目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第40話 甘い吐息

 ムラムラを必死に抑えながら、柊が髪を乾かすのを待つ。


 柊はドライヤーを片付けてから洗面台をきれいにして、それから風呂掃除を念入りに始めた。ベランダの鉢植えに水をやり、戸締りを確認する。


「何か他にやることあるのか? 俺も手伝うけど」


 さすがにもう、ムラムラが限界だ。


「え、えっと、今から家計簿をつけて、献立を考えて、それから……それから……」


「そんなの明日でもいいだろ」


「で、でも……」


 柊はモジモジしながら俯いている。


 もしかして、嫌なのか……?


「嫌なら、別に……」


「そ、そういうわけじゃなくって……そ、その、恥ずかしくて」


 よく見ると顔が赤い。


 まぁ、ヒート以外でするのは初めてだしな。


 でも、もう俺が限界だ。


「嫌じゃないなら、いいよな?」


 柊の肩を抱いて、有無を言わせず寝室に連れて行く。


 部屋の扉を閉めて、柊を抱きあげた。


 額に口づけをしてからベッドに寝かせる。柊は視線を彷徨わせていた。伸し掛かると、恥ずかしそうに俺を見る。


 石鹸の香りに混じって、ふわりと甘いにおいがした。ヒートの時とは違う香りだ。これが柊自身のにおいなのだろう。


 もっと柊のにおいを嗅ぎたい。執拗に首筋をクンクンしていると、柊の手が俺の後頭部をさらりと撫でた。


「もう恥ずかしくないか?」


「……まだ恥ずかしいです」


 瞬きする目にわずかに涙が浮かんでいる。頬にキスしながら髪を梳くと、柊がぎゅっと抱き着いてきた。


 小さな顎を片手で掴み、人差し指でくちびるを撫でる。柔らかなそこをふにふにしていると、柊が薄く口を開いた。


「宗一郎さん……」


 濡れた目で見られて、胸の奥がきゅうっとなった。


 柊のくちびるに自分のくちびるを合わせる。重なる寸前、柊が目を閉じるのが分かった。


 何度か押し当てるようにした後、柊のくちびるを食んだ。ちゅっとついばむようにキスをすると「ん」と甘い吐息が漏れる。


 ゆっくりと舌を侵入させると、体がびくりと震えた。


 そういえば、こんな風にキスをしたことも無かった。怖がらせないように、やさしく上顎を舐める。


「ふぁ……、ん……ぁ……ぅん」


 小さな舌が遠慮がちに俺の舌に巻き付いてくる。ぬるぬるした感触が驚くほど気持ち良かった。


 舌の裏をぐりぐり舐められて、背筋に快感が走る。思わずぐっと奥まで舌を入れると、柊が苦しそうな声を漏らす。


「んぐ……ぅ……んぅ」


「……悪い、苦しかったな」


 くちびるを離すと、柊はとろんとした目をしていた。


「くるし……けど、ひもち、いい……れす」


 はぁはぁと荒い息を吐きながら、口を開けて舌を覗かせる。その誘うような仕草に興奮して、再び喉の奥にまで舌をねじ込む。


 柊は涙をぽろぽろこぼしながら、俺の舌を受け入れていた。細い腰を抱くと、下半身が熱を持っているのが分かった。


 柊が、ぎこちなく俺に身を寄せてくる。それを見ていると、たまらない気持ちになった。


 可愛いと愛しいが過ぎて、胸がぎゅんぎゅんする。


「柊は可愛いな……」


 柔らかい耳たぶを舐めながらつぶやくと、柊の体がぶるりと震えた。


 柊がとろとろの目で、ぼんやりと俺を見ている。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?