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11. 小さなお医者さん

11. 小さなお医者さん




 私はミリーナに連れられて、薬作りを見せてもらっている。私の知らない作り方だったけどミリーナはとても器用にこなしていた。本当にこの子はすごいと思う。


「あたしさ。治癒魔法は使えるけど、もちろん魔力量はあるし、私の魔力量じゃみんなの事治せないから、ここで薬やポーション作りの勉強してるんだ!アイリーンちゃんも良かったら勉強してみたら?魔法使えるんだし」


「ははっ。私の精霊魔法とミリーナの治癒魔法は原理が違うわよ。それにしてもミリーナは若いのに偉いわね。」


「そんなことないって。ありがとーおばちゃん。はい、これ今日の分ね」


「毎度あり。またおいで」


 ミリーナはその作った薬を何個かその老婆に渡して店を出る。


「あー楽しかったね!」


「代金払わなくて良かったの?」


「え?あーあのお店はね、農村ピースフルみたいにみんなが助け合いながら運営しているお店なんだよ。あのお店に素材を持って来る人、薬を作る人、そしてその薬を買う人。」


 つまりお金ではなく、何かしらの作物や収穫物を納品したり、代わりに何かを受け取ったりしているという事か。


「だから私はあのお店が好きなんだぁ!アイリーンちゃんも気にいってくれるといいなぁ。」


「まだ1人は怖いかも。あのお店は。ははっ」


 そして作った薬を持って家に帰るためにまた山を登っていく。日はまだ高い位置にあるため、このまま帰ることにしたのだ。道中ではミリーナといろいろな話をした。彼女の話は興味深く、楽しい時間を過ごした。


 村に着くと、早速ミリーナは村中をまわり、作った薬を配っていく。


「おじさん。これこの前言ってた膝の痛みに効果ある薬!」


「ミリーナちゃん。いつもありがとな。これ今日、山で狩ってきたんだ食べてくれ。」


「わぁ美味しそうなお肉!レイダー君に焼いてもらおう。ありがとー。」


 一人一人問診をしながら、的確にその人にあった薬を渡す。薬で対処出来なそうなものは治癒魔法で。そして次にあのお店に行った時に作れるようにメモもしている。


 ミリーナは普段『お喋り』をしていると私に言っていたけど、違った。これが彼女がやっていたことだったんだ。彼女は小さなお医者さんだったのね。


 私も手伝いながら薬を渡していく。村の人たちは凄い笑顔だった。きっと彼女の存在がこの農村『ピースフル』の人にとって心の支えになっているんだろう。


「これで全部配ったかしら?」


「うん……あっこれが最後だ!」


 ミリーナは私にポーションらしきものを差し出す。それは綺麗な赤色をしており、見ているだけで気持ちが落ち着く気がする。


「これはアイリーンちゃんに。今日朝からずっと一緒にいたけど少し疲れてるね。ここに来てから魔法をいっぱい使ってるから、魔力が完全に回復してないみたい。マジックポーションだから飲んで!」


 あら……私も問診されてたのか……私はそれを受け取って一気に飲み干す。すると体がポカポカしてくる感じがする。なんだか心地よい気分になってくる。


「美味しい。ありがとうミリーナ」


「本当!?良かったぁ!」


 そのミリーナの笑顔に私も嬉しくなる。そうだ。私は今楽しいと感じている。それがとても嬉しい。


 王宮から追放され宮廷魔法士をクビになった私はあの時エイミーに拾われこの農村ピースフルにきた。最初は正直不安しかなかったけれど、今はすごく楽しくて幸せだ。


 これからもこの村で生きていき、もっとたくさんの人のために私の魔法を使いたい。そう思えるくらいに私はこの場所が好きになっていたのだった。

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