ウィンリルさんのお話を聞いて私はお母様に色々と質問をしたくなりましたが「さて、それじゃあ───」といってウィンリルさんが立ち上がられたので、お帰りになるのかと思い、私も席を立ちました。
しかし、ウィンリルさんはまだお帰りになるのではありませんでした。
次のウィンリルさんの一言で部屋の空気が一変しました。
「最後にこの香りのことについて説明をしてもらおうかな」
───え? 香り? どういうことでしょう?
「キミってさ……
言葉の内容もさることながら、ウィンリルさんが吐き捨てるような冷たい言い方をされたので、私はドキリとしました。
そしてウィンリルさんは私との距離を詰めました。
「───くんくん。───ふんすふんす。
やっぱりだね。ネフェルの香り以外に別人の香りがするよ。いや。本当は香りの粒子なんてない。でもボクの嗅覚が訴えるんだよね。別の香りが混ざってるって。ボクに隠し事はできないよ。キミが本当にネフェルなら、それはわかるはずなんだけどね。それじゃあ、素直に白状してもらおうかな。これはいったいどういうことなのか」
相変わらず人懐っこい笑顔のウィンリルさんですが、その時、私はウィンリルさんの瞳の冷たさに気がつきました。
表情が朗らかなので見落としてしまっていましたが、ウィンリルさんの目はとても冷淡で静かに広がる夜の海のようでした。
顔は笑っても目が笑っていない───。
よくそう云いますが、ウィンリルさんはまさにそれでした。
そして核心を問い質そうとするウィンリルさんの目はますます冷たさが増し、狼が獲物を静かに見据えるかのようでした。そこに感情は一切なく、逃れることはできないという威圧感に満ちていました。
(まずい状況だ)
お母様もいつになく真剣な仰りようでした。
(そ、そのようですね、お母様。私もすごく緊張しています)
お母様がウィンリルさんのことを「
(ヤツは我が魔王軍
私は納得しました。確かにウィンリルさんは優秀なスパイか詐欺師のようです。このような方に下手な嘘が通用するとは到底思えませんでした。
(仕方がない。ヤツには素直に白状するぞ。下手に機嫌を損ねるとその方が厄介だ)
(わ、わかりました、お母様。でも私のことを言ってしまって大丈夫なのでしょうか?)
(
お母様にそういわれ、私はウィンリルさんに本当のことを白状することにしました。