―――――桜木Side―――――
「はぁ……はぁ……はぁ……ひとまずは一通り倒せたかな……」
学園の侵入者への対処を開始してから半日……僕達生徒会が対処した侵入者の数は……100を超えていた。
流石にデュエル中は僕達もどう足掻いても拘束されてしまい、相手している人物以外を抑えることが難しい。
まさかこの学園で物量で攻めて来られるとは思わなかった、全く警備は何をしているのやら。
「夢見、他の侵入者は?」
「現在確認出来る範囲には居ないようです。
ただこちら側の監視カメラで確認出来る範囲に居ないだけなので数名は機密区画に入り込まれている可能性があります。」
「そうか……」
この学園……いや、ギガフロートがこんな海のど真ん中に作られたのはデュエル世界に関する"ある研究"を行うのに必須な現象を安定して発生させれれる場所だからだ。
ただこの研究は世間一般にはまだ一切公表していない機密情報であり、表向きは『DaR』における強者を生み出す為の言わば蠱毒のような側面をもった学園としている。
機密区画は外からは分からないように隠蔽してあるのは勿論、監視カメラも内部のみの有線のみ受け付ける完全オフライン仕様にしている上に電波も届かない。
情報の漏洩を徹底的に対策したシステムに加えてそこで働く職員すらも口が堅く、あえて自分の研究にしか興味を示さないタイプの仕事人間を中心に選んでいた。
だからこそ本来であれば余程のことでも無い限り情報が漏洩する事も無ければ機密区画と研究については欠片も外に知られる事は有り得ないはずだった。
だが現実問題侵入者対策としていたはずの徹底した監視と警備を敷いていたはずが、100人以上とちう膨大な数のテロリスト達によって学園は侵入されてしまい、寮の方まで襲撃を受けていた。
幸い寮は浅麦君達がどうにかしてくれたようだこっちは侵入者を完全に拘束しきることには失敗し、何人かを逃がしてしまっていた。
しかも侵入者達が向かった先には機密区画が存在する。
どう考えてもこれは偶然とは思えない。
「確実に内通者がいるな……機密区画の職員の誰だ……?」
怪しい人物は複数名居るがあの区画で働いている職員は基本的にはよくも悪くも研究バカとでもいうべき人物が揃っている。
ぶっちゃけどの人物にも内通者の可能性は存在していた。
それに加えて浅麦君の手柄によって発見された洗脳タイプの違法アクティベーションカードの存在もある。
僕達は一度機密区画のある場所へと向かって行くが、どうやら手遅れだったようでそこには隠蔽していた隠し扉が無理矢理こじ開けられた形跡が残っていた。
「これは……」
「流石にちょっと不味いね……ここの警備は隠蔽している都合上最低限しか居ない。
アクティベーションカードを用いたトラップは設置してあるが……」
「私は一足先に奥に向かう。
君達は監視室に向かって他の侵入者が居ないか確認してくれ。」
「わかりました……戦葉会長、ご武運を。」
会長は普段見せているドジ具合と仕事への不真面目さはどこへ行ったのか、とても頼りがいのある背中を僕達に向けて先へ進んでいった。
本当にあの戦葉会長本人なのかと疑いたくなるくらいだ。
「…………………………ふぎゃっ!?…………………………」
どうやら気の所為だったようだ、普通にいつもの会長で間違いなかった。
「会長……大丈夫ッスかね?」
「大丈夫だろう、彼女はこの学園最強……いくら『デュエニュクス』といえどそう簡単には倒せないさ。
それに監視室に行けばアクティベーションカードを手動で遠隔操作出来る。
もしもの時はそれを使えばいいからね。」
そう、内部に仕掛けられているアクティベーションカードによるトラップはもしもの時の為に特定のコードを端末に入力する事で手動で起動できるようにしていた。
仕掛けた中には手動でしか発動しないタイプのアクティベーションカードも存在する為にどちらかと言うと最終手段としての意味合いが強い。
研究施設の自爆なんかも行えはするがこっちに関しては全員の避難が終わっているかつ侵入者が来ているというかなり限られた状況での使用を前提にした時間稼ぎの為、これは本当の本当に最後の手段と言える。
しばらく監視室に向かって走っていると通路の突き当たり付近に監視室の電子看板を発見する。
「ありました!監視室です!」
「襲撃の跡は無さそうッスね。」
「この辺りの対侵入者用アクティベーショントラップが起動した痕跡も無いようだしおそらく敵の狙いは最下層の『アレ』だろうね」
本当に何処から漏れたのやら……一応この学園の最重要機密なんだがな……案外浅麦くんなんかは案外自力で推察していそうで少し怖いけどね
「端末に接続します……!」
『権限をご提示ください。』
「権限コード:3373、監視カメラ及びアクティベーションカードの主題発動権限を要求します。」
『認証中……認証中……認証完了。
現在地下研究施設のシステムの67%がダウンしております。
現在使用可能なアクティベーションカードは以下のとおりです。』
「なっ!?」
「そ、そんな!?」
「いったいどういう事っすか!?」
監視室の監視システムが殆どダウンしているだと!?
しかも道中仕掛けてあったアクティベーションカードの半数が既に鬼童済みな上に避けられていた。
監視カメラもかなりの台数が破壊されているのも痛い。
侵入者は……ッ!?
「ふ、副会長。」
「これ……確実に見られてるッスよね。」
「あぁ……」
侵入者はローブを纏ってフードで顔を隠していた為にその容姿はあまり見ることは出来なかったがあまりにもおかしい点がいくつもあった。
移動方法が歩くでも走るでも乗り物やアクティベーションカードでもなく"浮遊"している事。
こちら側が気付いた瞬間にまるで見られていると確信しているように監視カメラを見ている。
そしてその全身には報告にあった《侵食》されたユニットや職業のようなノイズが全身に走り、赤黒い模様が全身を侵食していた。
そしてその瞬間、監視カメラを破壊され、画面は砂嵐に包まれた。
「…………どう考えても人間じゃないな。」
「ええ、恐らくは……いずれかのデュエル世界の住人かと」
「それにあのノイズ……恐らくはアレこそが《侵食》の元凶なのでしょう。」
―――――ビー!ビー!ビー!―――――
「なんの警報だ!?」
「な……なんですかこれは……!?
まるでハッキングでも受けているかのようにコンピューターのシステムが《侵食》されています!!」
「なっ!?切断は!?」
「無理です!侵食されるスピードが速すぎます!」
「外してもいい!アクティベーションカードを利用される前に全て発動させるんだ!
それと自爆用アクティベーションカードを侵食される前に取り外すんだ!」
「自分が向かいますッス!夢見はアクティベーションカードの発動を頼んだ!」
「ヤってみます!」
僕はすぐに通信妨害対策に用意したアクティベーションカードを利用した特殊回線を起動して戦葉会長に連絡を入れる。
『あべしっ!?い、いきなりなんだ!?』
「戦葉会長!緊急事態です!
説明している島がありません!今からアクティベーションカードを全部起動させますので逃げて下さい!」
『へっ!?そんないきなり言われても!?』
「いいから早く!!」
『わ、分かった!』
向かっている場所からして狙いは一つ……利用されるくらいなら……かなり出費は痛いがやるしか無い……!
「夢見、職員の避難状況は?」
「現在この機密区画には誰も残っていません。」
「よし、戦葉会長が脱出して田畑が戻ってきたらアクティベーションカード《自爆装置》を起動する。」
「なっ!?しかしアレは……!?」
「時間がない、あれがデュエル世界の住人ならここに開いている『デュエルゲート』を利用される恐れがある。
下手したら向こう側からあいつに関連する連中が大量に入ってくるぞ!」
「ッ!?わ、わかりました……!」
ここからは向こうが接触するのが先かこちらが離脱するのが先かの勝負だな……