「好きだよ。いっくんが好き」
「ホント、しつこいよね、お前」
「一途って言って」
「色々見て、ちゃんと選べっていってんのにさ」
「選んだじゃん」
「おっさん選んでどうするんだよ」
「いっくんを選んだんだよ」
オレが好きなのはいっくんだから、いっくんが欲しいと、怯えた少年の顔でシュンが言う。
出会った頃は、まだまだ少年だった。
名前を知るまで、心の中で『少年』って呼びかけてたのを覚えてる。
まだ背も低くて、細くて、頼りなげで、きゅっと唇を引き結んでまっすぐな視線をしていた。
「いっくん、好きだ」
いつの間にか、こんなに大きくなって、力強くなった。
少年だったころのシュンは、確かにまだシュンの中にいて、今でも俺を求めてくれていた。
おれはなんで自分を縛って我慢していたんだろう。
シュンは以前に教えてくれていたのに。
言わなきゃわからないんだ。
言っても壊れる関係ばかりじゃないんだ。
シュンは大丈夫。
おれを好きでいてくれる。
おれは好きでいられる。
シュンと生まれたままの姿で向き合うのは、初めて。
今までは少しだけでも理性を残したくて、どっちかが衣類を残していた。
二人とも全部の布を床に落として、抱き合った。
ベッドの上に押し倒されて、たくさんキスを貰う。
おれからも、あとが残るキスをする。
「あ、ん……った、いっくん、これ痛い」
「けどほら、綺麗についた」
「ほんとだ……オレも、つける。ここ? それとも、こっちがいい?」
「どこでも、いいよ」
ちゅっちゅって、キスを落とす音がする。
肌を舐める音もして、シーツの布ずれの音が混じっていく。
お互いに触りあっていたのに、だんだん、シュンのされるがままになる。
シーツをけって、枕に縋りつく。
シュンの指がおれの肌を辿る。
ゆっくりと確実あちこちに愛を刻んで、おれを夢中にさせる。
「あ……ぁん……ん、そこ……いい…いい、あシュン……シュン」
「うん……ここ、いっくん気持ちよさそう……かわいい、ね、いっくん……もっと啼いて? 声、だして……」
シュンの愛撫でおれは蕩ける。
こらえ性がなくて、先に一回放ってしまったら、それを使ってシュンがおれの中をあやし始める。
それだけでも気持ちよくてどうしようもなくなるのに、シュンはおれのあちこちにキスを落としていくから、耐えられなくなっておれはシュンの腕に噛みつく。
「ふふふ、いっくんの痕、くっきりついた」
痛いはずなのにシュンはそう言って笑って、もっと熱心におれの身体を確かめる。
うつぶせにされて、おれの中にシュンが入ってくる。
腰を持ち上げて応えていたけど、だんだん身体を支える余裕がなくなってぺったりとうつぶせになってしまう。
おれを抱え込んでぴったりとくっついて、シュンはなおもおれの中を往復する。
背中にシュンが噛みついてきて、その痛みも、愛おしく感じた。
「ああっ…あ、ん……シュン……シュン、いい……もっと……」
「あ…いっくん……すげ。あったかい……気持ちいい? オレはねえ、きもちよすぎて、溶けそう」
ぐいぐいとおれの中を愛してくれているシュンの熱が、もっと熱く硬くなる。
腰の奥がざわついて、背中を何かが駆け上る。
いやいやと首を振ったら、強くベッドに押さえつけられた。
「郁」
「ぁ……ああ、や、」
耳元で呼ばれて、ぎゅって、内臓が動く。
「はっ……いっくん、すっげえ、いい……感じたの? 名前、呼んだだけなのに?」
「だ、だけじゃ、ない」
「郁……郁、好き……」
「シュ…ン、あ、や、やだ、だめ、それだめ……シュン、シュン……」
うつ伏せたおれにのしかかって、動きを封じて貫いているだけだ。
シュンが動いている訳じゃない。
でも感じる。
汗ばんだ肌と、荒い息づかいと、耳元で呼ばれるおれの名前。
いつもと違う、声。
枕をつかんだ手の上から、シュンの手が重ねられる。
「腰、揺れてる……」
「違……ああ、ダメ……シュン、イっちゃう……」
「いいよ。いっぱいイって。何遍でも、イって……オレのでイって」
「ダメ……変、なる……んあ、あ、ああ……シュン」
シュンの熱は熱くて。
おれの中はたくさん愛されてドロドロになって、きっと溶けてしまったんだと思う。
それくらい、夢中になった。