俺が呼び出したマモンの周囲には《強欲の簒奪獣・アーマゲドンビースト》が変化したものと思われる鎖と、《強欲の化身・アルセーヌ=グリード=ルパン》が分裂して生まれた影のような人間達が取り囲んでおり、俺へ攻撃する道を完全に阻んでいた。
このカードは3枚で1枚のカードという特殊な扱いのカードであり、召喚されればこのユニットがやられるまで前列、又は後列の1列は丸ごと使えなくなる代わりにその列を埋めている扱いになる為ダイレクトアタックを受ける事はなくなる。
さらに合体召喚時に片割れがまだ行動可能であれば《先制攻撃》を得るという特殊能力に加えて自身の能力は合体元のユニットの能力の合計値と同じになり、その能力を引き継ぐという特殊能力もある。
そしてこの引き継ぐ能力の中には《強欲》は引き継がれないのだが元々持っていたスタックだけは引き継がれるため、《強欲の簒奪獣・アーマゲドンビースト》の《強欲》のスタックを受け継いだ状態となっている。
「《強欲獣・マモン》の召喚時能力発動。
このユニットが召喚された際、自分以外のユニットを全て死亡させ、死亡させた枚数分自身のHPを増加させる。」
『キュルルォォォォオオオオン!!!』
『な!?何をっ!?』
『いゃぁぁぁ!?』
『ふ、不覚……!?』
『ーーーッ!?!?』
「なnDaトっ!?」
《グリードバンデット》0/1→死亡
《グリードドミネイター》0/1→死亡
《グリードベンケイ》0/1→死亡
《エロージョンガーディアン》8/7→死亡
《強欲獣・マモン》10/10→10/14《全体攻撃》《先制攻撃》《強欲1/10》
「さらに《強欲獣・マモン》の能力発動。
このユニットの《強欲》は相手のドローではなくユニットが死亡した枚数分増加する。
よって先程の効果で死亡した4
『キュァァィァァァアアアア!!!』
《強欲獣・マモン》10/14《全体攻撃》《先制攻撃》《強欲1/10→5/10》
正直これだけでも十分過ぎる能力だがこのユニットには大きなデメリットが存在する。
その瞬間、俺の前列のマスの全てに鎖が交差するようなエフェクトが発生してマスが暗くなっていく。
《強欲獣・マモン》には自身が存在している間は他のユニットを召喚出来ないというかなり痛いデメリットがある。
まあだからこそ全体強制死亡に《全体攻撃》なんてイカれた効果を発揮できるわけだがな。
「《強欲獣・マモン》でダイレクトアタック!」
『グルルルァァァァァァアアアアアア!!!!』
「Giッ!?」
《鬼童 亮太》HP14→4
《強欲獣・マモン》10/14《全体攻撃》《強欲5/10》→《先制攻撃解除》
「ターンエンドだ。」
「ぉ゛レのターn!!
MPヲ5消費じテアクションカード《エロージョンバイト》をハヅドう!!」
『キュゥゥゥッ!?』
《強欲獣・マモン》10/14→5/7《全体攻撃》《強欲5/10》
《鬼童 亮太》HP4→16
能力。半減された上にHPを12も回復された……おそらく単体の能力の半分を自身のHPとして奪うといった所か。
だが《強欲獣・マモン》に対してそれは悪手だ。
「《強欲獣・マモン》の能力発動。
このユニットが場に存在している間、カード又は能力を奪う類の効果を受けた際にそれを奪い返す事が出来る。」
「ぐaぁぁaAあッ!?」
『キュゥゥゥゥウウウウ……』
《鬼童 亮太》HP16→4
《強欲獣・マモン》5/7→5/14《全体攻撃》《強欲5/10》
俺が『強欲』を覚醒させたきっかけはカードを奪われた事だ。
相手の物をなんでも奪い、己の物を奪われる事を許さない。
まさに『強欲』だ。
とはいえクセが強い事に代わりはない。
基本的に『即死』や《封印》、『除外』なんかの効果は普通に受け付けてしまう上に制約もそこそこ多い。
『強欲』は俺の持っていたカード達のクセの強さも強化していたのだ。
「グぅ……こスドとじテMPを3消費し、アクションカード《エロージョンチェーン》ヲ発動!」
『キュゥゥウッ!?』
《強欲獣・マモン》10/14《全体攻撃》《強欲5/10》+《行動不可》
3コストでユニット1体に《行動不可》の付与か、時間を稼いできたな。
「ダーんエndO!」
鬼童の奴の様子を見ると全身にバグったようなノイズが広がっている上にかなりの量の脂汗をかいている。
それに加えて声に関してももはやまともに聞き取りにくくなってきている。
どう考えてもこいつは使い捨てにされたんだろうな。
「試合を長引かせるよりはさっさとトドメを刺したほうが良さそうだな。
俺のターン……いや、ファイナルターンだ!!」
「なnダど!?」
「アビリティポイントを15支払い、職業アビリティ『秘めた欲望』を発動!
味方ユニット1体を《隠れ身》状態とし、《強欲》のスタックを+5する!」
《強欲獣・マモン》10/14《全体攻撃》《行動不可》《強欲5/10→10/10》
「《強欲獣・マモン》の《強欲》のスタックが10になった事で《強欲》の効果発動。
《強欲獣・マモン》はこのターンのみ《再行動》を得る。
なおこの《強欲》の効果は一度だけしか発動しない!」
《強欲獣・マモン》10/14《全体攻撃》《強欲10/10→-/0》→《行動不可解除》+《隠れ身付与》
《行動不可》の弱点は主に3つ。
一つは《行動不可》を付与したユニットを『生贄』として使われること。
もう一つは《封印》によって《行動不可》そのものを消される事。
そして最後の弱点が《再行動》を受けることだ。
《再行動》の効果は行動出来なくなっているユニットをもう一度だけ行動可能にするという効果であり、この効果は《行動不可》によって行動出来なくなっているユニットにも適応される。
はっきり言ってしまえば《行動不可》が解除された後に普通に攻撃してから《再行動》を付与したほうが圧倒的に良いのだが今の鬼童はあと一撃で倒せるところまでHPを減らしている。
それにただでさえ得体のしれないデッキの為に即死カード等の除去カードが無いとも限らない。
それならば今の内に付与するのが最適だろう。
とはいえ正直に言ってしまえば《強欲獣・マモン》を出した時点でこれを使ってしまうのが一番の最善ではあった。
こればかりは俺の油断だな……俺らしくない、どうやら上級職に至った時の興奮か少し浮かれていたようだ。
「《強欲獣・マモン》でダイレクトアタック!!
これで終わりだぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」
『ギュルァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!』
『ぐ…!GuaaaaaaaaaAAAAAAAAアアアアアアアアア!?!?』
《鬼童 亮太》HP4→−6
《浅麦 誠》win
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「戻ってきたか……」
「浅麦君!!」
「うぉわっ!?」
暗転した視界が戻り、意識を取り戻した身体で起き上がると突然何者かにぶつかって地面へと倒された。
「いっててて……久慈川さんか、驚いた。」
「浅麦君……!良かった……無事で……!」
「おーい、浅麦ー!そっちは大丈夫……そうだな。
ちょっと俺はお邪魔かな?」
倉木が妙な反応をしているが冷静に考えたら今俺……久慈川さんに思いっきり押し立てされている状況なのか……
「へっ!?いやぁその、ここここ、これは!?」
「とりあえずいったん降りてくれ、起き上がれない。」
「あ、ぁぁぁその……ご、ごめんなさい……」
「いや、我ながら無茶な事やった自覚はあるから久慈川さんの心配は素直に受け止める。
それよりアイツを確認しないと……」
俺はタブレット端末から監視カメラに接続して鬼童のいた場所を映し出した。
「ッ……!これは!?」
「おい、こいつはまさか!?」
「あぁ、こいつだけはデュエル世界のユニットじゃなく生身の人間だった……それも明らかに精神に異常を起こしているとしか思えない状況のな」
監視カメラに映された映像にはバラバラに散らばったカードではなく、真っ黒に染まった人間だったと思われるナニカが存在していた。
どう考えても口封じ……それもあのノイズの原因が起こしたものなんだろうな。
この世界の犯罪組織は…………本当に胸糞が悪い