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第92話 田畑先輩への挑戦

数日後、久慈川さんや倉木の協力(と言う名のデュエル)のお陰もあり、なんとかデッキのバランスを整え終わった俺は久慈川さんと説得を終えた倉木を連れて臨時生徒会室へと訪れていた。


「やぁ、浅麦君。

身体とデッキのコンディションはどうだい?」

「身体はともかくデッキのコンディションとかパワーワード過ぎやしませんか……?

とりあえず身体の方もデッキの調子も万全ですよ。

欲を言えばもっと試したいデッキもありましたが……。」

「ピッ!?」

「ちょっ!?」


何故か背後にいる久慈川さんと倉木から怖がられた。


解せぬと言いたい所だが強化された処理能力でかなり好き勝手に暴れた自覚はある為俺としては何とも言えない。


『強欲』は基本的に相手から能力を奪う事も多くなっているので盤面の制圧能力が『盗賊』だった頃と比べて飛躍的なまでに上昇しているのだ。


そして全体強制排除+強力な《全体攻撃》持ちである《強欲獣・マモン》が久慈川さんとは絶望的なまでに相性が悪く、倉木は倉木で死亡カウントをガンガン溜めすぎてしまい、最終的に《文明の特異点・ポストディザスター》に対して極端に弱かった……まぁ寄生は味方含めた全体『除外』相手じゃキツイわな。


「そうか、それは何より……そこの会長はワクワクしないでもらえます?」

「そそそそんな事は……ナイゾ?」

「はぁ……うちの戦闘狂が済まないね」

「いえ……多分こうなるとは思ってたので……」

「そうか……とはいえ職業が進化した浅麦君の実力が気になるのも確かだ。

そこでなんだが……うちの田畑とデュエルをしてみないか?」

「何故だ!?」

「自分ッスか!?」


桜木先輩の言葉に田畑先輩と戦葉会長の2人がガタッと音を立てて立ち上がる。


それにしても意外だな、また会長とのデュエルになると思っていたんだが……


「会長……貴女まだどれだけ書類が溜まってると思ってるんですか?」

「うぐっ……し、しかし……」

「しかしもお菓子もありません、さっさと仕事を終わらせてください。」

「はい……」

「まぁ現状デュエル出来るほど手が空いているのが田畑だけでね。」

「いやあの……副会長、自分も仕事まだ残ってるんスけど……」

「その程度であればデュエルが終わった後にやったとしても十分間に合うだろう?」

「……わかったッス」


田畑先輩……可哀想に。


「あー、なら少しだけデッキの調整をしても大丈夫ですか?」

「あぁ、準備が出来たらまた臨時生徒会室に来てくれ。」

「助かるッス浅麦君……」


流石に今すぐやるよりはある程度時間作ってあげた方が良さそうだったので俺は気を使って一旦自分の部屋へと戻ることにした。


とはいえ長過ぎてもあまり良くはないだろうし稼げる時間は精々30分程度だろう。


「それじゃ失礼しました。」


――――――――――――――――――――



「さてどうするか……」


俺は寮の自室に戻ってからまだ確認し終わっていないカードを含めた大量のカードをPC端末の画面に出してデッキを組み替えていく。


全てのカードが強欲へと変化した影響か他の職業の要素も加わったカードも大量に増えた為にカードの把握が困難を極めていた。


今回戦う田畑先輩の職業は『商人』から派生した『農家』……その特徴は大量のトークンカードによるユニットの強化……そして一部のユニットの能力栽培による大量の強化用トークンカード獲得。


ユニットをあまり放置し過ぎると地獄を見るタイプのデッキだ。


例え攻撃力が低くても大量の手札を使って一気に強化をしてくる為に全く油断出来ない。


正直デッキ破壊で手札を溢れさせるのが比較的突き刺さりそうではあるが油断すると一撃でHPを一気に持ってかれるためユニットを残すリスクがあまりにも高過ぎる。


そうなると……


俺は大量にあるカードの中からある一枚のユニークレアカードを取り出した。


元々は魔法使いのユニークレアだったんだが『強欲』へと変化して使えるようになったカードだ。

自分ごと巻き込むタイプのカードとなったせいで元のカードとは別物レベルで癖が強くなっているが……これ多分田畑先輩に対してメタレベルで突き刺さるんだよなぁ……


正直使うべきか若干迷ったが俺はこのカードを採用することにした。


『あ、そこそこ……』


俺はまたいつの間にか実体化していたマモンを撫で回しながらデッキの調整をし続ける。


ガンガン跳ね上がっていく能力に対抗するにはやっぱりユニットをどんどん処理するしかない為能力を奪うだけじゃなくHPを0にするまで奪えるタイプのカードを複数枚採用したほうが良いだろう。


基本的に最大HPが0になってしまえばそのユニットは存在を保てずに強制的に死亡扱いとなる。


相手のカードを奪っても良いんだが『強欲』になってからは能力を奪う方がどうしても効率が良いからな。


『きゅぅぅぅん♡……あ、誰か来るよ?』

「ん?」


―――――コンコンッ―――――


「浅麦君居ますか?」


どうやら久慈川さんが訪ねてきたらしい。

恐らく倉木も居そうだな。


「入っていいぞ〜」

「失礼しますね」

「邪魔するぞ」

「邪魔するなら帰って」

「なんでだよ!?」


前世だと偶に聞いていたネタだったが流石にツッコミを貰ったか。


「ん?ソイツは……」

「か、カワイイですぅぅぅぅぇううう!!!」

『きゅぅぅうういう!?!?!?』


って久慈川さんがマモンに突っ込んでいった!?

つか倉木の反応からしても二人とも"見えている"のか……


「驚いたな……本当にカード精霊なんて存在がいるなんて。

いやまぁでも浅麦だしな……」

「何故俺だからで納得するんだよ……」

「いやだって浅麦どんだけユニークレア抱えてると思ってんだよ……カード精霊の一つや二つあってもおかしくはないと思いだろ」

「……否定できないな」


そしてそんなことよりもさっきから毛を逆立てたマモンを撫で回して若干手から血が出ている久慈川さんの方へと向く。


「久慈川……あんなキャラだったっけ?」

「久慈川さんカワイイ動物好きだったんだな」

「止めなくていいのか?めっちゃ刺さってるぞ?」

「悪いんだけど保健室行って薬箱貰ってきてもらっていいか?」

「分かった」


俺は倉木に保健室まで行ってもらってからマモンを久慈川さんから一旦俺の頭の上に移動させて残念そうにしている彼女の傷だらけになった手を消毒して応急処置を施していく。


「あうう……残念です」

「とりあえず久慈川さんは自分をもう少し大事にしようよ……自分が傷だらけになるレベルで可愛がるのは流石にどうかと思うぞ?」

「ごめんなさい……」


倉木が戻ってきてから久慈川さんの手に包帯を巻いていき、治療系のアクティベーションカードで傷の治癒を早めていく。


このカード文化は割と医者泣かせのアクティベーションカードが存在しているから病気とか怪我に対しては極端に強いんだよなぁ……


「それでデッキはどんな感じなんだ?

見たところ全部お前の職業のカードっぽいが……」

「と言うか俺の職業のカードしかないよ。

他の職業のカードは共通カード含めて全部俺の職業の専用カード化したから」

「マジか!?」


倉木の反応を見る限り普通は有り得ないことなのは間違いなさそうだな。


「一部が変化するならまだしも他の職業のカード含めて全部が変わるなんて聞いたこともないです」

「久慈川さんもそうか……」


そうなるとやはり『強欲』自体が相当特殊なのか……


その後俺は毛を思いっきり逆立てているマモンを手を怪我しないように注意しながら撫でえデッキを組んでいった。


「よし、こんなもんか……」

「今回はだいぶ盤面処理に寄せてるな」

「流石に田畑先輩相手にユニットを残させるのは危険だからな」

「私だと強化されすぎて一撃でHP全部持っていかれます……」


久慈川さん攻撃力下げる手段あっても限界あるからな……





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