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第66話:貴族の陰謀(3)

 レオンは自分の巻き込まれ体質にいい加減、嫌気がさした。どうしてこうも次々に事件に巻き込まれるのか、その原因を女神に問うてみた。


・女神からのコメント:なんでだろー? そっと自分の胸に手を当ててみて、今までの自分の行いを振り返ってみたらー?


 女神の言う通り、自分の胸に手を当てて、問いかけた。しかし、答えなど出てくるわけがない。


 自分にヒントを与えてくれるかのように善行スクリーンが開いた。


A:麗しい女神様への感謝の念が足りないから:☆☆☆

B:魔王への畏敬の念が足りないから:★★★

C:ギャグ補正。


(……女神様へ疑念をもっている自分が悪いのはわかりますけど、Cのギャグ補正ってなんですかーーー!)


 女神にからかわれていることが嫌でもわかる。自分のこの巻き込まれ体質は生まれ持っての才能だろうと勘づく。


・女神からのコメント:冗談はさておき、あなたのそういうところは自分の運命だと思って諦めてね。

(マジですか……)


・女神からのコメント:レオンくん、あなたは勇者よ。困っている女性がいるなら、レオンくんが囲ってあげて?

(あーーーんもう、俺がなんとかします!)


 レオンは女神の言う通り、メイドのお姉さんを救うべく、彼女の説得に入る。しかしながら、彼女は訝しげな表情だ。


「いいのですか? 私がこう言うのは何ですけど、妹を助けてくれるとなると、友好派の貴族を敵に回すことになりますけど……」

「そんなことはわかってる! 見返りはしっかりもらうからね?」

「エッチなことするんですか!? 妹はまだ10歳ですよ!」

「マジで……俺、興奮してきちゃった!」

「ナイフを返してください。私、この場で自害します」

「ちょっと! 冗談に決まってるでしょ!」


 メイドのお姉さんをもう一度、強く抑え込む。そうした後、果物ナイフを虚空へと仕舞う。しばらくして、お姉さんは落ち着きを取り戻し、妹救出を願い出てくれた。


 頃合いを見計らったようにバーレたちが寝室へ入室してきた。彼らに向かって、こくりと頷く。


 バーレはバンバンとこちらの肩を叩き、メイドのお姉さんにニッコリとほほ笑み、さらには「妹さんはおれっちが守ってみせる!」と豪胆な台詞を吐いている。


 ミルキーはお約束通り、目をガンギマリさせて、鼻息をフンスフンスと吹き荒らしている。


 エクレアは汚らしいものを見るような目で睨みつけてきて、ペッ! と床に唾を吐いている。


 いつもの仲間たちの仕草であった。レオンは苦笑いしながら、皆と手を繋ぐ。


「移動魔法ランランルー!」


 左手から光が発せられ、寝室に集う皆を包み込んだ。次の瞬間、屋敷の中庭へと移動した。そこからはメイドのお姉さんが案内してくれて、屋敷の外へと逃げ出した。


 まずはメイドの妹さんを探すために居場所を突き止めなければならない。ここでタイミング良くくノ一のミサがポチとともにレオンの下へと集まった。


「そろそろ貴族の屋敷から逃げ出す頃合いだと思ってたッス」

「さすがはくノ一のミサだぜ! 説明不要だよね?」

「もちろんッス。忍術タカの目でレオンがちんこをぼっきり2度もエクレアさんに折られたこともばっちり把握済みッス」

「蒸し返さないで!? もう一度、折られる覚悟の上で、今からメイドのお姉さんの妹さんを助けに行くんだから!」


 エクレアがベキボキバキボキと指の骨を鳴らしている。こちらのちんこを折る準備は万端のようであった。


 決して後ろを振り向かない。エクレアのほうへと身体を向ければ、彼女がこちらのちんこを玉袋ごと鷲掴みしてくるであろう。


 レオンはその場でしゃがみ込み、ポチと会話を試みる。ポチは何故かはわからないが、目をキラキラと輝かせている。嫌な予感をひしひしと感じざるをえない。


「ポチ! メイドさんの妹の居場所がわからないか!?」

「妹ちゃんのブラかショーツがあれば、その匂いで居場所を探し当てれるワン!」

「お前……妹さんは10歳だぞ!?」

「一向にかまワン!」

「すげえド変態だなっ! さすがは白銀狼だぜ! 一切ブレない男だ!」


 レオンはさっそくとばかりにメイドのお姉さんへ妹のブラかショーツを所持していないか聞いてみた。お姉さんはドン引きしている。


 当然だ。自分だって、10歳の女子の下着に興味なんて一切湧かない。しかし、それでも妹さん探しには必要な品々だ。レオンは臆さずお姉さんに詰め寄った。


「えっと……下着ではなくて衣服とか普段身につけている物ではダメなのですか?」

「ぐっ! 正論は年頃の男子を殺す! 俺はポチにドン引きだ!」

「安心しました。では、そういったもので……」


 自分は正しいことを言った。しかしながら、ポチがジト目でこちらを睨んできた。鈍い汗がだらだらと流れてきた。


 ポチは妹さん探しに欠かせない。ポチの協力を取り付けなければならない。


「訂正します……妹さんのブラとショーツを拝みたい! それをオカズにしたいんだっ!」


 自分で言っててドン引きだ。重ね重ね言うがメイドのお姉さんの妹は10歳だ。年端も行かぬ女子の下着をオカズにしたいなど、女性陣の怒りを買うだけだ。


「勇者様。ぶち折りますよ?」

「エクレアさん、待って!? ポチにそう言えって言われただけなの!」

「勇者様。白銀狼のポチさんがそう言うわけないでしょ?」

「マジだってーーー! ポチがド変態なんだって! お願い、信じて!」

「……ポチさん、本当ですか?」


 当然のことながら、ポチは自分を裏切った。フルフルと顔を左右に振ってやがる。「グッ!」と唸るしかなかった。


 ポチに嵌められた。ポチが「シッシッシ!」と愉快に笑っていやがった。


「衣服とか身につけていた物で我慢しまーーーす!」


 メイドはしばし時間が欲しいといって、この場から消える。しかし、待てど暮らせど、メイドは戻ってこない。


「うん。メイドのお姉さんひとりで行かせた俺たちがバカだった!」

「くそっ! おれっちとしたことが! メイドさんが妹属性じゃなかったのが悔やまれる!」

「バーレのアホたれが!」

「おめーに言われたくねえよ! お前もメイドさんがひとりで行くのをそのまま見過ごしちまっただろうが!」

「はいはい。喧嘩しないっ。お姉さんを探しにいきましょ?」


 メイドのお姉さんがどうなっているかは簡単に想像できた。先ほどまで滞在していた貴族の屋敷に戻ることになる。


 その屋敷の入り口へと向かうと、貴族が衛兵といっしょにこちらを出迎えてくれた。衛兵のひとりがメイドのお姉さんを連れてきた……。


「ふふふ。好きにしていいとは言ったが……あまりこいつに同情するのはやめてくれないかな?」

「メイドさん! なんでボロボロにされてるんだ!?」

「はははっ! こいつは私の所有物なのだよっ! こいつに色々と仕込んだのは私なのだっ!」

「そんなうらやましい……じゃねえよ! 婦女子に乱暴する奴は俺の敵だっ! ミルキー、エクレア、ミサ! 女の敵をしばいちゃいなさい!」

「イエッサー! アイス・ボール……って、メイドさんを盾にしないでください! 卑怯ですよ!」


 貴族の周りを固める衛兵がメイドのお姉さんを捕らえたままの状態で、こちらと貴族の間に割って入ってきた。


 貴族はニヤニヤとしている。あの顔面に思い切り、拳を叩きこんでやりたくなってしまう。そうだというのに、貴族は涼しい顔のままだ。


「ふははっ! 何度も言うが、こいつは私の所有物だぁ! 盾に使って何が悪いのだぁ!」


 貴族は下衆であった。王都に住まう貴族はどいつもこいつも腐っていることを改めて知ることになった。


「ふぅ……いい加減、脅しだけで済ませようとしてた俺が間違いだって気づいた! リゼルの街の皆には悪いが、俺がこんな腐った世界を変えてやろうと思えてきた!」

「レオンさん、やっちゃう?」

「うん、やっちゃう! ミルキー、俺とともに覇道を歩いてくれ!」

「それ、プロポーズです?」

「うっ……真面目に受け取っていいの?」

「自分で言ってて恥ずかしくなりました。撤回させてくださーーーい!」

「んもう、可愛いなあ! 俺は国を手に入れるっ! そしてその国をミルキーと仲良く半分こだ!」


 貴族のことを放っておいて、ミルキーとの絆を一層深めてしまった。なんとも言えないピンク色のオーラを身体から発していると、横からドスンと衝撃を受けた。


「勇者様ぁ……あたしの存在を忘れないでください」


 エクレアがウルウルと瞳を濡らしていた。正直言って、彼女の存在を忘れていた……。


 体当たりに近い抱き着かれ方をされた。彼女が刃物を所持していなかったのは本当に幸運だと思えた。


 ちらりとミサの方を見た。ミサが「にししっ」と意味ありげに微笑んでいる。さらに彼女はこちらにウインクを飛ばしてきた。こちらは「へへ……」と力なく言葉を漏らすしかない。


「ええい! 私の前でいちゃつくなっ!」


 貴族が激おこだった。いつも仮面をつけたかのように表情を変えない彼であるのに、意外にも顔に怒りの色を見せてきた。


「すまん! こっちで盛り上がっちまった! んじゃ、改めて……ミルキー、エクレア、ミサ! あの下衆をボコって差し上げてくださーーーい!」

「アイアイサーッス!」


 くノ一のミサが素早く動き、メイドの身柄を確保してくれた。慌てふためく貴族の顔面にミルキーが氷魔法をぶち込む。


 さらにはエクレアが霧の巨人を呼び出す。霧の巨人の手が貴族を捕らえ、さらには貴族を空の彼方へとぶん投げた。


「ナイス連携! あとでご褒美なっ!」

「勇者様との赤ちゃんでおねがいします!」

「却下ーーー!」


 レオンたちはメイドとともに屋敷の敷地外へと飛び出す。ポチがメイドからスカートを受け取り、それをクンカクンカと嗅ぐ。


「こっちだワン!」


 頭にスカートを被ったポチの案内により、レオンたちは王都を駆けていく。すると、貧民街にたどり着いた。その一角にある酒場の前へとやってきた。


 嫌な予感をひしひしと感じた。一刻の猶予もないとばかりにレオンは酒場の扉を蹴破り、中へと入る。


 すると、半裸に剥かれた10歳の女子が目に飛び込んできた。


「お姉ちゃん!」


 妹は泣きながらメイドにしがみつく。わんわんと泣きながら、メイドとその妹はその場で身を寄せ合った。


 ホッとする場面であったのだろう。だが、おふざけ勇者の名を返上してしまいそうになるほどの激情が腹の底から湧き上がって仕方がなかった……。

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