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第三十四話「最終テロ計画」

「この話を聞いても、私はこの一連の黒幕達をぶっ殺す覚悟はできてる。だから、今後の作戦を立てましょう。あなたが一人で活動していた間に得た情報を教えてくれる?」

「……わかった」


 会議で進士のことや、今回の事件につながる鍵である「裾野事件」に関する情報を得た。

 そして、今回のテロリストはただのテロリストではなく、かつて国内最強とされたスサノオ率いる最強の武力を持った集団であることがわかった。

 だから、戦闘ができない私達の身に危険が及ばないようにするため、進士は一人で活動するしかなくなってしまった。


 ――ついこの間までただの一般人であった私が、そんな化け物と戦えるわけはない。


 でも、今や私は……そんな化け物と戦える力を手にしつつある。

 昴が言っていた「共感覚」という能力。

 進士の姉貴分のアマテラスも持っていたとされる力に似た能力を私は持っているらしい。


 ――私が強くなれば、3課の化け物達とも戦えるはず。いや、戦うんじゃなくて。


 殺すんだ。


「俺はまず、インフルエンサーの男を探した」

「探したって……ホテルにはもう滞在していなかったんでしょ?」

「男が居た場所、時間を割り出せればそれで大丈夫よ」


 真里お嬢様が代わりに答えてくれた。


「わたくしも腹を括って話すわ。美琴ちゃんの今後の為にも知っておいた方が良いわね」

「何を改まって……」

「あのね、テクノロジーは尋常じゃないスピードで発達しているの。特に、軍事や諜報に関しては。なぜ、わたくしが地下に拠点を構えたかわかる?」

「え? 衛星から情報を取られないようにするためとか?」

「確かにそれもあるけど、『周波数』から色んな情報を得ることができるということよ」


 私は天井を仰ぎ見ながら考えた。


「周波数って……声とか?」

「あなた本当に鋭いわね……」

「それはどうも」


 声は個人ごとに異なる。

 それを見分けることができれば、個人の特定はしやすいだろう。


「でもさ、声に関する情報はネットに情報出てることだよね? 諜報関係の仕事をしていた人やスパイに関するジャーナリストの人も発信してるじゃん。今のスパイ技術では、建物の外から声の振動を観測して何を話しているのか盗聴できるって」

「あら……わたくし動画サイトを見る習慣が無かったから気づかなかったわ。そうなのね、たしかに美琴ちゃんが言う通り、建物の外から室内で発生した音が壁を振動させる僅かな波を読み取り、分析する技術がある。では、その技術に情報を保存する技術や観測する範囲を広げる技術を重ね合わせればどうかしら?」


 なるほど。

 観測する範囲を広げて、得た情報を保存する……か。

 脳内にあらゆる情報が浮かんでは消え……浮かんでは消えを繰り返す。


「観測範囲を広げる……というのは分かりやすいね。周波数を検知する機械を街の中に大量に設置すればいいでしょ? いま日本の周辺の国でもそうだけど、あちこちに監視カメラが設置されてるじゃない? その監視カメラと同じ場所に周波数を検知する機械を置けば良い。それでも足りない場所は無人機を飛行させて上空から情報を取れば良いかもね」

「……保存することに関しては?」

「そうだね……それも色々な手を使えばいいんじゃない? 今って保存する技術が発達しているから何でもできそう。この水だって保存媒体になるってニュースを見たことがあるよ。こういう小さい物質で大量の情報を得れる装置を作って宇宙空間に飛ばしておけばクラウド保存できるでしょ? 地上で盗んだり破壊されるリスクを回避しながら」

「あなた……そんなことまで知っているのね」


 真里お嬢様が驚いた顔をして、口に手を当てた。


「あのね……一応私は事務機器販売の営業だったんだよ。成績は悪かったけど、商品や最新技術の情報は常に追って勉強してたの! 事務機器販売は、オフィスに関係する製品やサービスの販売もするからクラウドサービスについての知識も沢山学んでいたのよ! 大手企業がクラウドサービスのサーバーを宇宙空間に設置するなんて情報も知っていなきゃならなかったのよ……結果は出なかったけど」

「あははは! それで『Ms.007』って言われてたんだよね! 3か月の間で0台、0台、7台っていう感じで安定して売ることができなかったから!」

「ふふふ……やめなさい昴。そんなこと言っては……0台0台7台……確かに007ね。ふふふ……」

「……笑わないでよ」


 私はため息をついて、一度話をまとめた。


「で、話を戻すけど……建物の壁が声で振動する現象を分析する技術、観測範囲を広げる技術、保存する技術を組み合わせて考えるということでしょ? それだけを繋げて考えるとつまり……町や都市で生じた声に関する情報を全て記録しておけば、探したい相手の声の振動さえわかれば、現在どこに居るのかを声の周波数を使って探すことができるというわけね?」

「……その通りよ」


 私は続けた。


 「つまり、私達は『真実を語る足長おじさん』が滞在するホテルを突き止め、宿泊情報も特定した。そして街中の声を保存しているアーカイブから宿泊期間で検索して男の声の周波数情報を特定した。そうなれば、今男と同じ声が発せられている場所を特定すれば居場所がわかるってことね」

「そういうことよ」

「おーすごい!」


 昴が拍手した。

 しかし、驚いた顔はしていなかった。

 私ならその答えに辿り着くと信じてくれているかのようだ。


「まあ……そのアーカイブがどこにあって、誰が所有しているのかは聞かないでおくけど」

「そのほうがいいわ」


 真里お嬢様はほっとした顔をした。昴もうんうんと頷いている。


 でも、そりゃあそうでしょう。

 街中と敢えて言ったけど、国内全てが観測対象であるかもしれない。

 それに、そんな大規模なシステムを導入、運営をするのは一般企業ではありえない。

 触れてはいけない軍事会社が国に対して販売している可能性がある。


「それで、男がどこにいるのか分かったのよね。そこで得た情報が今後重要になってくるというわけよね」

「ああ、そうだ。これが、その時に得た情報だ」


 進士はモニターに写真を表示させた。

 その写真は、紙の資料を撮影したものだった。


 ――地下インフラ爆破テロ計画。


 その資料には、そのような文字が記載されていた。

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