―――――浅麦Side―――――
俺は今、久慈川さんと倉木の二人とは違う方向へと進み、三人目の不審人物の所へと向かっていた。
俺が今向かっている方にいる不審者には他の三人目と比べると違和感があった為に二人を向かわせるのは危なそうなので俺が向かっているが……俺はこの時あの人に擬態したカードの事を考えていた。
「……カードが人に擬態するのは百歩譲ってギリギリわからなくもないが、それが完全な自律行動をしてわざわざあんなカードを設置して離れるような細かい行動を取れるのか?」
それに加えて《時限爆弾》……あの手のカードは使用者が発動する意思を込めなければ効果は発揮されないがあのカードが擬態した奴らには特に意思があるようには見えなかった。
デュエルは全く別の印象を受けたが……
「どう考えてもあいつらの近くにそれを操ってた奴が居るのは確実……そして学園の中で用意出来るような物でない以上少なくとも外部から来たものだ。
それにあんな物を使う奴らと接触しようものならこの間のカチコミから警戒態勢を強化している生徒会が気付かないはずもない。」
つまり相手は……
「外部の人間か」
数分後、不審者の近くまで到着した俺は建物の影に身を潜め、タブレット端末から相手の様子をうかがう。
「……明らかに他三人と動きが違う。
確実に人間だろうな」
そう、他の三人は何処かぎこちなく、感情すら感じさせない機械的な動きだったのに大してこいつだけやけに細かい作業をスムーズに行っていた。
幸いデュエル用の端末を持っていることは確認しているのでこちら側から強制デュエルを仕掛ける事は出来る。
俺は懐のデッキケースと予備のケースからカードを取り出し、先程まで使っていたデッキをある程度組み替え、相手の能力を奪ったりする事に重点を置いた構成へと変化させた。
正直アルセーヌに関しては相手のデッキから盗まないと起動させにくいがデッキ外からカードを持ってくるだけならまだいくらでも手段はある為に盗む系のカードは最小限に留めておく。
どこを直すべきかはさっきのデュエルで粗方見つけていたからデッキの調整そのものはそう時間はかからない。
「調整完了……あとは」
俺はタブレット端末を操作して『デュエルフィールド』に遠隔で接続して生徒会権限を起動する。
「ターゲットロック……『強制デュエル』!!」
「何ッ!?」
俺の視界はその瞬間いつものように暗転していった。
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「はぁ……やっぱり人間だったか。」
先程のあいつの驚いた様な声からして既にもう他の奴らとは違う。
あいつが操っている側であるとは思うが万が一違った場合が面倒だな……
いや、それは今考えることじゃないか……
俺は自分の服装を見る。
「……まだ足りないってわけね。」
俺の服装である盗賊の衣装の所々がバグったようなエフェクトが出ている。
おそらくだが俺の職業が少しずつ変化しているせいで『デュエルフィールド』側のシステムがまだ俺の職業が盗賊だと完全に認識しきれなくなっているのだろう。
普通の上級職は一瞬で変わると聞いていたんだが何故俺だけ徐々に変化しているのやら。
俺はそんな事を考えながらコロシアムの入場口へと向かっていく。
門をくぐり抜けた先で待ち構えていたのは……何処かで見た覚えのある同年代と思われる『侵食』の影響を受けた魔物使いだった。
「浅麦 誠ォォォォォォ……!またテメェかぁァァぁア゛ああ゛!!」
「…………誰だ?」
正直声とか職業で何処か見覚えはあるのだが、あまりにも『侵食』が酷く相手の顔すら判別できないレベルでノイズが発生していた。
魔物使い……魔物使い……ん?
俺はこの時、完全に存在すらも忘れていた一人の相手を思い出した。
「あぁ、受験の時のか……名前は覚えてないけど」
「キキキザマァ……!マタジャマヲスルノカ゛ァァァ゛ァア゛ア!!」
よほど『侵食』が酷いのか声にすらノイズが発生しているように聞こえる。
というかどう見てもまともな思考能力は残っていなさそうだ。
おそらく思考すらも『侵食』されているだろう。
「はぁ、何をやらかしたのかは粗方想像出来る。
お前……自分から今回の襲撃に加わった上に力欲しさにわざとそれを受け入れたな?」
「オオオマエザェェエエエ!!オマエザエイナゲレバァァアアァ!?」
「もはやまともな会話すら成立しないか……」
俺は若干呆れながらもデッキを取り出して『フィクスシャッフル』を行い、カードの順番を組み替えていく。
「俺さえいなければと言うが単純なお前の実力不足だ。
ちゃんと入学出来るほどの腕があるのなら俺に負けたあとで他の奴らとの勝負に勝ってポイントを稼げてただろうに。」
「ウルザイ……!ウルサイ!ウ゛ルザイ!ウ゛ル゛ザイ゛!!」
デッキのシャッフルが終わった俺はフィールドのデッキ置き場にセットする。
「実力至上主義だっていうんなら自分の実力を示してみろよ?『
デュエル』!!」
「『でゅエる゛!!』」
デュエル開始の合図と共に俺達との間に巨大な天秤が現れて俺の方へと傾いた。
ふむ……先攻か、少し様子見したかったから後攻が良かったが仕方ない。
「俺のターン。
MPを1消費して後列左側に《デーモンシャドウ》を召喚。」
『ーーーー!!』
《デーモンシャドウ》0/1《隠れ身》
「ターンエンドと同時に《デーモンシャドウ》の能力発動。
このユニットは《隠れ身》状態の為、攻撃力を+1する。」
《デーモンシャドウ》0/1→1/1《隠れ身》
「ヴォレノタァァン!」
聞き取りにくい……
「MPヲ1消費シ《エローションゴブリン》を゛前列中央ニ゙゛召喚!」
『ギ……Gigi……が……』
《エロージョンゴブリン》2/2《侵食》
前列中央から黒に紫色を混ぜたような禍々しい色で染まり、目が赤く光ったゴブリンが現れる。
エロージョン……たしか英語で『侵食』を意味するんだったか……それにしても能力が高い。
《侵食》込みで実質1コストで3/1か……
「ターン゛エンド……!!」
『グギGi……Ga!』
《エロージョンゴブリン》2/2→3/1《侵食》
《侵食》の能力を考えればコイツが動けるのはたった1ターンか。
なら別に攻撃をしてわざわざ倒すまでもないな。
「俺のターン。
MPを2消費してアクションカード《ユーサープオーラ》を発動。
次に俺がユニットを召喚する際に自身と対となる位置にいるユニットを−2/−2し、そのユニットに加算する。
この効果はターンを跨いでも俺がユニットを召喚しない限り継続される。
ターンエンド。」
《デーモンシャドウ》1/1→2/1《隠れ身》
「お゛レのターン……!
MPを゛2消費シテ前列右側ニ゙゛《エロージョンスケルトン》ヲ召喚。」
『ギ……ギギGaGO……!!』
《エロージョンスケルトン》3/3《侵食》
またコスト以上にスタッツが高い……それに加えてスケルトンのようなアンデッド系統は基本的に魔族の専用カードだ。
そんな物を使っている辺りやっぱり普通のカードじゃないのは明らかだ。
「《エロージョンゴブリン》デダイレクトアダッグ……!」
『ギギャァァァァアァアア゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!!!』
「ぐぁぁあっ!?」
《浅麦 誠》HP30→27
なんだこれ!?今までに感じたことのないレベルの痛みだ。
「ダーンエ゛ンド……!」
《エロージョンゴブリン》3/1→4/0→死亡→消滅
《エロージョンスケルトン》3/3→4/2《侵食》
「俺のターン。
MPを3消費して前列左側に《ウェポンユーザーパー》を召喚。」
『武器……武器ぃ……ケケケ……』
《ウェポンユーザーパー》0/3
前列左側から明らかヤバそうな薬でも使ってそうな不審者が現れる。
そして相手の《エロージョンスケルトン》の対となる場所に召喚された事により前のターンに発動したアクションカードの効果に加えて《ウェポンユーザーパー》自体の能力も発動する。
「《ウェポンユーザーパー》の召喚時能力発動。
自身の対となる位置にいる敵ユニットの攻撃力を2奪い、自分のものにする。
さらに《ユーサープオーラ》の能力により対となる位置にいるユニットに−2/−2し自身の能力に追加する。」
『武器ィ!武器を寄越せぇぇぇぇえええ!!』
『!?!?!?』
《ウェポンユーザーパー》0/3→4/5
《エロージョンスケルトン》4/2→0/0→死亡
よし、いい具合に処理とコスト詐欺を行えた。
とはいえ前ターンに使ったカードのコストを考えれば5コストで4/5+2ダメージのようなものなのでコスト詐欺かと言われると少し難しいか……
とりあえず序盤はいいが……どうせ何か持っていそうだな……