「ましろ……俺と付き合ってくれ!」
「いいよ!」
「やったー! ありがとう!」
また新しい
今回の見た
イケメンの部類には入れるレベルだし、ボクの隣にいてもボクの価値を下げる心配はなさそう。
コイツ、ボクが男だって知っているのに。告ってくるなんて、とんだ変態野郎だな。
まぁ、キミが期待する恋人になれる保証はないけどね。
見てみて、ボクにイケメンを盗られてブサイクたちが悔しそうな顔している。キモ、何その目? 男のボクにイケメンを盗られて悔しいの?
悔しがるヒマがあるなら、鏡で自分の顔を見てきなよ!
そんな顔じゃ、誰にももらってもらえないよ。
ボクはお母さんが望む女の子になることを選んだ。
本当は、お母さんが望む可愛らしい女の子とは違う。女の子への復讐に燃える女の子だけどね。服装やメイクになんて興味は全くなかったけど、女の子をあざ笑うためなら何でもやってやる覚悟は出来ていた。
女子に嫌われるけど、男子にはモテる女の子がボクの思い描く理想の女の子。「女子から嫌われて男子にモテるあざとい女って最低だよな」って男子は言っていた。
じゃあ、訊くけど、そんなボクに、はぁはぁしているクソ野郎は誰かな? 夜にボクの可愛い姿で、えっちなことを妄想してスッキリしているのは誰でしょう?
お前だよ。今、ボクに腕にぎゅっとされて鼻の下を伸ばしているお前。 それにそんなボクを横目に、ボクの生足を見てゴクリと喉を鳴らしているお前たちだよ。お前たちのオカズを提供するために、こんな格好しているんじゃないんだよ。
可愛いボクを見せびらかすため、お前たちみたいなバカをおもちゃにするためなんだからね。
そんな男子がそういうタイプの餌食になる何て知らないようだけどね。
そんな中学生活を送っていたボクも高校生になろうとしていた。
絶対に高校に行っても、モテ続けてモテない女子を見下してやる。
そんな野望を抱いていたボクは高校選びも慎重だった。
学校のランクではなく、制服の可愛さだけで探していた。
ボクが選んだのは私立アリアンヌ学院。
その時には珍しくジェンダーに優しい高校で制服が自由だった。
ボクは男子の制服を着たくなかった。
私服で通える高校にしようか一瞬考えたけど、すぐに却下した。制服は学生の特権。可愛い私服は卒業してからいつでも着られる。現役高校生で制服を着られるのは今しかない。
だから、ボクは可愛い制服がある高校を一生懸命に探した。
そんな不純な理由だけど、お母さんは反対しなかった。
むしろ、一緒に制服の可愛さを基準に高校をリサーチしていた。
それにその高校は女の子の制服がセーラー服で可愛かった。
高校に入学してからもボクはモテ続けた。
当然、ボクは似合っていた。ボクは迷うことなくセーラー服に袖を通した。
そんなボクの周りには入学初日から男達が集まり始めた。イケメンからブサイク、色んな意味で選り取り見取り。男にちやほやされることを楽しんでいるとボクは女の子から完全に敵として認識された。まぁ、女の子達の嫉妬の目が可笑しくてしょうがない。悔しかったら男のボクより可愛くなってみろ。ボクは男として認めない女の子達を蔑んでいた。
「ましろ、ちょっといい?」
ボクはクラスの女子に呼び出された。女子に声をかけられるなんて半年ぶりだ。なんだろう?
「あんた、調子に乗っているよね?」
「何のことかな? ボク、わからないよ」
「ふざけるな! クラスの男子にチヤホヤされて調子に乗るなよ」
「わたしの彼氏まで奪いやがって」
「あぁ、あのイケメンくん。あんたの彼氏だったんだ? ボクに告って来た中では最低ランクだったけどね」
「ふざけるな!」
おぉ、こわ。胸ぐら掴んできたよ。女の嫉妬って怖いね。
「わたしの初めての彼氏だったのに……」
「へぇ、そうなんだ。また作れば? あぁ、でも無理か。男のボクよりモテないキミには」
ボクは目の前にいる敵意剥き出しの女子をバカにするように耳元で囁いてやった。悔しさと事実を言われて反論できないのか、女子はボクの胸ぐらから手を離した。
「あぁ、制服がシワになっちゃったよ」
「お前、学校に居られなくしてやる」
「やれなら、やってみてよ」
ボクが挑発すると、女子がボクの顔にビンタをしてきた。いたい。ちょっと調子に乗り過ぎたかな。顔だけはやめて欲しかったのに。
「キミたち」
ハスキーボイスが聞こえる。
「く、クロナ先輩!?」
クロナ?
あぁ、知っているよ。この学院でナンバーワンのイケメンって言われている2年生だよね。
黒髪のウルフカットに切れ長の目、ブレザーをかっこ良く着こなしている。ボクが見てきた男の中でダントツでイケメンだ。
「大丈夫か?」
「はい」
「先輩、こ、これは……」
「一人相手にこれはないんじゃないか?」
女子たちは何も言い返せなかった。
クロナセンパイはボクの手を引いて連れ出してくれた。
「どうして、あんなことになったんだ?」
「さぁ、彼氏を盗られたって勝手な妄想してキレているだけですよ。彼氏が捨てる程可愛くないアイツが悪いんだ」
「顔は可愛いのね、中身は残念だな」
はぁ? 何言っての、この人?
ボクの中身が残念?
ふざけるなよ! あんただってボクと同じように見た目を売って生きている人間だろ。
「そう? そういうセンパイだって、女の子にチヤホヤされて優越感に浸っているくせに! それに本当は自分よりモテない男子を心の中でバカにしているんでしょ!」
ムカついたから、センパイ相手だけど容赦なく言っちゃった。
ボクを怒らせたセンパイが悪いんだから……え!?
センパイが泣いている!? ボク、泣かせること言ってないよ!
「え? どうしたんですか?」
「うるせぇ! 何でもない。こっちはカッコいいなんて評価はいらない……普通でいたいだけなのに……」
あれ? センパイは女の子にモテて嬉しくないんだ。
ボクと同じだ。見た目で損しているという意味で同類だったんだね。
「そっか。センパイも一緒なんだね」
「はぁ? お前みたいなモテモテ人間には分からないだろ」
「わかるよ。本当はね、可愛いなんて言われたくない。お互い、欲しい言葉がもらえない。似たもの同士だね」
「一緒にすんな!」
「センパイは中身、可愛いですね」
あれ? ウソ塗れのボクから素直な気持ちがポロッと出た。
いつぶりだろう。
「う、うるせぇ!」
顔を赤らめるセンパイの顔が可愛い。
あれ!? 何、この気持ち! 中学の初恋以来だ。
もしかして、ボク、センパイに恋したの!?