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25. ゲームをしない?

25. ゲームをしない?




 あれからどれくらい歩いただろうか。じめじめとした空気、苔むした岩肌、そして時折聞こえる魔物の咆哮。そんな薄暗い通路を、私たちは黙々と進んでいた。


 途中で何度か魔物に遭遇したが、その度に張り切っているアルフレッドが、まるで獲物を狩る獣のように、鋭い動きで瞬殺してくれていた。


「余裕だな!もっと強い奴はいないのかよ?」


 アルフレッドは、返り血を払いながら、退屈そうに呟いた。その目は、獲物を求める獣のようにギラギラと輝いている。


「いや十分よ……というよりあんまり先走らないでちょうだい。」


「分かってるっての!でも、なんか調子が良いっていうか……力が溢れてくる感じがするんだよな!」


 アルフレッドは、自分の腕を摩りながら、興奮したようにそう言った。私にはそんなバフをかけるような魔法やスキルはないけど?そう言えば前世の時もこんな性格だったわね。相変わらず単純なやつだ。


「と言うより。アルフレッド。あなたちゃんと索敵してるの?さっきから魔物と遭遇してばかりじゃない?」


「ああ?ちゃんとしてるに決まってんだろうが!さっきから先手が取れてるだろ!」


「あのね。索敵は魔物との戦闘を避けることが一番の目的なのよ?それをいちいち遭遇して倒してちゃ意味ないでしょうが!」


「うるせえなあ!オレ様は最強のアサシンになる男なんだよ!そんなこと気にしてたら強くなれねえだろうが!そんなこと言ってないでさっさと歩けよ!」


 アルフレッドはそう吐き捨てると、再び前を向いて歩き出した。その背中は、まるで反抗期の子供のようだった。


「はぁ……もういいわ。好きにして。でもこれだけは約束しなさい!絶対に無理はしないこと。危なくなったらすぐに逃げるの。いいわね?」


「あーあーわかったわかった!うるせえんだよ!だから女は嫌いなんだ」


 ダメねこれは。完全に頭に血が上ってるわ。こういう時は何を言っても無駄だし放っとくしかないか。それにしても可愛くないわね。前世のほうがもっと素直だったのに。


 ……待てよ?そう言えば前世で仲間になる前もこんな感じだったわよね?確かあの時はどっちが魔物を多く倒せるか競って言うことを聞かせたはず。そうだ思い出してきた。確か私が勝ったんだったわね。そしてアルフレッドは兄貴兄貴って慕ってくれるようになったのよね。懐かしいわ。


「……ふっ」


「おい今笑ったろ?オレ様のことバカにしたな!」


「いえ別に」


 ふふ。名案が思い付いたわ。ということは、ここでアルフレッドをボコして私の言うことを聞かせて、ギルド冒険者にならないようにすればいい。そうね……魔法能力もあるから学者とかにさせちゃえばいいわ。


「ねぇ。それよりアルフレッド。ゲームしない?」


「は?いきなりなんの話だよ」


「まあルールは簡単。ここを抜け出すまでにどちらが多く魔物を倒せるか勝負よ。負けた方は何でも一つ相手のいうことを聞くこと。どうかしら?」


「はんっ!やってやろうじゃねえか!吠え面かかせてやるぜ」

 アルフレッドは、挑発に乗ってきた。その目は、獲物を狙う獣のようにギラギラと輝いている。


「じゃあ決まりね」


「おっ!早速お出ましみたいだな。ほら行くぞ!」


 アルフレッドはそう言って駆け出し、あっという間に魔物の群れに突っ込んでいく。そしてアルフレッドの姿が消えると同時に、魔物たちは次々と切り裂かれていく。なかなかやるじゃない。


 そしてものの数分もしないうちに、全ての魔物たちが地面に倒れ伏していた。私はその様子を呆然と眺めていると、アルフレッドが得意げな顔をしながら戻ってくる。


「おいおいもう10匹は倒したぜ?これ勝負の意味あるのか?」


「はいはい。まだ始まったばかりでしょうに」


 調子に乗ってるわねこいつ。まぁ……このまま調子に乗られても後々面倒だし、そろそろ本気でやりますかね。

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