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第71話 倉木の戦い


―――――倉木Side―――――



全く……浅麦の奴いくらなんでもめちゃくちゃだぞ……。


こんなカード達をあっさりと手放すとか……確かに盗賊じゃ使えないが売れば一財産だぞ?


俺は若干浅麦に引きながらも受け取ったカードを全てデッキに入れて新しいコンセプトのデッキを急造で拵える。


本当ならもっと時間をかけたいが流石にそこまでの時間は無い。

その上に受け取ったカード全てのシナジーがあまりにも強いために下手なカードをいれるよりは殆どの魔族が共通して入れているようなカードをいれるだけで十分過ぎるほど強力なデッキが作り出せた、デッキの組み替えにはそれほど時間はかからなかった。


デッキの準備を終えた後、俺は浅麦から受け取った座標へと隠れながら進んでいきさっき浅麦が相手した奴と同じ明らかに怪しい生徒を見つけた。


「どう見てもこいつだよな……」


俺はタブレット端末に浅麦から一時的に付与してもらった強制デュエルの権限を起動して不審な生徒をターゲットに指定する。


浅麦の付与されてるのとは少し違う奴だが強制的にデュエルするという一点に限れば特に変わらない。

そのまま有線で近くの監視カメラに接続して寮内の『デュエルフィールド』に遠隔で接続する


「強制デュエル!」

「ッ!?」


その瞬間俺の意識は一時的に暗転した。





俺の意識が戻り、周囲を見渡すと見慣れたコロシアムの入り口が見える。


「…………良かった、無事に強制デュエルを仕掛ける事は出来たか。

そうなるとどいつが相手になるかだが……」


浅麦から聞いた話の通りなら確実に相手は何らかのユニットカードがプレイヤー扱いで出てくる上に追加で能力を最初から得ている。


浅麦の場合は2ターンに1回攻撃してきたようだが能力が同じとも限らないからな……


入場口からコロシアムの内部へと入ると向こう側で待っている生徒の形をしていたユニットカードの正体が見えた。


「《アーマードスライム》……『魔物使い』のユニットか。」


そこには一見全身鎧の甲冑にしか見え無いが鎧の隙間から紫色の粘液のような物が見え隠れしているユニット、《アーマードスライム》が存在していた。


このユニットが出てくるとなると考えられるパターンとしては種族型か……浅麦が倒した奴から出てきたカードも全部同じ系統だったしな。


俺は目の前にあるフィールドにデッキをシャッフルして置く。

流石に浅麦みたいな『フィクスシャッフル』は無理だがある程度のシャッフルコントロールは出来る。


それに欲しいカードが手元にないならドローソースを使ってでも引けばいい。


お互いに準備が出来たのを確認した俺は開始の合図を叫んだ。


「デュエル!!」

『ガチャッ……!』


俺達の前に巨大な天秤が現れ、それは相手側に倒れた。


どうやら後攻のようだがこっちとしても好都合だ。


俺のデッキはカード効果の都合上どうしても後手に回る必要があるからな。


だが相手のターンになったその瞬間、その考えはいきなり打ち砕かれた。


「なっ!?最初から最大MPが3になってやがる!?」


そう、相手側の壁に設置されたクリスタルは一つではなく3つの光を灯していた。

それはすなわち最大MPが3である事を示しており、この状況で後攻となるのはあまりにもアドバンテージが大きかった。


《生贄》で最大MP差はなんとかならなくもないが浅麦や久慈川だとかなりキツそうだな……俺がこいつと当たって助かった。


『ガチャ……』

『ゴププァッ……!』


《スライムクロー》2/3


MPを示す光が2つ消滅し、相手側の前列中央に金属製の刃で出来た武器としての爪を左右に装備したオレンジ色の粘液が現れる。


確か《スライムクロー》は特に能力を持っていないバニラユニットだったか……


『ガチャ……』


更に『アーマードスライム』はアクションカード《スライムサーチ》によりデッキから《スライム》という名のあるユニットカードを1枚サーチした。


《スライム》型はしっかりと準備も整えないと強みを発揮するのは難しい。

だからこそこの動きだけでも相手がある程度先を見据えて動いてる事は見て分かった。


《アーマードスライム》は行動を終えたのか俺の方へとターンがまわってくる。


俺は手札を見てどのように動くかを決め、早速行動に移ることにした。


「前列中央に《蠱毒の青虫》を召喚。」

『ーーー!!』


《蠱毒の青虫》1/1



「《蠱毒の青虫》の召喚時能力発動。

自身の正面にいるランダムなユニットを《毒》を与える!」

『シャァァァァアッ!!!』

『ッ!?』


《スライムクロー》2/3+《毒》


「ターンエンド。

そしてターンエンドと同時に《毒》の効果発動。

《スライムクロー》に1ダメージを与える。」


《スライムクロー》2/3→2/2《毒》


『ガチャチャ……ガチャン!』


最大MP4……結構差がキッツイな。


『ガチャガチャ……』

『ガチャンッ!!』


《アーマードスライム》2/4


早速前列左側の方にプレイヤーとして出ているあいつと同じユニットである《アーマードスライム》が現れる。


こいつの厄介な能力が一度死んでも違うユニットとして蘇るという部分だ。


シナジー系のデッキはあまり盤面にユニットを残させたくないがこの手のユニットは倒し切るのに手間がかかってしまう。


『ーーー!!』

「ぐっ!?」


《倉木 拓真》HP30→28


『ガチャ……』

「ーーーーッ!?!?」


《スライムクロー》2/2→2/1《毒》


「俺のターン。」


《毒》のおかげで《スライムクロー》は放置していてもターンエンドと同時に死亡する。


場には《アーマードスライム》が残っているが無茶して取る理由も無ければこのMP差を埋めない理由もないな。


「《蠱毒の青虫》でダイレクトアタック!」

『ギシャァァア!!』

『ガチャッ……!』


《アーマードスライム》HP30→29


「MPを1消費して前列右側に《魔蟲の卵》を召喚」


《魔蟲の卵》0/1《行動不能》


《魔蟲の卵》……浅麦から貰ったカードの一つであり、1コストでありながら上手く運用する事が出来ればコスト以上の性能となるカードだ。


ただ能力を発動する為には自身が死亡する必要があるが《行動不能》がある為に自分から攻撃して死亡させるような動きは出来ない。


だが魔族デッキにはこの死亡時能力と凄まじく相性の良いカードが存在していた。


「続いてMPを1消費してアクションカード《生贄》を発動。

《魔蟲の卵》を死亡させて最大MPを+1する。」


《魔蟲の卵》0/1→死亡


《倉木 拓真》最大MP2→3


「更に《魔蟲の卵》の死亡時効果発動。

能力を−1/−1したコスト1〜3のランダムな《魔蟲》を同じ場に召喚する。」


《魔蟲の卵》がひび割れて爆発し、中から蜂とカマキリが合体したような黄色と黒の巨大な蟲が現れる


《魔蟲ビーマンティス》1/2《寄生》


《魔蟲》ユニットの最大の特徴とも言える能力の《寄生》。

これは自身の死亡時に相手側にユニットが存在している時に発動する能力であり、上手く回るとかなり厄介な能力になる場合がある。


《寄生》の発動効果は基本的にユニットによって違うが発動条件のみは同じな為、俺はとにかく味方を死亡させる必要がある。


そして俺はこれの死亡回数……というよりも《寄生》の発動回数が関わるカードを何枚か浅麦から受け取っていた。


「ターンエンド。」

『ガチャン……!』


《ミミックスライム》0/1


《ミミックスライム》……厄介な能力持ちのユニットだ。

このユニットの能力は選択したユニットの能力をコピーして攻撃力とHPを−1する。


つまりは……


《ミミックスライム》0/1→1/3


やっぱり《アーマードスライム》をコピーしてきた。


そうなると盤面の二体は少なくとも2回死亡させなければいけなくなる。


まぁこっちとしては能力的に好都合なんだがな。




さて、ここからどうするべきか……




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