「それにしても視て貰って良かったですね」
「ええ、お陰で今の仲悪い関係が小さい頃だけで済むと安心しました」
「本当に……」
侯爵様とスノウさん、お二人は安心した表情を浮かべています。
「それにしても王妃様が未来視できるなんて初めて知りました」
「ああ、それは大戦が終わった後に覚醒したんだよ、未来視の血が。人の心を読むサトリと、未来視どちらも危険視されそうだから知っている者はごくわずかさ」
確かに、未来視は危険から身を守れるということで有能でしょう。
ですがそうなると王妃様の身に危険が及ぶ可能性がぐっと高くなります。
「アイリス、元気かね?」
レイオス様が伯父様達を連れて戻って来ました。
「アイリス、赤ちゃん達は何処に?」
私は伯父様に聞かれたのでベビーベッドを指さします。
ベビーベッドではだぁだぁと声を発しながら、遊んでいるエミリオとリリィがいました。
「まぁ可愛い!」
お祖母様が嬉しそうに目を細めます。
「そうだね、可愛いねぇ」
お祖父様も微笑まれました。
私はエミリオを、レイオス様はリリィを抱っこしました。
抱っこされた二人はきゃっきゃとはしゃいでいます。
「……しかし、もう少し大きくなるまで仲良くならないのが確定していると……」
「マリオン様……」
「おお、侯爵様、お子様達は?」
「喧嘩疲れで寝ているんですよね、これが」
スノウさんの腕の中でスノウさんの服を掴んで寝ている双子の姿が。
「可愛いじゃありませんか」
「寝ている時だけですよ。起きている時は二人顔を合わせると喧嘩が勃発して最終的には大泣きするんですよ」
「それは大変ですね……」
「アイリス、貴方の所は?」
「仲が良いので特に問題はありませんね、少しの間二人を離しても其処までぐずりませんし……あんまり長い事二人を引き離すとギャン泣きしますが」
「仲良しねぇ」
「ええ」
「抱っこしてみてもいいかしら?」
「儂も抱っこしてみたいのだが……」
「いいですよ、お祖母様、お祖父様」
そう言って私はエミリオをお祖父様に、レイオス様はリリィをお祖母様に。
「随分と軽いですな」
「黒炎の一族は軽いんですよ」
「そうなのですね」
「
「ええ、普通の子同様の重さなんです」
「おお、小さい頃のエミリア、そしてアイリスにそっくりだな。この子は、きっと美人に育つぞ」
伯父様がリリィをみて言います。
「この子はきっとレイオス様に似て育つのでしょうね」
エミリオを撫でながら私は言います。
「私似、かぁ」
「ふふ、レイオス様似なら素敵な男性に育ちますわ」
「……そうか、そう言ってくれるのか君は」
「勿論ですわ」
「……ありがとう」
レイオス様と手を握り合ってから、エミリオとリリィが呼んでいる気がしたので、振り向くとお祖母様達の腕の中で私達に手を伸ばしているので私達は抱っこします。
すると満足そうな顔をしました。
「今は私の魔力でなんとかなっているけどいつまでもとはいかないから帽子を被せないとな」
「分かりましたレイオス様」
後日、私達は耐火の帽子を買って、エミリオに被せました。
耐火の服の効果でエミリオが寝ていたり、興奮しても火の粉を飛ばしません。
元々火事に強い家でしたが、より安心して過ごせるようになりました。
それから数年が経ち──
「おかあさま!」
「おかあさま‼」
リリィとエミリオは四歳になりました。
「どうしたの?」
「これ、おはなのかんむりつくったの!」
「おかあさまにあげる!」
そう言って二人分の花冠を被せてくれました。
「ありがとう、大事に保管しないといけないわね」
「おとうさまにそうだん!」
「そうだん‼」
「アイリス、エミリオ、リリィ。どうしたんだ?」
レイオス様がやって来ました。
「おかあさまにはなかんむりつくったの!」
「おとうさまながもちさせるまほう、しってるでしょ?」
「ああ、知っているとも」
「おねがいかけて!」
「まほうをかけて!」
私は花冠をレイオス様に渡します。
レイオス様は受け取り何かを呟いてふーっと息を吹きかけました。
小さく火で燃えたと思ったら何も変化はありませんでした。
「これで大丈夫」
そう言って返してくれました。
「おとうさま、いまのどうやったの⁈」
「おしえておしえて‼」
「エミリオ、リリィ、お前達が大きくなったらな」
「「うん‼」」
無邪気に頷く二人と、嬉しそうに目を細めるレイオス様。
幸せな光景です。
「ちょっと邪魔をするよ」
そう言ってメンフィス公爵様達がいらっしゃいました。
「メンフィス公爵、何故此処に」
侯爵様は首をかしげます。
「マリオン侯爵殿、貴殿の子等とレイオス伯爵の子等が共に遊んでいると聞き、混ぜて貰いたいと」
「なるほど」
「えみりおさま! りりぃさま!」
「えみりお、りりぃ!」
「ふれんさまに、りちあさま!」
「ふれん、りちあ」
侯爵様とスノウさんのお子様であるフレン君とリチアちゃんがいらっしゃいました。
よく遊んでいる子ども達は大はしゃぎ。
そこに赤髪と金髪の子が現れました。
「あなたたち、どなた?」
「ぼくはれおん」
「おれはるーく!」
「はじめまして、れおんさま、るーくさま、りりぃともうします」
「はじめまして、れおん、るーく。わたしはえみりおです」
私の子ども達は丁寧に挨拶をしました。
「わたしはりちあよ」
「ぼくはふれん」
スノウさんの子ども達は簡潔に挨拶をしました。
「なにしてあそぶ?」
「あそぶならここでだけだよ、にわからはでちゃだめだよ」
「じゃあおにごっこしよう」
「えーままごとがいい」
なんて会話をしながら子ども達はそれぞれ遊びたい遊びを言い合い始めます。
「……」
「どうしたんだい、アイリス」
「……私にはあのような子ども時代はありませんでした」
「そうか……」
「
「……」
「ですから子ども達が自由に遊べているのが嬉しいのです」
私は微笑みました。
レイオス様は私の頬を撫でます。
「いずれこの子らもこの領地を統治するか、嫁にいって統治の手伝いをするだろう、その時は君も手伝ってくれ」
「はい」
「それまでは伸びやかに育つようにしよう、ただエミリオは嫡男だから来年辺りから教育を始めよう」
「はい」
子ども達の健やかな成長と、大人になった時に私達の手を借りずに過ごせるようにしなければという義務感。
貴族として生まれたからにはあの子等はそれから逃れられない。
だから今だけは、ほんの少しの間だけは健やかに、子どもらしく、成長しますように、どうか、どうか──