真夏の休暇からひと月以上が経過した。
今日は学び舎の教室をくまなく掃除した。しかし、彼女の心は一向に晴れない。
その時、他にまだ誰もいない早朝の教室に大きな眼鏡をかけたひとりの少女が現れる。
「あっ……」
目が合い、互いの口から気まずそうな声が漏れる。
「……おはよう」
「……おはようっス」
義務的な朝の挨拶を一言交わすと、
「あっ……」
しかし、そこにもひとりの少女が
不意に目が合い、気まずい雰囲気のまま沈黙が続く。
──
青みがかった美しい長髪をなびかせながら、
「おはよう……」
「……おはよう、
誰もいなくなった水場で、
湧き水を木桶に
あれから──
同じ班で寮では同室なのにも関わらず、登下校から食事、就寝に至るまで三人はそれぞれ意識的に時間をずらし、意識的に顔を合わせることの無い様に努めているのだ。
その原因は無論、
『少なくとも誰かひとりは隣りにいる親しき友によってその野心を
それは仲の良かった三人の心に疑心をもたらし、やがてそれは精神的な溝となった。
その溝はひと月以上経った今でも埋まる事は無く、三人はすれ違いの日々を送っていた。
こんな事になるくらいなら、運命など
──食い潰されるのはわたしで良い。
そう思ったところで後の祭である。
あれだけ大見得を切って野心をさらけ出したのだ。今さらそう告げたところで誰も信じるはずがないだろう。