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49. 再び ~女神リディアside~

49. 再び ~女神リディアside~




 彩りすらない、ただただ真っ白な空間。そこは、まるで時間が止まったかのように、静寂に包まれていた。そんな場所に、一人の女神が佇んでいた。その名はリディア。彼女は、目の前にある水晶玉を見つめ、微笑みを浮かべている。その微笑みは、どこか満足げで、予想通りのことが起きたことを喜んでいるようだった。


「ふふっ。大きなターニングポイントを通りましたか。前世では、ギルド冒険者として魔物の大群から、結果的にローゼリア王国を守った。でも今回は、フレデリカの姫騎士としてカトラス王国謁見中に魔王軍の幹部グラドを倒し、カトラス王国を救った。これは、あなたの望んだ人生なのですかね?」


 女神リディアは、独り言のように呟きながら、微笑みを深めた。その瞳には、まるで物語の行く末を見守るような、深い興味が宿っていた。ここで終わるならその程度だと。そして、水晶玉に手をかざすと、そこには、目に覚悟が宿る金髪の少女の姿が映し出された。それを見て、さらに微笑んだ。


「……前世のあなたは、強かった。でも、あなたには覚悟も信念もなかった。だから、魔王にも勝てなかった」


 そう、水晶玉に映る金髪の少女は、前世、金や名声などの自己満足のために、ただ魔王討伐をしていた。その瞳には、戦いの高揚感はあっても、何かを守りたいという強い意志は感じられなかった。


「でも、今回は見つけたのですね?本当に守りたいもの。そして、己を貫く覚悟を……」


 女神リディアは、感慨深げに呟いた。その声には、まるで親が子供の成長を見守るような、温かい感情が込められていた。そして、淹れ直した紅茶を一口飲む。それは、さっきまでとは違い、苦味も渋みもなく、とても美味しいものだった。


「さすがに、ここで終わるような人じゃありませんでしたか。さぁ……再び輝きだしたあなたの黙示録。まだ、目映い光を私に見せてください。そして、この何もない真っ白な空間に彩りを与えてくれると信じてますよ、イデア?それが、あなたの使命なのですから。」


 女神リディアは、そう言って微笑みながら、愛おしそうにその水晶玉を撫でていた。その瞳には、まるで宝物を見つめるような深い愛情が宿っていた。


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