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第23話 Ωである証

 ゆっくりと、確かめるように大きな手が僕の体を這う。


 二の腕や肩、背中を何度も撫でられる。鎖骨の辺りを吸われて、体がジンと震えた。


 ぼんやりしていた頭が、少しだけクリアになった。自分の状況は分かっている。周期の乱れていた発情期がやって来たのだ。


 それに反応して、宗一郎さんは我を忘れたみたいになっている。


 嫌じゃない。僕はずっとこうしたかった。宗一郎さんと、こうなりたかった。


 ただ、肌を見られることが凄く恥ずかしい。初めてだし、貧相に思われるのだろうかと考えたら悲しくなった。


 獣みたいに荒い息をして自分を見下ろす宗一郎さんが、少しだけ怖い。


 鎖骨の窪みに、舌をグリグリとねじ込まれる。肌が粟立って、全身がビクビクと震えた。


 太ももを掴まれて、足を大きく開かされる。中からドロリと何かが漏れた。


 透明の分泌液だ……。


 Ωである証の。


 そういえば、下半身が濡れている感触があった。粗相をしたのかと思ったけれど、分泌液だったのか。


 よく見れば太ももにまで、透明でぬるぬるした液体が付着している。


「凄い量だな」


 感じれば感じるほど、溢れてくると言われている透明の分泌液。


 自分でも、こんなに出るなんて想像していなかった。いやらしいΩだと、そう思われたんだろうか。


「あ……み、みないで。みないで、ください……」


 見られたくない。宗一郎さんに、いやらしい奴だと思われたくない。


 宗一郎さんが、パジャマ代わりにしているTシャツを脱いだ。逞しい体が、目の前であらわになる。


 僕の体とは、何もかもが違っていた。美しく筋肉が隆起している。野生動物のようだと思った。


 ぎゅっと目を瞑ると、両目からポロリと涙が零れたのが分かった。


 気持ち悪いのに、気持ち良い。わけが分からなくて、混乱して、涙が止まらない。


 甘いにおいが、ふわりと鼻をかすめた。頭がとろりと溶けていく。


 これ、気持ちいい。怖いのに、気持ち悪いのに、好き。


 気持ちいい。頭がふわふわして、目の前が真っ白になった。僕は、いつの間にか気を失っていた。


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