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第70話 襲撃者の狙い


俺達は周囲の安全を再確認した後に俺が戦っていた《スパルタンソルジャー》だった生徒のいた場所へと向かっていく。


そこには先程監視カメラで確認した通りに大量のカードがまるで人の形をして倒れたかのようなあまりにも不自然な散らばり方をしたカード達が散乱していた。


「これは……浅麦、お前が戦ったときはちゃんと人だったんだよな?」

「…………いや、剣闘士のユニットカードである『スパルタンソルジャー』がプレイヤー扱いで出てきた。」

「なっ!?」

「それ本当ですか!?」


二人は信じられないとばかりにこちらを見るが正直俺だって実際に相手をしていなかったら信じなかっただろうな。


俺は散らばったカードの1枚を拾うとそのカードに違和感があることに気付いた。


「このカード……ユニットの絵が描かれている枠が暗くなっている上にひび割れたような模様がある。」


カードの内容もよく見れば『スパルタンソルジャー』となっており、他のカードを調べてみても全てが同じようにカードが暗くなってひび割れたような模様が描かれている。


そして俺は散らばったカードの中から人間でいう心臓の位置に存在する1枚のカードを拾った。


「《スパルタン兵器・木馬タンク》か……しかも他のカードとは違って崩れかけている?」


まるで力を使い果たしたと言わんばかりにカードの端っこから少しずつ塵となっている……どう見てもカードを大量に集めてそれを何らかの力を与えて人に擬態させていたとしか思えない。


削れた原因はどう考えてもさっきのデュエルでの敗北……デュエルが関わるとなるとどう考えても『DaR』又は『デュエル世界』に関わる力なのは間違いない……


俺はその時、入試の時に俺に負けた受験生達を取り押さえていた捕縛又は鎮圧用の特殊カードの存在を思い出した。


「まさかカード効果……?」

「その可能性もありますしデュエル世界の住人が直接力を与えている可能性もあると思います。」

「っ!夢見先輩ですか。」

「えぇ、到着が遅れてすみません。

こちらに向かう最中に『デュエニュクス』の妨害に遭いまして……。

それにしても出来れば私の到着まで動かないで欲しかったのですがね。」

「すみません、とはいえコイツの居座っている場所が場所だったので不意打ち気味に先輩に何かされるよりもこちらから先手を打ったほうが良いと思いまして。」


実際こんなカードの塊みたいな奴が相手だ。

例えカード効果で攻撃してきたとしてもなにもおかしくはない。


「……確かに一理ありますがそれならそれで連絡を入れてほしかったですね。」

「確かにそうでした、ご心配をおかけしました。

久慈川さん、倉木、そっちの方は何か仕掛けられた形跡はあるか?」

「んー、大丈夫だと思います。

それらしいカードが仕掛けられた形跡は見つけられませんでした。」

「こっちも同じくだ。

それどころかコイツがその場から動いたような形跡がない。」


そうなると怪しいのは……


俺は地面に落ちた制服の懐を弄って何かが入っていないかを確かめる。


するとブレザー内側の胸ポケットの中に1枚のカードを見つけた。


「こいつは……《時限爆弾》……コストの表示がないってことはデュエル用じゃなくて現実に影響を与えるタイプのカードか。」

「これは厄介ですね……幸いカードは起動していないですがこれは遠隔から発動出来るように改造を施されています。」


改造……?


「カードの改造なんてそんな簡単に出来るものなんですか?」

「普通に考えても不可能です。

ただでさえカードという存在は未だに解析の難しいオーパーツです。

歴史上様々な事に使われていましたが未だに解明されて居ないことが多くあるんです。

もし向こう側に『デュエル世界』の住人がいるのならば出来てもおかしくはありません。」


オーパーツか……いや待てよ?


「それなら桜木先輩の所で販売されているあのカードパックはなんなんですか?」

「あぁ、あれですか。

私も副会長から聞かされた程度しか知らないのですがデュエル世界からもたらされた技術で作られた物らしくこの世界に一番近いデュエル世界とリンクしたカードを作り出す装置があるそうです。

ただパックを開封してから何がカードとして現れるかが決まる為に実際にどんなカードがどこまで出るのかまでは把握しきっていないそうですよ?

副会長曰くわかるのは繋がる世界が切り替わったことくらいとのことです。」


この世界のカードパックはそういうシステムだったわけか……確かに思い出してみれば今まで昔のパック再販とかこの世界で一度も聞いた覚えがない。というよりもシステム上出来ないと言ったほうが正しいんだろうな。


「浅麦君、落ちているカードですけどこれ全部同じ『スパルタン』系のカードです。」

「やっぱりか……俺が戦った時プレイヤーが《スパルタンソルジャー》な上にデッキも《スパルタン》系の種族デッキだったからな。」


流石に他にも複数体いるのだとしたら現実的に考えて同じ系統のカードがユニークレア含め何枚もあるとは考えにくい。


「夢見先輩、先輩を妨害しに来『デュエニュクス』のやつもカードのユニットがプレイヤー扱いで出てきましたか?」

「いえ、私の場合は普通に生徒でした。

おそらくそこまで数は居ないと思われます。」


それもそうか……ユニークレアに加えただでさえ膨大な数が存在するカードの中から同系統のカード数百枚……普通に考えればそこまで手に入れるのにかなりの手間が必要だ。


それに……あまりにも強かった……今回勝てたのは上手く相手の全体攻撃を奪えたからというだけだ。


正直アーマゲドンが居なかったら俺はあいつに手も足も出なかっただろう。


「夢見先輩……一番考えたくはない想定ですが今回の襲撃犯の全員がユニークレアを持っている上にここへの襲撃が囮って可能性あります?」

「なっ!?

……ありえなくは無い……ですがそれは!?」


冷静に考えてみれば学校はともかくとしてこの学生寮は人質としての価値以外は存在しない。

この学生寮にどれだけの戦力が割かれているかは分からないが少なくともここに襲撃を仕掛ける旨味がそこまで無いのは確実だろう。


もし生徒会の人員をこっちに割かせるのが目的なのだとすればこっちはそれにまんまと乗せられた形になる。


それに加えて厄介な点として例えこの事に気が付いても対策のしようがないのだ。


俺はすぐ学生寮付近の監視カメラの全てをタブレット端末を通して確認する。


見れる範囲に限界はあるが人員がどれだけ割かれているかだけでも分かれば十分だ。


「とりあえず怪しいのは3人……流石に寮に避難しているやつに紛れ込んでいる可能性は考えたくはないな……」


その時ある事を思い出して落ちている制服のポケットを全て漁りある事に気が付いた。


「やっぱりだ、生徒手帳を持っていない。

生徒なら授業にも寮でもカードキーとして使えるから必ず持っているものだ。

そうなると寮の部屋に紛れている可能性はまず無い。」


これが分かったのはかなりありがたい。

『デュエニュクス』のような人間が寮に紛れている可能性はあるが少なくともこいつらのようにカードで出来た奴らが寮の中への侵入は出来ない。


だから寮の外でコソコソとしていた訳だ。


それにもし『デュエニュクス』の奴がいるのだとしたら少なくともここが《時限爆弾》で爆破される前に脱出しようとするはずだ。


少なくとも俺が見てきた『デュエニュクス』とかに関わる奴らは典型的な実力至上主義の奴らだ。

アイツラは結構小物地味た所があるからまず間違いなく自分の命を優先する。


「夢見先輩、先輩はこの事を会長達に連絡をお願いします。

ここは俺たちで全員取り押さえます。」

「なっ!?危険過ぎます!

それなら取り押さえるのは私が……」

「適材適所ですよ。

それと連絡が終わり次第寮の中の監視をお願いします。

俺達が全員取り押さえてカードに戻してしまえば少なくとも誰かしら確認する為に出てくると思います。」

「…………勝てるんですね?」

「少なくとも俺と久慈川さんは十分勝ち目はあります。

倉木、そっちはこれを使え。」


俺は元々いつか倉木に渡そうと思っていたカードを15枚ほど渡す。


「おっと!ずいぶんと多……はっ!?おまっ!?

これ本気で俺に渡す気か!?」

「あぁ、お前なら十分使いこなせると思う。

それに俺の所にあっても使わねぇからいらん!」


俺は倉木から呆れたと言わんばかりの表情でため息をつかれるが使えない俺の所にいつまでも死蔵していても勿体ないからな。


さて、ここからは時間との勝負だな。



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