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十二、屈辱 

十二、屈辱 


 その時、咲苗は更衣室の床を拭いていた。午前中に喉に押し込まれたチューブから変な味のする何かをずっと流し込まれて、午後から酷い悪臭のプールに落とされた。明らかに糞尿の匂いだった。気持ちが悪くて午前中の液体をすべて吐いてしまった。それは咲苗だけはない。他の囚人たちも吐いていた。結果、糞尿に加えて吐瀉物まで加わった地獄のプールでもがいていた。


 終了後、一旦全員バケツで水をかけられたが、そんなものでは到底汚れや匂いはとれない。全員シャワーを浴びるように命じられたが、汚れた服のまま更衣室にあがったので、床が酷く汚れていた。


 シャワーは女性用が四つ。男性用はいくつあるのか知らない。先に浴びた者から更衣室の掃除を命じられた。当然だが、すべて見張りがついた状態である。その日着用していた服は不潔だから全部捨てるそうで、ゴミ袋に茶色く変色した囚人服が詰め込まれていた。


 シャワー室にはシャンプーやトリートメントなんておしゃれな物はない。固形石鹸があるのみで、髪や顔もそれで洗う。髪はどのみち殆ど残っていない、顔は乾燥しているが、なんとか糞尿の臭いから解放された。


 新しい服も麻素材のシンプルな上下で、下着は白の綿素材。全員同じ物が用意されているのだろう。バストサイズが合わないブラジャーもいちいち、サイズなど合わせてくれる訳もないので、いっそのこと下着なんてなくてもいいような気もする。


 この島では男も女も関係ない。こんな地獄の中で誰かと恋愛関係に発展することもまず期待できない。雑巾をしぼると、爪を剥がした部分が痛んだ。


 女性は咲苗を入れて八人なので、男性に比べると少ない。皆、年齢不詳だが、最年長と思われる女性は六十を超えているであろう。


「夕飯の時間が迫っているから急げ」


 黒服の女にお尻を蹴られた。屈辱だが、逃げることも何もできない。大急ぎで掃除をすませて食堂へと急いだ。


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