52. 双子
ローゼリア騎士団の入団試験。私は今、その会場にいる。周りを見渡すと、最初の試験から人数は半分ほどに減っていた。一体何人がこの難関を突破できるのかしらね。
「次は討伐試験だ。ここでは三人一組で行動してもらい、こちらで指定した魔物を討伐してもらおう。制限時間は1時間だ。組み合わせは先ほどの筆記試験、実技試験を元にこちらで決めさせてもらった。各自準備をして待機するように」
討伐試験。どんな魔物が出てくるのか、少しばかり興味はあるけれど、今の私にとってはただのウォーミングアップに過ぎない。とりあえず、私の組み合わせは8番か。組み合わせ相手は……あそこにいる2人ね。
「こんにちは。あなたたちが8番の組み合わせの人たちかしら?」
「あっはい!」
「ん?お姉さんがボクたちの組みなの?大丈夫?学生じゃないし、何回か試験落ちてるわけじゃないよね?」
見た目は小柄で可愛らしい少女と、少しばかり生意気そうなつり目の少年。初対面のお姉さんに向かって、ずいぶんと失礼な物言いをするものだ。
「安心して。訳があって今回初めて騎士団の試験を受けているから。私はイデア=ライオットよ。よろしく。」
「あたしはアリッサ=バートルです!こっちは双子の……」
「エレン=バートルだよ。よろしくね」
「えぇ。よろしく。良かったらステータスカードを見せてくれない?」
私がそう言うと、アリッサは少し恥ずかしそうにステータスカードを取り出し、私に見せてきた。そのカードの色は、私が今まで見たことのない『銀』色をしていた。
「あのあまり……強くないですけど。どうぞ」
【名前】アリッサ=バートル
【年齢】18
【種族】人間
【性別】女性
【属性】全属性
【クラス】スナイパー
【レベル】46
【スキル】『弓術LV.5』『魔法弓LV.3』『気配遮断』『隠密』『勇猛果敢』
「ほー。全属性持ちとは素晴らしいわね。」
「でも魔法は苦手で……代わりに今、頑張って魔法弓を練習してるんです!エレンもほら見せて?」
アリッサは控えめながらも、自分の能力を説明してくれた。その隣で、エレンは少しばかり不機嫌そうな顔をしている。
「嫌だよ。大体アリッサはなんで、初めて会ったその人にステータスカードを見せるのさ?もっと危機感を持ってよ。その人が悪い人だったらどうするの?」
「ごっごめん……」
「いや私が悪かったわ。私が先に見せるべきだったわよね」
私はそう言って、自分のステータスカードを二人に提示する。二人はそれを見るなり、目を丸くして驚愕の声を上げた。
「えっ!?レベル75……!?」
「それにこのスキル……剣術も魔法も魔法剣も全部LV.MAX……お姉さんなんなの?化け物!?」
「そんなわけないでしょ?ほら良かったらあなたのも見せて」
エレンは渋々といった様子で、自分のステータスカードを私に見せてきた。
【名前】エレン=バートル
【年齢】18
【種族】人間
【性別】女性
【属性】雷
【クラス】ランサー
【レベル】47
【スキル】『槍術LV.6』『雷属性魔法LV.5』『補助魔法LV.2』『危険察知』『心眼』
「へぇ。あなたもなかなかやるわね」
「あのさ。それ嫌みにしか聞こえないけど?お姉さんに比べたらボクたちなんか弱すぎるでしょ。どうせお荷物とか思ってるんじゃないの?」
「あっあの……ごめんなさい。あたしもエレンもお荷物にならないように頑張りますから!」
エレンは相変わらず可愛くない。というか、この子は女の子だったのね。だったらなおさら可愛くない。なんでこんなにひねくれているのかしら。でも……緊張して意志疎通がはかれないよりはマシかもしれない。別に能力だって王立学園を卒業したばかりなら強い方だと思うし、問題はない。
こうして私は、双子の姉妹であるアリッサとエレンと共に、討伐試験に臨むことになった。