黒刀の前に立ち止まると、
(俺は俺の意志で絶対に未来を切り
レオナルドは意を決して、右手で黒刀の
『そうそう。言い忘れていたが、貴様が刀を抜いて見事私の力を得ることができたなら、私の望みを一つ
「っ!?」
レオナルドの肩がピクリと反応し、この状況で条件を出してくるとは、とその表情が
だから伝えておくなら今しかない、とレオナルドは思った。それにどこまで意味があるかはわからないが……。
「……理由は知らないが、あんたが人間を殺したいほど
『え?』
レオナルドは
「え?」
すると、黒刀は何の
だが、次の瞬間、レオナルドの目の前で強烈な白い光が発生した。部屋全体を真っ白に染めるほどの光だ。
「うわっ!?」
強烈な光は長続きせず、すぐに弱まっていき、腕をどけたレオナルドの視線の先には――――、レオナルドの
「…………」
『…………』
レオナルドはぽかんとした顔で、眼前でフワフワ浮いている白い光の玉を見つめている。光の玉もレオナルドを見つめている、ように思えなくもない。
レオナルド達の間にしばし
「あの…、精霊、さん?」
先に口を開いたのはレオナルドだった。だが、
『……なんだ?人間の子供』
光の玉から声がした。やはりこれが精霊のようだ。口もないのに声、とは
「なんか今にも消えそうな感じに見えるんですが……?」
『……まだ消えたりしない』
「まだ?」
『…………』
「ねえ?まだってことは
見た目の弱弱しさは、そのまま精霊の状態を表しているというのか。
『……別に……。人間の表現で言うと、後五、六年は消えたりしないと言っているんです。段々と小さくはなっていきますけどね』
まるで開き直ったかのように、精霊は
(それ、ゲームのときは消える
レオナルドは精霊の言葉に
「だ、大丈夫なのか!?」
『問題ありません』
レオナルドの言葉に対し、精霊は
「……なんかさ、急に口調、変わってない?」
『……こっちが
「そうなんだ……。でも、なんでわざわざそんなことを?」
『
確かに威厳があるとレオナルドも感じていたが―――、
「いや、でもその見た目じゃ……」
実物を見てしまってはその威厳も
『あなたが封印を解いたら、私は見られる前にすぐにあなたの中に入ろうと思っていたんです。それをあなたが刀を抜く直前に変なことを言うから機を
「変なこと?」
『言ったではありませんか。私があなたに人間を殺させるって』
「だって精霊さんは人間を
『ええ。そうですよ。殺せるものなら殺してやりたいですよ。絶滅させてやりたいですよ。でも、今の私にその力はないんですよ。だからあなたの中に入って力を
「ええぇ……」
なぜか自分が責められている気がしてレオナルドは何とも言えない表情になる。何だか精霊に
「じゃあ精霊さんが言ってた望みって何だったんだ?」
『あなたは私のことを知っている理由を
「言い方もタイミングも
レオナルドは思わず声を大きくしてツッコミを入れてしまった。そんなことなら普通に
『あなたが勝手に
「うぐっ……。け、けど、俺の中に入ることが何で力を蓄えることになるんだよ?」
確かに精霊は殺せと言っていない。自分が勘違いしただけだと言えなくもないため、レオナルドは何も言えなくなり、あからさまに話を変えた。
『私の声が届いているとわかったとき、あなたが
「?霊力って何なんだ?」
初めて聞く言葉にレオナルドは首を
『私にとっての力の
「そんな力が俺に?」
レオナルドは無意識に自分の両手を開いて見つめた。自分にそんな力があるなんて知らなかった。
『あなた、自分のことなのに全然知らないんですね。死ぬ運命とかなんとか言っていたのもやっぱり
「い、いや、そんなことはない、んだけど……。実際、ここに精霊さんがいることとか知ってただろ?」
レオナルドは言いながら少しだけ自信をなくす。ゲームをやり込んだにしては不明な点が多すぎはしないだろうか、と。
『ええ。だから私もあなたが知っていることを知りたいと思ったんですがね』
「んんっ……力を回復するには、その霊力を持つ人間の中に入るしかないのか?」
レオナルドは、また同じ話に戻りそうだったので、
『そうですね。ずっと昔なら空気中に
「なるほど……」
レオナルドは言いながらも思考を
「あ、じゃあさ、この部屋に入ってきたときに、っていうか水路からずっと感じてた圧みたいなのが今は無くなってるのは?あれって精霊さんの力だったんじゃないのか?」
精霊に今力がないのなら、もしかしたらあの圧に精霊は関係なかったのだろうか、と思ったのだ。
『そんなもの、私を封印した者が私の力を利用し続けるための
「マジかよ……。あ、なら、絶大な力ってやつは?ちゃんとあるんだよな!?」
レオナルドは
『ありますよ。私が回復すれば、あなたは精霊術が使えるようになります。まあ使いこなせるようになるまで訓練は必要でしょうが』
「精霊術!それって魔法みたいなやつだろ?」
ゲームでレオナルドが使っていたやつだ。ようやく知っている言葉が出てきて、レオナルドのテンションが少しだけ上がる。
『マホウ?』
「?魔法を知らないのか?魔力を使って火を出したり、氷を出したりするやつなんだけど」
『マホウ……なるほど、
「?何が自虐的なんだ?」
『だって魔倣とは、大本の魔術を
「え?いや、意味ってことなら多分、魔術を法則化したもの、とかそんな感じじゃないか?けどこの世界に魔術ってあったっけ?」
『魔術の法則化で、魔法、ですか。それも
「あ~そっか。魔族が使うのは魔法じゃなくて魔術だったっけ」
言われてそういえばゲームでもそうだったかと思い出した。やってることはほとんど同じため、
『ですが、精霊術は規模が違います。外部への事象改変という意味では同じですが、全力なら
「……しねえよ?」
レオナルドは精霊にジト目を向けて言うと、
『そうですか』
精霊はあっさりと引き下がった。
そんな精霊をジト目で見つめていたレオナルドは大きなため息を
「はぁ……。何か色んなこと話してたら頭が混乱してきた……」
レオナルドには、情報量が多すぎてちょっと処理しきれなくなっている自覚があるのだ。