目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第9話 ペナルティ

八、ペナルティ


 チームメイトの一原宏志が自殺したので、ペナルティが課せられた。拷問を受ける時間はいつも午前九時から十二時、そして十三時から十六時と一日トータル六時間だが、今日は十六時を過ぎても拷問は終わらなかった。同じチームメイトの座間(と陳は怒号を飛ばしていたが、三方咲苗はもう怒号を飛ばす元気もなかった。


 午前中は悪に相当する囚人たちは全員順番に足の爪を剥がされていた。咲苗も、両足の親指の爪を剥がされ、赤い肉がむき出しになっている。囚人たちは専用服を用意されているが、靴は用意されていない。恐らく、靴があっても痛くて誰も履きたがらないから用意されていないのか。常時裸足なので、足の裏の皮がどんどん厚くなっている気がする。


 午後は、髪の毛を一本一本抜かれ続けた。大したことがないようで、これがきつい。当然抜かれる際に多少の痛みは伴うが、女の命とも言える髪は無惨にもなくなり、頭の右半分だけ髪がなくなった。十六時の鐘が鳴り響くと力なくヨロヨロと囚人たちは自分たちの部屋へと帰っていったが、三名のみ拷問場に残された。西日が強く照りつけて、三人の影が長く伸びているが、極悪の陳に至っては、両手両足脱臼しているので、立つこともできず、横たわっている。


 咲苗はパイプ椅子に座らされた。そして、左半分残っていた髪の毛も一本一本抜かれていく。それでも三人の中では圧倒的にマシなのであろう。うつ伏せに寝かされた座間は断末魔のような叫びをあげているし、陳に至っては、どこかに連れていかれた。どこに連れていかれるのか、人のことまで気にする余裕などない。


 髪を抜かれるのは屈辱であった。何年も家の中で監禁されていた咲苗は髪を切りに行くこともできず、髪は臀部でんぶ近くまで伸びていた。生まれつき髪質が良いからか、漆黒の髪は艶があり、シャンプーのCMに出演できそうなほど、さらさらと美しい。顔や体型にはそこまで自信のない咲苗も、この髪だけは自信があった。今は、無惨に抜かれた長い髪が地面に散らばっている。


 地獄だ。地獄はいつまで続くのか。死んだ方がマシだ、今回はくじで当たらなかったが、来週も自殺を志願しよう。そう心に決めた咲苗はフラフラと囚人棟へと帰っていった。 


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?