俺達はひとまず学園寮の安全を確保したのを確認してからそれぞれの実行犯だった残骸を調べていった。
とはいえ流石に場所がそこそこ離れている為に情報の共有は通話やタブレット端末による写真を送信したり、情報を纒める為にチャットを活用したりと色々と同時に行っている。
そしてオレは自分がトドメを刺した鬼童だった残骸を調べていた。
流石に元々人間だった物を調べさせるのは気が引けたからな。
「……黒い墨?
……いや、質感が違う。
いったい何に変えられたんだ……?」
鬼童だった物は黒い塵のようなものに全身が置き換わっており、まともに身元を判別できるものは存在していなかったのだ。
カードに至ってはその全てが灰になっており、まるで全ての力を使い尽くして崩れ去ったかのようだった。
『こちら倉木だ。
わりぃ、こっちの方の《時限爆弾》だがお前がそいつを倒したのがトリガーになったのか塵になって消えちまった』
『こちら久慈川です。
私の方も《時限爆弾》が塵になってしまってます』
どう見てもこの寮の爆破を対処されるのを想定してるなこれ……『デュエニュクス』の奴らに『バーバリアス』達はどれだけ先読みをしているんだ?
あまりにも用意周到が過ぎるぞ。
「……なぁ二人とも。
襲撃犯の狙いは本当になんだと思う?」
『え?本命は多分『学園』……ですよね?』
『浅麦、要は『学園』の何を狙っているのかって事か?』
「あぁ、元から色々と疑問だったんだ。
なぜ『デュエル学園』がこんな絶海の孤島……もといギガフロートの上に設立されたのか。
そしてなぜここまで研究機関としての側面が強すぎるのか」
『それは……言われてみればたしかにおかしいです。
場所なんてここ以外にも沢山あるはずですよね?』
『あぁ、バカみたいに敷地こそ広いが探せば別にギガフロートに頼らずとも使えるような場所は幾つかあるはずだ。』
「……なぁ、この場所……いや、ギガフロートには『デュエル世界』に直接関わるナニカが隠されているんじゃないか?」
『『ッ!?』』
これは正直あまりにも証拠が無さすぎるため俺としても断定するのは難しい。
だが元々怪しんでは居たのだ。
それに極めつけは俺の『ブランクカード』だった《強欲獣・マモン》の現れるきっかけとなったあの実験。
そこから考えられる答えはそう多くはない。
「……この場所に『デュエルゲート』が存在するんじゃないか?」
『デュエルゲート』とは『デュエル世界』のいずれかと繋がった空間の歪みのような場所であり、そこを通るとこの世界から繋がった『デュエル世界』へと向けるらしい。
おそらくだがもしこの場所にあるのが『デュエルゲート』だと仮定するのであれば……まず間違いなく特定の世界と常につながるような規格外の『デュエルゲート』なのだろう。
通常『デュエル世界』は一定の周期でこの世界と近付いたりを繰り返している。
そしてそれは必然的に『デュエルゲート』にも影響を及ぼしており、『デュエル世界』が離れれば必然的ににそこと繋がっている『デュエルゲート』にも影響があらわれる。
だがそんな物の為にこんな超大掛かりなギガフロートを建造するとも思えない。
ならば残る可能性はそう多くはない。。
「一度先輩達に連絡を入れたほうが良いか。」
オレはタブレット端末を操作して夢見先輩に通話を入れる。
――prrrrr……prrrrr……――
「……応答なし、もしかして襲撃犯とデュエルをしているのか?」
次は田畑先輩へと通話を試みる事にした。
――prrrrr……prrrrr……――
「田畑先輩にも繋がらない?
桜木先輩は……?」
――prrrrr……prrrrr……――
「戦闘ky……もとい会長は?」
――prrrrr……prrrrr……――
「こちら浅麦、生徒会の先輩達全員と連絡が取れない。
全員デュエル中の可能性もあるが通信を妨害されてるかもしれない。」
『そんな……!』
『参ったな……どうせる?』
「いったん俺達だけでも合流しよう。
それに一度狙われた寮が無事なのを疑問視した奴らにまた襲撃されないとも限らない。」
『わかりました。』
『分かった。』
「とりあえず寮のエントランスに集合しよう。
そこからでもタブレット端末を接続して監視カメラにはアクセス可能なはずだ。」
俺はそこでいったん通話を切って反対方向にある寮の入り口へと向かっていく。
とりあえず鬼童だった残骸から得られそうな情報は粗方得た。
あまりやりたくはなかったが鬼童だった残骸の塵も少量ではあるが回収してある。
今はまだ下手に動かないほうがいい、相手の狙いの予測はある程度出来たとはいえ襲撃犯の規模が不明なのに代わりはないのだから。
――――――――――――――――――――
「あ、浅麦君!」
「やっと来たか。」
俺が寮のエントランスに向かう頃には既に二人が到着しており、何かを話していたようだった。
まぁ入口から一番遠いのは間違いなく俺だったからな。
「とりあえず寮の中は無事そうだな。」
「はい、さっき一緒に避難していた先生にもお話を伺ったのですが襲撃らしい襲撃や騒動は無かったそうです。」
「少なくともここにいる連中に襲撃犯の仲間は居ないとは思う。」
「とはいえ襲撃犯の一味である事を黙ってあえて傍観に徹している可能性も否定は仕切れない……余計に下手に動けなくなったな。」
俺はそういいながらひとまずタブレット端末をエントランス入口側にある職員用のPCへと接続し、生徒会権限による閲覧許可を行使して監視カメラへとアクセスする。
「すげぇ数のカメラだな……」
「これだけ多いと流石に見逃してしまいそうですね……」
「まぁギガフロート全体で見ればこれは仕方ないんだが……ほらよ。」
俺は数百とある監視カメラの映像を取捨選択していき、特に襲撃犯が多い学校側、そして寮の周辺、『DaR』関係の研究施設を中心に監視カメラの数を押していく。
既に破壊されたものもそれなりの数がある為にそれを絞り込んでいけばざっと50くらいには収まった。
とはいえこれらの場所の監視カメラの数がこれだけな訳もない。
それだけの数の監視カメラが破壊されているということだ。
「……あ!夢見先輩です!」
「マジだ、デュエルは……やってねぇみたいだな。」
「念の為ここで通話をかけてみるか……」
――prrrrr……prrrrr……――
「…………出ないな。」
「夢見先輩も気付いているような様子はないですね。」
「ってことは通信妨害で確定か」
「あれ?でもそれならなんで監視カメラは大丈夫なんですか?」
「単純な話この監視カメラだけはデジタルじゃなくてアナログ……つまりは有線接続による監視なんだろう。
有線接続なら通信妨害なんかは基本的に無視出来るから回線を物理的に文字通り切断されない限りは問題ない。」
さて、そうなるとどうやって連絡を取るべきか……
「……なぁ浅麦、これって校舎の放送機能は使えないのか?」
「校舎の放送機能か……ちょっと待ってろ。」
俺はすぐに監視カメラ用のシステムから離れて校舎の方へと直接アクセスを開始する。
流石に権限はかなり少ないが生徒会権限のある今なら校舎の放送システムくらいは権限はあるはずだ。
「っと……あった!倉木、助かった。」
「ほんとに出来るもんなんだな……」
「私やり方すら分からなかったです……」
まぁ俺やっている事は半ばハッキングにも近い。
下手したら罰則をくらいかねないだろうが今は非常時だし四の五の言っている暇はない。
―――――ピンポンパンポーン―――――
『夢見先輩、夢見先輩、こちら浅麦。
こっち側の問題は片付きました。
通信妨害の製で連絡が取れないためこのような形で報告させてもらいます。』
『ッ!―――!―――――!』
『すみません、こちら側では夢見先輩の声までは拾えません、状況が状況なのですみませんが俺は此処から下手に離れられません。
どうかよろしくお願いします。』
―――――パンポンピンポーン―――――
とりあえずは報告は出来た。
あとは先輩方がどうにか事態を終息させてくれるのを待つだけか……