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5. 駆け出し魔法槍騎士

5. 駆け出し魔法槍騎士




 しばらく歩いていくと目的の東の洞窟が見えてきた。あそこに黒い魔物がいるのね?するとその洞窟の前に1人の少女がいた。そして、彼女はこちらに気づくとこちらに駆け寄って来て話しかけてきた。


「あっ!あなたたちもギルドの冒険者ですか!?」


「ええ。そうだけど?」


「やっぱり!実は私も『黒い魔物』討伐の依頼を受けた冒険者なんです!」


 そういうことか。彼女もあの話を聞いていたのだろう。私は納得しつつ彼女の方を見つめる。年齢はおそらく16歳ぐらいだろうか?茶色の長い髪で身長は150cmくらいで小柄だが胸は大きくスタイルが良い。


 そして特徴的なのはその瞳だ。青い綺麗な目をしているのだが、なぜか片方の目だけが赤いのだ。珍しいオッドアイで、どことなく不思議な魅力を持った少女だった。


「あの……もし良ければ一緒に『黒い魔物』を討伐しませんか?私がパーティー組んだ方々は、ここに来るなり怖じ気づいて逃げ出してしちゃって……」


「その前にあなたは?」


「あっ!すいません!自己紹介がまだでしたね!私はルナ。ルナ=ノワール。駆け出しの魔法槍騎士なの!夢は魔法都市で有名になること!よろしくね!」


 ふーん。魔法都市かギル坊と一緒ね。でも……


「ごめんなさい。私たち急いでいるから」


「えっ!?ちょ、ちょっと待って!」


 私たちはそのまま歩き去ろうとすると、慌てて呼び止めてきた。


「どうして断るの!?同じ冒険者同士助け合おうとは思わないの!?」


「残念だけど、あなたの実力じゃ足手まといなのよ。大人しく街に戻りなさい」


「そんな!ひどいですよ!私の何がいけないんですか!?」


「あの……ロゼッタ様……少し可哀想ですよ」


「嫌よ。私は面倒な事が嫌いなの」


 うーん……どうしようかしら。本当に危険かもしれないし、ギル坊の他にこの子まで守るのは面倒だから断ってるんだけど。でも、このままだとしつこく付きまとわれそうね。私は少しだけ考えると、あることを思いついた。


「それなら、私と勝負して勝てたら組んでもいいわよ?」


「本当!?わかりました!ぜひやりましょう!」


「えぇ、もちろんよ。場所はここでいいわね?」


「はい!構いませんよ!」


 軽く一撃を与えれば諦めるでしょこの子も。私とルナはお互い距離を取って武器を構える。私は杖を構え、ルナは背中に背負っていた槍を構えた。


「それでは始めますよ?準備はいいですね?」


「ええ」


「行きます!!」


 そう言うとルナは地面を蹴って飛び上がりながら槍を突き出してきた。私はそれを避けると、さらに連続で突きを放ってきた。それを全て避けると、今度は私に向かって走り出していた。


「ハァッ!」


「ふんっ!」


 ガキンッ!!基礎的なところはできるみたいね?それでも……全然甘いわ。私はそのまま左手で魔方陣を描き魔法を放つ。


「終わりよ火炎魔法・ファイアブリッド」


 炎の弾丸を放ち攻撃するが、なぜか私の魔法はそれてしまう。それを見たルナはその隙に一気に距離を詰めると槍を振り下ろした。


「あっ……」


「やった……私の勝ちですね!やったやった!」


 凄く喜ぶルナ。……それよりも私はギル坊を睨み付けるように見る。それに気づいたギル坊は冷や汗を流しながら目をそらす。ギル坊のやつ……やりやがったわね!咄嗟に風魔法で私の魔法をそらしたのね。しかもあんな無茶苦茶な軌道で。おかげでローブが焦げそうだったじゃないの。


 私は怒りを込めてギル坊に近づくと、ギル坊はビクつきながらも必死になって言い訳を始めた。


「ち、違うんですよ!あれはわざとじゃなくて!ほら、あのままロゼッタ様の魔法を受けてたら危なかったですから!」


「うるさい!あんたのせいでこんな面倒なことになったのよ!」


「痛い!痛いですよ!」


 私はギル坊にアイアンクローをする。しかし、すぐに手を離すとため息をつく。


「はぁ……もういいわ。私はロゼッタ。魔女よ」


「はい。えっと……」


「ギルフォードです!ルナさん!」


「うん。ギル君にロゼッタ様。よろしくね!」


 顔を赤くしているギル坊。まったく……私はまだ怒っているんだからね?そんなに胸がいいか!このマセガキが!大きけりゃいいもんじゃないのよ!とか思いつつも、威力を抑えたとはいえ、私の魔法を弾くほどに成長しているギル坊を見て少し微笑ましくなるのだった。

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