「藍!」
姫様を軟禁する部屋の扉を破ると、姫様は藍に飛び込んで、彼を強く抱きしめた。
「モンドさんもご無事ですね、よかった」
私の様子を確認したら、姫様はまた一安心。
この部屋は、海賊臭いと汚いところが変わらないが、テーブル、椅子、ベッド、布団から飲用水まで全部揃っている。先ほどの牢屋と比べたら、もう最高と言える。
「でも、どうしてここに?」
「ご心配なく、脅迫や乱暴などお嬢様のお気に入らない方法は全く使っていません。頑張って一人の海賊を説得して、協力をもらいました」
「ありがとう、藍。あなたならきっと大丈夫と信じています」
姫様は感動の中に浸して、藍の話をちっとも疑わなかった……
確かに、藍は乱暴なことをしなかった。軽い一撃で海賊を倒しただけだ。
確かに、脅迫もしなかった。「親切」でとある海賊を死ぬほど怖がらせて、協力をもらっただけだ。
「看守はいないですか?」
「ええ、いませんよ。全員の解放と、青石が欲しい理由を教えることを条件として交渉してみたけど、船長に合わせてくれませんでした……ずっとここで返事を待たせていたの……」
「カタッ」
木扉が壁にぶつかる音は、藍と姫様の会話を断ち切った。
「あっ……え……」
扉の外に立っているのは海賊ではない。
茶色肌の若い女だ。
小さいウェーブの黒髪に、グレイ色の粗布のワンピース。
手に食べ物のトレーを持っている。
姫様に食べ物を運びにきたのでしょう。
「えっ?!」
驚いた女は後ろに振り向いて、また部屋の私たちへ向けた。そしてもう一回後ろへ、もう一回部屋内へ――
外に誰かがいる!
さっそく扉の前に駆けた。
黒肌の大男は、部屋の扉から数歩離れたところに立っている。
客船で姫様に庇われたあの「奴隷」!?どうしてここにいる、まさか……
私を見たら、男は身を反して走り出した。
「上に気をつけて!」
試してそう叫ぶと、男は一度天井を見上げた!
何も見つからない男は、再び重い足音を立てて逃げ去った。
……
やはり、ウィルフリードの言った通り、彼は私たちの言葉がわかっている。
だとしたら……
最初から、客船は海賊たちの掌に踊らされていた。
「殺人はただの後始末でしょう。そのる前に、彼はすでに帆に小細工をしました。海賊船の追撃を成功させるために……」
「そうかも、しれません」
姫様の青ざめた顔を見て、思わず視線を横に向いて、最後の言葉をかざした。
「そんな、そうでしたら、わたくしは……」
姫様の体が硬くなり、目の焦点が散らした。
大男の後を追って部屋を出た女が残したトレーの上に、海でなかなか見かけないお菓子や果物が盛っている。
多分、その男は姫様に感謝するために女に送らせたのでしょう。
「わたくしは、何も知らなくて、彼を……」
姫様の唇が小さく震えている。
「姫様……お嬢様のせいではありません。あの時、彼はすでに成功しました。お嬢様は騙されて、可哀想な罪人に同情を寄せただけです」
慰めの言葉をかけたいけど、どう話せばいいのかわからない。
あの男の嘘を見抜かなかったけど、人を疑うことも知らない姫様にとって、その同情自体は間違っていない。
「彼を庇うことに納得できませんでしたけど、お嬢様のお話も最ものことで……」
「本当に、ここをどこだと思ってるの?」
不愉快な挨拶と共に、真紅の女海賊は部屋の入り口に現れた。
その後ろに二人の雑魚海賊が従っている。
「こんなに悠々と雑談して、観光地に勘違いしてるんじゃない?」
「……」
危険の匂いを感じ、警戒を高めた。
「下がるがよい」
雑魚にそう言いつけると、カンナは扉を閉めてゆっくりとこっちに歩いてきた。
私と視線が合った一瞬、目尻を吊り上げて微笑みを見せた。
「や、お嬢さん、よく生きているのね」
「おかげさまで」
「そこの使用人さんも、ここまで来られるとは、見どころは顔だけじゃないようだね」
カンナは余裕そうに細い杖を弄んでいる。
アルビンたちと倉庫の状況が気になるけど、彼女が何かを言い出す前に、黙ったほうが良さそうだ。
「言いたいことがあれは、さっさと言ったらどう?わざわざと雑魚を払ったのは話のためでしょ?まさか、船長の秘密決定でも持ってきたの?」
そのもったいぶりに気に入らない。話の続きを催促した。
「お前――」
カンナは細い杖の先で私の顎を上げた。
「よそもののくせに、よく喋るんじゃない?」
無言でその無礼な杖を払った。
「まあ、はっきり言って、お前の言った通り、あたしたちは青石以外にも欲しいものがある。しかも、姫様が納得しないと、どうしても手に入れないものだ」
「それで、姫様に条件を相談しに来たの?」
「口の減らないお嬢さん、名前は?」
「フィルナ・モンド」
「月のお嬢さん、言葉の遊びはまた今度ね。用があるのはそっちのほうだ」
カンナは私の前を通り、姫様に向かった。
姫様は警戒しそうに後退ると、藍は二人の間に入った。
「さって、姫様、青石譲渡の条件について話しましょう」
「条件なら、既に申しました。全員の自由と青石が欲しい理由を教えていただければ、青石をお渡しします」
「『お渡し』だけじゃ足りないのよ。『譲渡』と言ったでしょ?」
カンナは手を横に振った。
「譲渡、ということは……?」
「もちろん、所有権を譲渡することよ。姫様から――青石との契約を解除してもらうのよ」
「えっ?!」
姫様の口から短い驚嘆が漏らした。
失態に気づいた姫様は手で口を遮った。
譲渡?青石との契約……?