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第33話 剣と弓と???の戦い

「盗賊だー!!盗賊が出たぞー!!」


 いらっしゃいませ。お待ちしておりました。


 御者さんの大きな声が食事を終えたばかりの俺たちの耳に届く。


「タイセイさん!!あっちの方向から10人です!!」


 タマちゃんが気配察知を使って、盗賊の位置と人数を探っていた。


 そして、腰に下げたロングソードを抜いて、そちらへと構える。


 もう何も言うまい……。


「タマキちゃんは弓矢で牽制して!!タイセイくんは前衛で他の人と連携して!!その間に私は魔法の準備をするから!!」


 トリュフさんに言われて、しぶしぶと弓矢を構えるタマちゃん。


 本当に【弓使い《アーチャー》】のプライドある?


 でも、他の人って?


 俺たちの他には――御者のおっちゃんと、トリュフさんに料理を運んできた2人。あと、ワインをついでいた人と、メイドさんみたいに立っていた女の人……。


「タイセイさん!!来ます!!」


 タマちゃんは叫ぶと同時に矢を放つ。


 その矢は、焚火の炎の上を真っすぐに飛んで行き――


「――ガアッ!!」


 おそらくは、その先にいた盗賊に命中した。


 そして、他の盗賊たちの姿が見えた。


 皮の防具を付けた男たちが、その手に剣やら斧やらを持って走ってきている。


「相手には弓使いがいるぞ!!動いて的を絞らせるな!!」


 その中の1人がそう叫ぶ。


「冒険者と言っても女子供だ!!一気にやっちまえ!!」


 確かに、見た目は女と子供。


 でも、中身はDランク冒険者を含む、だけどね。


 まあ、それでも、魔法使いのトリュフさんは近接戦が得意そうな感じがしないので、魔法の準備が出来るまでは、絶対に近づかせないようにしないとだな。


 でも、人数的にカバーするの無理じゃね?


 でもやるしかないので、俺は左右に動きながら先頭を走ってくる男へと向かった。


『【称号】ダービージョッキーの効果で全てのステータスが100%アップします』


 うん、そうだと思った。


 俺は一気に加速して、一瞬で男の懐に飛び込む。


 そして、その勢いのままに、鳩尾目掛けて膝を突き刺した。


「ガッ……」


 男は何が起きたかも分かっていなかっただろう。

 カウンターとなったその一撃で、そのまま意識を失ってその場に倒れた。


 うん、やっぱり人にナイフとか向けられないからね。


 そして、次に向かってきた男へと向かおうと思った時、焚火を挟んだ逆方向から盗賊が抜けていくのが見えた。


 タマちゃんよろしく。


 ――シュッ!!


「ギャア!!」


 ――ガキン!!


「ぐおっ!!」


 矢の発した風切り音が聞こえて、盗賊が倒れて……ガキン?


 えい。


 俺は二人目の盗賊の顔面を殴り飛ばしながら、聞こえてきた音が何だったのかと思った。


「後方からも10人来ます!!」


 そんな思考を遮るようにタマちゃんが叫んだ。


 これはマズイ!!


 慌ててトリュフさんの下へ戻ろうとした俺に、別の盗賊が剣を振りかざして向かってきた。


 意識をトリュフさんの方へと向けていた俺は、その攻撃への反応が一瞬遅れ、かろうじて地面を転がることで躱すことが出来た。


 ヤバい!!死ぬとこだった!!


 ステータスが倍になっていても、元がそれほどでもないので、流石に斬られたら耐えられる保証はない。


 いや!そんなことよりトリュフさんが!!


 俺は立ち上がると同時に――襲ってきていた男の腹を蹴り上げ、下がってきた頭へと握りこんだ両拳を叩きつける。


 ナイフを手に持っていたことで、その柄の部分が男の脳天を直撃して、男は声も無く地面に叩きつけられた。


 これで俺が3人。

 タマちゃんが2人、謎の音で1人。


 ――シュッ!!


「ぎゃあ!!」


 タマちゃんも3人、と。


 こちらには後3人盗賊が残っているはずだが、今はトリュフさんを守るのが先だ。


「タマちゃん!!俺は後ろへ行くから、こっちは頼む!!」


 そう伝えると、俺は全速力でトリュフさんのところへと向かった。



「トリュフさん後ろ!!」


 走って向かっている俺の目に映ったのは、目を閉じて集中して詠唱を続けているトリュフさん。

 そして、その背後から襲い掛かろうとしている盗賊。


 マズイ!!間に合わない!!


 俺は一か八かナイフを投げつけようと、手にしていたナイフを投げやすいように握り直す。


 頼む!!

 「命中率上昇(小)」で上がっている能力値が、更に2倍なんだろ!?

 当たってくれ!!


 俺は祈るような気持ちでナイフを投げようとした――その時。


「ガフッ!!」


 トリュフさんを襲おうとしていた盗賊は、何かの衝撃を顎に受けたかのように宙へと舞った。


 俺は投げかけたナイフを懸命に止めて、盗賊が地面に突き刺さるように落下していく様を呆然と眺めていた。


 トリュフさんの魔法?

 いや、彼女はまだ詠唱を続けているように見える。


 詠唱長いな……ヤバい魔法とかじゃないよね?


 そして、そのトリュフさんの背後を守るように立っていたのは、食事の時と変わらぬ位置にいたメイドさんらしき女性。


 戦うメイドさん?そんな言葉が頭をよぎったが――タマちゃん情報だと、まだ9人はいるはず。


 とか考えてると、わらわらと暗闇から抜け出してくる盗賊たち。


 俺は全速力でトリュフさんを守るべく向かった。


 ――パリン!!


 そんな俺の背後から、あの謎の音が再び聞こえてきた。


 うん、何となく何の音か分かった気がする。





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