剣を
「はは……」
力ない笑いをこぼした。
レオナルドの手は
(ビビるな!ここからが本番だろ……!)
その恐怖に
そして気合を入れなおすように一度大きく息を
それからレオナルドはペタペタと壁を
ちょっとずつ横にずれながら石の壁を触っていく。
いったいレオナルドは何をしているのか―――、それは次の瞬間
「っ!?」
レオナルドは目の前で起きた現象に息を
なんとレオナルドの手が壁をすり抜けているのだ。
「あった……。ここが入口だ……」
どうやらそういうことらしい。隠し部屋にはここを通って入ることができるようだ。壁にしか見えなかったのは、何らかの方法で
レオナルドはこの壁に偽装されているところを探していた。ゲームなら壁に向かって突っ込むを繰り返すだけだが、現実でそんなことをする奴はいない。
「すぅーーー……はぁーーーーー」
(よし!行くぞ……!)
ゲームには、レオナルドと精霊の出会いのシーンはなかった。レオナルドが少し語る程度だ。だからここからの行動にゲーム知識はほとんど使えない。
レオナルドは一度深呼吸すると、意を決して壁にしか見えないそこへと入っていった。
「うっ!?」
隠し部屋に入った瞬間、水路でずっと感じていた重苦しい圧のようなものが
(……この圧は精霊に関係したものだったのか……!?もしこれがゲームでレオナルドが感じていたものと同じだとしたら、どうして他の誰も感じなかった?)
疑問が浮かべど解消されることはなく、レオナルドはとりあえず室内をぐるりと見て回った。小さな部屋だ。一周するのにそれほど時間はかからなかった。
結果、石でできた床、壁、天井。あるのは、中央に突き刺さっている黒刀だけだ。
(やっぱどう見ても
ゲーム通りだと確認できたレオナルドがいざ黒刀に近づこうと一歩を
『ニン…ゲン……?』
どこからか小さいが確かに声が聞こえた。
「っ!?」
レオナルドは肩をビクッと震わせ、目を見開き、踏み出した足を止める。
『……
間違いない。何事かを言っている。声質は女性のものと思われるが、
(何だ?何て言ってるんだ?)
『人間など今すぐにでも殺してやりたい。死ね。死ね、死ね、死ね、死ね…、シンデシマエ』
室内の圧が増し、
だからだろうか。何を言っているかわからないレオナルドだが、なぜか
(もしかして俺に話しかけてる、のか?)
そう考えたレオナルドは、
「なぁ!何を言ってるんだ!?さっきから
声を張った。レオナルドには声の主に心当たりがあった。というか、ここでいきなり聞こえる声など一つしか可能性はないだろう。
『!?』
「もしかして俺に言ってるのか?声が小さくてちゃんと聞こえないんだ!」
『…………』
レオナルドがそこまで言うと、どういう訳か声がピタリと止まった。先ほどまでレオナルドが感じていた悪寒も
(もしかして俺に言ってるんじゃなかった?それともこちらの声は聞こえていない?けど、ならどうして急に
レオナルドがそんな風に考えている間も
『……まさか私の声が届いているのですか?』
返事があった。落ち着いた声、というよりも何というか
「っ、あ、ああ!聞こえてる。今はちゃんとわかるよ!」
今回はレオナルドにもはっきり聞こえた。質問を質問で返された
『そんなことが……?』
今度はすぐに反応があった。
「?ああ。さっきから何か言ってただろ?」
『…………そうだな。だが、人間。貴様に話しかけていた訳ではない』
何か考えてでもいたのか、たっぷりと
「そうなのか?…じゃあ独り言?」
そして、レオナルドは言いながら不思議そうに小首を
『……そんなことよりも人間、貴様は何をしにここへやって来た?』
「あ~っと、その前に一つ確認したいんだけど。今喋っているあなたは精霊、なのか?」
レオナルドは
『……ほう?……貴様、まさか
「え?いや違うけど?何で急に王家が出てくるんだ?」
『違うならばよい。…
「やっぱり!俺はあなたに会いに来たんだ!……けど、今はまだ、って?」
『会いに来た、だと?貴様、なぜ私がここにいることを知っている?』
しかし、レオナルドが尋ねた、今はまだの意味については、精霊によって流されてしまう。
「それについては話せば長くなるというか、簡単には説明しにくいというか……」
レオナルドは頭に手をやり、
『ふむ。ではなぜ会いに来た?こうして話したかったという訳でもあるまい?』
ごくりとレオナルドの
「…ああ。もちろん、理由はある。俺は精霊の力が欲しい!」
『ほう?私の力も知っているのか。確かに私の力は絶大だ。手に入れれば貴様の望みは何でも
「そんなんじゃない!俺は自分の死ぬ運命を
『死ぬ運命、だと?
「俺は…近い将来必ず殺される。それを回避したくて
レオナルドは
ゲームのレオナルドは精霊の存在も知らなければ、自分の死の運命も知らなかったため、今とは絶対に流れが違うだろう。けれど内容としては似たような会話がなされていたのかもしれない。力を欲していたのはゲームのレオナルドも同じなのだから。
『魔力が、ない?』
「……ああ、俺には魔力がない。だから魔法も使えない。……俺は、どうしようもなく弱いんだ!」
レオナルドのそれは悲痛な
『なるほど……。私の声が聞こえる貴様なら、私の力を手にする資格があるやもしれんぞ?』
精霊は納得した。レオナルドが力を求める理由を、ではない。未来を知っているかのように話すその内容は
納得したのは、レオナルドが現れたときのことだ。そもそもこの隠し部屋には精霊の力が
だが、魔力がないなら、そんな人間がいるとは
精霊にとってもレオナルドの存在は
「声?それはどういう……っ、もしかして本来人間には聞こえないのか!?」
話すことにばかり意識がいって
『何だ?それは知らなかったのか?だから貴様は興味深いと言っているのだ。当然、普通の人間には私の力を
「そう、だったのか……」
レオナルドが精霊を
だが、精霊は考える時間をくれない。
『それでは、人間。今から貴様にやってもらうことがある』
「何だ?」
『部屋の中央に黒い剣が刺さっているだろう?それは
「……わかった」
やはり黒刀がカギだったのだ。
レオナルドは