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第88話 合流

――――――浅麦Side―――――




俺達は監視カメラの映像を頼りに寮の周辺をそれぞれ監視していた。


だが俺達が安全を確保してから半日程が経過したその時……



―――――ドゴォォォォォォォォォオオン!!!!―――――



学園の方面から思わず両耳を塞ぐレベルの凄まじい爆発音が響いてきた。


爆発の衝撃こそ寮までは届かなかったがあの爆発の規模は明らかに普通じゃない!


それが学園の方で発生したと言うことはデュエニュクスやバーバリアスの連中と対峙していた先輩達が下手したら巻き込まれている可能性があるという事だ。


俺はすぐさま先輩達にタブレット端末の通話を試みる……


「繋がらない、やっぱりあの爆発が原因か……実際に見に行かないと駄目か……」

「あ、あああ浅麦君!?大丈夫でしたか!?」

「おい、すげぇ音がしたぞ今!?」


流石に倉木と久慈川さんの2人も何事かと言わんばかりに飛び出してきた。


「寮までは衝撃は届いてないから問題ない、それよりも今は先輩達だ。

下手したら巻き込まれてる可能性がある。

俺は学園の方の様子を見てくるから二人は寮の方を頼めるか?」

「わ、私も行きます!」

「いや、二人はこっちで寮周辺の警戒と混乱している避難した連中を落ち着かせてくれ。

もしあの爆発があいつらの物だった場合、この混乱に乗じて追撃を仕掛けてくる可能性も十分にあり得る。」


とはいえ半日もの間襲撃は一度もなく、監視カメラにも何者かの動きを捉えていない事から恐らくは俺の考えすぎなのだろうとは思うが念には念をだ。


「た、確かに……」

「浅麦はよく冷静で居られるな。」

「どんな状況でも思考を止めないようにデュエル対策で訓練してたからな……。

それに完全に冷静かと言われれば俺だってかなり焦ってるさ。」


焦りを相手に悟られればこっちのペースは崩される一方だからな……対策くらいは流石にしている。


それにしても先程からタブレット端末を確認して入るがやはりどうしても通信状況が回復する様子はない。


確実に誰か様子を見に行く必要がある。

学校側にある有線接続の監視カメラは先程の爆発の影響なのか完全に全滅状態だからな。


俺は念の為寮を護衛している間に『強欲』へとクラスアップした俺の職業に合わせて進化したカード達で組んだデッキをいくつか持って行く。


流石に全てのカードが効果のベースはそのままとはいえ変化していたからな……ユニークレアに至ってはその全ての強さとクセの強さも上がっている為デッキをそのままにしておく理由は無かった。



――――――――――――――――――――



「とりあえず寮の方を頼んだ!」


俺は準備をすぐに整えて学園の方へと走っていく。


だが進んでいくうちに明らかにおかしい事に気が付く。


「煙が上がっているのが学園で間違いない……んだよな?」


学園が存在した場所にあったはずの校舎が遠目からだと見当たらない、煙の範囲から見える部分が全て隠れている可能性もあるがあの規模の爆発となると下手したら……


「いや、この手の嫌な想像をするのは後だ、今は急がないと。」


俺はちょうどよく道端に放置されていた自転車を発見した為、悪いが少しの間拝借する事にした。


今は緊急時で一刻を争う以上罪悪感がどうのと言ってる場合じゃないからな。






しばらく自転車を走らせて校舎付近へと到着する。


だがその瞬間に確信した、校舎の建物のその殆どが崩れている事に……


「会長!桜木先輩!夢見先輩!田畑先輩!」


先輩達の名前を叫びながら俺は周囲の探索を始める。


すると近くの瓦礫から物音が聞こえてくる。


音の聞こえた瓦礫の方へと視線を向けるとそこから大量の人を縛り上げて瓦礫だらけの地面で引き摺っているという若干拷問地味た運び方をしていた桜木先輩だった。


「浅麦君か……こっちに来たということは寮の方は大丈夫なんだね?」

「良かった、無事だったんですね。

寮の方は今の所大丈夫ですが先程の爆発による混乱に乗じた襲撃を警戒して倉木と久慈川さんの2人を残しています。」

「成る程、その可能性も無くはない……と言いたいが恐らくは大丈夫だろう。」


桜木先輩が若干目を泳がせながらそう言う。


この反応からして絶対さっきの爆発関わってないかこの人……?


「あー、そのね?

さっきの爆発なんだけど……紛らわしくてすまない、僕らがやったんだ。」

「…………は?」


え?今なんて言ったこの人……この学園を爆破した?


「なんで……そんな事を?」

「簡単に言ってしまえば最終手段って奴だよ……これ以上の侵入……というかこの学園が隠れ蓑として守っている物を奪われないためのね。」

「はぁぁぁぁ……そういうことですか。」


この学園が守っている物を奪われない為の最終手段……か。


この世界における時間稼ぎの手段は幾つかある。

強制デュエルによる時間稼ぎ、アクティベーションカードによる拘束やトラップ、単純に道を塞ぐ。


それらをこんなギガフロートが用意していないとも思えない。


そうなると考えられるのはその尽くを全て突破された、もしくは意味を成さないような奴が出たと言うことだ。


そして爆破してまでも守ろうとした者……奪われる、又は干渉されたら洒落にならないともなれば『DaR』関連のものしか無いだろう。


それらの中で最も危険度が高い物となればもうそれは一つしか無い。


「本当に『デュエルゲート』がここにあるなんてな……」

「やっぱり気付いてたか、上手く隠していたと思うんだけどなぁ。」

「隠すにしたって限界はあると思いますよ?

明らかに立地がおかしい上に大量の研究者が住んでるギガフロートとくればなおさらね。

それよりも『デュエニュクス』と『バーバリアス』の連中は?

もう襲撃は大丈夫なんですか?」

「あぁ、そっちは『デュエニュクス』側と思われる一人を除き全員拘束した。

恐らくはこれで全員だと思われるがしばらくは警戒態勢を強化するだろうね。」


『デュエニュクス』側の一人……?


「その一人には逃げられたんですか?」

「いや、さっき爆破に巻き込んだ……と言いたいけど逃げられてるだろうね。

なにせ相手は人間じゃない。

『デュエルゲート』はさっき物理的に埋めたから瓦礫を崩して専用の機械を再設置しない限り開く事は無いだろう。

元々我々が人工的に開いていた物だからね。」


妙だと思ったらそういう事か……確かに人工的に開いているのであれば自然発生するタイプの『デュエルゲート』と違い、勝手に消滅するといった事は無いだろう。


それにしても人間じゃないとなると相手はやはり……。


「『デュエル世界』の住人ですか……」

「間違いなくね、確実にカード化せずに別の『デュエルゲート』から迷い込んだんだろうね。

それがなんで『デュエニュクス』の残党なんてのを率いているのかは知らないけど」


先輩曰く学園に侵入して暴れていた連中の目的は先輩達を足止めして体を張って時間稼ぎをし、その隙にリーダー格の奴が機密区画へと向かい、『デュエルゲート』を狙うという筋書きだったらしい。


俺としてはその侵入者が最奥の『デュエルゲート』へと到着する前にそれだけの数の傀儡を殲滅したという事実に驚きだ。


「……っ!そのデッキの気配……どうやら君も到達したようだね。」

「なんでデッキの気配なんてもん分かるんですか……確かに盗賊からはランクアップしましたが……」


俺としては一番予想外だったのが俺が持っていた盗賊以外の職業のカードのその全てが『強欲』のカードへと変換されていたことだ。


まさか他の職業までも自分の職業専用カードとして再誕させるなんて現象があるなんてな……今まで集めた情報にもそんなのは無かったぞ?


あり得るとすれば全員がその情報を隠していたか……もしくは俺が『強欲』へと至ったからか……?


「それより他の先輩達は?」

「会長達なら今頃倒した連中を引きずりながらこっちに向かってるだろうね。

脱出自体は完了していたから問題はないと思う」

「この瓦礫の中で?」

「この瓦礫中でだね」





うわぁ……痛そうだなおい。




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