為に封じようがないことだろう。
これが単なるカード効果なのであれば《封印》するなり《奪う》なり《破壊》するなりやりようはいくらでもあるのだがな……
この『DaR』においてプレイヤーに付与された能力はその能力に制限がない限り継続して効果を発揮し続ける特性がある。
そして現状プレイヤーに付与された能力を引っ剥がす能力は存在すら確認されていない。
2ターンに1回しか飛んでこないと分かっていても相当面倒くさい能力だぞこれ……
《スパルタンソルジャー》の攻撃が終わったからかターンエンド扱いとなり、俺にターンが回ってくる。
俺は今回のデッキ調整で序盤の動きを大まかに2通り行えるように組んでいる。
相手が最初のターンにアビリティポイントを貯めるだけだったり俺が先攻ならば《デーモンシャドウ》でも良かったのだが今回は別にもう1枚コスト1のカードを採用しているのだ。
「俺のターン、コストとしてMPを1消費して後列左側に《プレゼントミミック》を召喚する」
『ガパパッ!』
《プレゼントミミック》3/3
後列左側にクリスマスなんかで出てきそうなプレゼントボックスを模し、上下に分かれた箱から牙と長い舌が覗くミミックが現れる
1コストで3/3、盤面での有利を取ることを考えるとこれ以上無い性能だ。
だがこんなカードに制約がないわけが無く、これもしっかりとしたデメリットカードの一つだ。
「《プレゼントミミック》の召喚時効果発動。
このカードが召喚された際、相手は山札から2枚ドローする」
このカードのデメリットは相手の大きなドローソースとなってしまうこと、1枚ならともかく2枚は結構重いが序盤であればこのドロー加速は実はそこそこ重かったりもする。
理由としては単純に消費出来るMPが少ない為に手札が埋まりやすいのだ。
特に今回の《スパルタンソルジャー》は最初のターンにカードを使っていない為に今回のドローと合わせて次のターンの手札は8枚となる。
ルール上手札は10枚までしか持てずそれ以降は破棄される事を考えればこれは邪魔になりやすいのだ。
特に手札を減らせないサーチ効果を持つカードなんかを使ってしまえば余計に手札を圧迫する為にそれの対策としても機能する。
流石に最初から武器を装備状態である《スパルタンソルジャー》相手に盤面勝負して勝つのであれば《デーモンシャドウ》は大器晩成過ぎて使いにくいからな。
「ターンエンド」
「ォォォォオオオ!!」
俺のターンエンドと同時に《スパルタンソルジャー》へとターンが移る。
「ォォォオオ!」
《スパルタンウォリアー》2/2
《スパルタンソルジャー》は前列中央に何の効果も持っていないバニラカードの《スパルタンウォリアー》を召喚する。
何の効果も持っていない上にそこまで強くないカードだ、相手は種族軸の可能性が出てきたな。
「ォォォォオ……」
《スパルタンソルジャー》HP30《常時武器攻撃力+2》→《行動不能解除》
《スパルタンソルジャー》は《行動不能》がある為に攻撃せずにターンを終え、《行動不能》制限が解除された。
「俺のターン、コストとてしMPを2消費して前列中央に《盗人の殿》を召喚する」
『殿は任せてもらおうかい?』
《盗人の殿》0/3《挑発》
このカードはコスト2にしては攻撃力がない為に扱いが難しいカードではあるが序盤からあまり処理されたくないカードを守る際にはとても役に立つ。
それに能力はこれだけではない。
「《盗人の殿》の召喚時効果発動、相手の山札からランダムかカードを1
『お望みはこいつかい?』
俺の手札に《スパルタンアーチャー》が加わった。
盤面を無視して自由に相手を選んで攻撃する事が出来る《狙撃》持ちのユニットだ。
《挑発》なんかも無視して相手プレイヤーに直接攻撃する事が可能な為に結構有用なカードではある……能力値は2/4と4コストカードにしては微妙だけどな。
「《プレゼントミミック》でダイレクトアタック!」
『ガパパ!ガパァ!』
「ォォォォオ!!!」
《スパルタンソルジャー》HP30→27
「ターンエンド」
「ォォォォオ!!」
俺のターンが終了し《スパルタンソルジャー》が咆哮を上げる。
「ォォォオオオオ!!」
『ヒヒィィィィイン!!!』
《スパルタンホース》4/2《騎乗》
《スパルタンソルジャー》は後列中央にコスト3の《スパルタンホース》を召喚する。
案の定と言うべきかこのユニットの出現によってあいつのデッキが種族型デッキで確定した。
そしてその瞬間前列にいた《スパルタンウォリアー》が《スパルタンホース》の背後にある二輪の棘付き荷車に騎乗して新しいユニットとなる。
『ォォォォオオオ!!』
『ブルルッ!ヒヒィィィィイン!!!』
《スパルタンチャリオット》6/2《先制攻撃》
面倒くさいのが出てきた……《騎乗》という能力は自身の背後、もしくは前方に特定のユニットがいる場合そのユニットの攻撃力を追加した新しいユニットとして現れる。
合体前のユニット2体のうちどちらかがまだ行動できる
それに加えて《スパルタンソルジャー》は最初から武器を装備した状態の為にここで攻撃も貰うと考えると3ターン目にしては明らかにパワーがあり過ぎる。
これは生半可な奴じゃ太刀打ち出来ないだろうな。
『ヒヒィィィィイン!!』
『ぐあっ!?』
《盗人の殿》0/3→死亡
唯一の救いはHPが低いくらいしか無いのが余計にだるい……処理可能だからこそ最優先で排除する必要があるからだ。
そしてそれに続いて《スパルタンソルジャー》が剣を振りかぶってこっちに切りかかってくる。
『ォォォォオオオ!!!』
「ぐぅぅ!?」
《浅麦 誠》HP28→26
《スパルタンソルジャー》HP27《常時武器攻撃力+2》+《行動不能》
結構キッツイなこれ……警戒を怠って盤面制圧し損ねた場合一気に落とされかねないな……