スノーヴェール雪山から帰還して翌日。
俺達はスノーヴェール雪山で起きた事を全員に詳しく話した。
「マグジールが生きておっただと?」
「……それ、本当なの?」
「本当だ。あの感情の剝き出し方、幼稚さは間違いない。」
マグジールが生きていたという事に驚いてる2人に俺はそう返した。
少なくとも、俺に変なコンプレックスを向けてくる人間は知る限りヤツ以外心当たりが無い。
「………話に割って入って申し訳ないけど、彼は君達の時代の人間だろう?なら………」
「そう、本来なら死んでるはずだ。生きてるはずがない。」
だからこそ、そこが引っ掛かる。
何故奴が生きているのか。
あれが本当に本人だったとしたなら考えられるのは………
「妾達と同じ様に封印、とかか?」
「あり得なくはないが、それなら奴はいつ目覚めたんだ?少なくとも、俺達は誰にも1000年も眠るなんて言ってないぞ。」
奴が自身に封印を施してまで生きようとする理由に心当たりは無い。
あるとしたらスノーヴェール雪山で見せた通り、俺への私怨も有り得るが、自分でも言ったが大規模侵攻終結後に封印状態になった事を誰にも言っていない。
マグジールがそれを知っていたとは考え辛い。
「不老不死とかはどうだろう。それなら可能性としてはあるんじゃないかな?」
「………するかな、アイツは?」
「私達はマグジールと交流は無い為、何とも言えないが、それでも意味なくやる様には見えないな。」
フリードの言う可能性に、俺がフレスにそう聞くと、フレスは俺と同じ所感を述べて首を振った。
「………ニーザ。俺達が眠った後、マグジールは俺が生きてる事は知っていたと思うか?」
「それね………。アンタとフェンリルは死亡した者と扱われてたわよ。アタシ達も姿を偽って魔族狩りをしてたから、たぶん同じ扱いじゃないかしら。それと………、」
「ん?」
「嫌な話かもしれないけど、マグジールは大規模侵攻中、もしくは終わってすぐに仲間を全員殺して行方不明。そこから数年後に現れてヴォルフラムを殺害した後、その場で城の兵士に殺されたそうよ。」
「なんだって!?」
「それは確かなのか、ニーザ?」
フェンリルの問いにニーザは頷き、続きを話す。
「あくまで当時の噂程度。アタシ達も詳しくは知らない。だから、それが本当なら封印もそうだけど、不老不死の線も薄いと思う。」
「あのマグジールが…………、」
まったく想像してなかった話の内容に思わずそんな言葉が漏れた。
だが、これで確定だろう。
人間が不老不死になる方法は限られており、まず前提条件として生きてる事が絡んでくる。
そうなると俺に逆恨み目的で不老不死になったというのは可能性から消える。
それに………
「仮にあれが別の形で不老不死になったとして……、ただの人間が不老不死になった程度で1000年も過ごせるかと言われると……」
「無理じゃな。妾達と人間とでは時間の感覚があまりにも違いすぎる。老いることも、死ぬことも出来ぬ1000年の時間など、人間からすれば死よりも苦しい拷問でしかないじゃろうよ。」
フェンリルの言葉に頷く。
その通りだ。魔族や特定の種族にとって、例えば100年はあって無いような物だが、俺達人間からすれば生きてるかどうかさえ怪しい。場合によっては永遠に思えるような長さだ。
そんなのが1000年も死ぬことも出来ずに続くなど、考えるだけでも頭がおかしくなる。
「じゃあ、不老不死は違う?」
フリードは顎に指を当てて呟くが、俺は「ああ。」と返す。
「感じた魔力の質的に見てもたぶん違うだろうしな。となると、後は1つ………。」
そう呟いた俺に、その場にいる全員の視線が集中した。