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第65話:貴族の陰謀(2)

 レオンは久しぶりに戻ってきた日常に安堵しつつ、ミルキーをからかってみせた。しかしながら、ミルキーが憂い顔になる。こちらは首を傾げてしまった。


「あれ? ミルキーらしくないけど……何かあった? 俺が寝てる間に」

「うん。竜皇の時だけじゃない。今回の王様との対決も結局、レオンさんがどうにかしてくれたし……レオンさんに頼りっきりだなって思っちゃったの」

「ああ、そういうこと……」

「私、もっと強くなりたいなっ」


 ミルキーが思い詰めている。このままではミルキーがまた意気込みすぎてしまう。そうなれば、彼女の誤射率が大きく上がってしまう。


 このままにしておいていいわけがない。ここはミルキーから肩の力を抜くために、冗談を言って見せる。


「ミルキーって俺のこと、頼り甲斐のある格好良い男だって思ってくれてるってことだよね? ぐふふ……こりゃチャンスだぜ! ここで一気にミルキーを口説き落としちゃうぞっ!」

「んもう、レオンさんったら。レオンさんはそのね……格好良いと思う。うん、決しておねだりしたいから、そう言ってるんじゃなくてねっ」

「お、おう!?」


 ミルキーの返しは自分にとって予想外だった。いつもおふざけかましているというのに、ミルキー評価では「格好良い」だ。


 何をとち狂っているんだと口から出そうになったが、それを強引に引っ込める。そして、脳みそに軽くピンク色を広がせながら、次の言葉を言ってみた。


「マジ? 俺、ミルキールート攻略を順調に進んでる!? とっくにフラグをへし折ってたと思ってた!」

「フラグは折れそうになったりしてるけど、意外と……そう……かもねっ! もう、変なこと聞かないで!」

(うひぃ! ミルキーがいじらしくて可愛いよぉ!)


 ミルキーの後ろに立つバーレがニヤニヤとしていた。さらにはバーレがサムズアップしてきた。


 こちらはその仕草にサムズアップで答えようとした。だが、バーレはゆっくりと立てた親指を下へと向けた。


 それに合わせるように自分の愚息にニギッという嫌な感触が伝わってきた……。


「エクレアさーーーん! 俺のちんこで遊ばないでくださいーーー!」

「ふふっ……ミルキーさんとのフラグごと、へし折っておきますわね?」

「うぎゃぁぁぁ!」


◆ ◆ ◆


 ちんこをエクレアに2度も折られる神罰を喰らいはしたが、彼女の回復魔法のおかげでレオンは順調に回復していた。


 ベッドに身体を預けながら、仲間たちから自分たちが置かれている状況を説明してもらうことになる。


 城ロボを破壊したことでこの国の王様は行方知れずとなっていた。王様自体は見つからなかったが、王冠だけは残されていた。


 バーレがその王冠をレオンに手渡してきた。レオンはそれを頭に被る。


 すると、ミルキーが目をガンギマリさせて鼻息を荒くする。エクレアがとろんと蕩けた表情でくねくねと身体をよじらせた。


「というわけで、王様はどこかへ逃げた可能性が高い」

「バーレ、お前すげえなっ! 女性陣のことは一切無視なのか!?」

「話が進まんからなっ!」

「お、おう。しかし……王様はタンス漁りみたいに絶対に再登場してきやがるだろうし。バーレ! 草の根わけて、トドメを刺しておいてくれよ!」

「バカかよ。そんなことしたら国賊として、俺たちは追い掛け回されるだろうが」

「ですよねー。決着が中途半端だな……どうするのが正解なんだ?」

「まあ、残された貴族は今回の王様が取った行動はいささか強引すぎると、冷ややかな目で見てるみたいだ。それで、おれっちたちに同情してくれてる貴族一派に匿ってもらってるんだ」


 レオンの予想通り、この屋敷は貴族の所有している物件だった。自分たちは王様と敵対した厄介者のはずだ。


 そうだというのにこの国の貴族が匿ってくれた。そこから考えられることはただひとつ。


 自分たちを手駒として使うことだ。


「なるほどな。じゃあ、さっさと王都から脱出しようか!」

「話が早くて助かるぜ! じゃあ、貴族様が用意してくれてる料理を食べたら、即、逃げるぞっ!」

「バーレ、すげえな!? メシで釣るって古典的すぎる戦法じゃんか!」

「腹が減っては戦はできぬ。罠と知ってて飛び込むことも必要だろ?」

「美味い物を食べたいってのもあるんじゃねえの?」

「わかってるじゃーーーん。さあ、食い逃げ上等で行こうぜ!」


 バーレとの話が終わると、見計らったようにメイドのお姉さんが、この部屋へと現れた。


 メイドはこちらへと一礼する。「食事のご用意ができました」との言葉に従い、レオンたちは食堂へと案内される。


「やあ、救国の勇者様。素直にお食事に招かれてくれて助かりますね」

「おう、巻き込まれにきてやったぜ!」

「着席してください。お仲間の方々もどうぞどうぞ」


 テーブルにはこれでもかとごちそうが並べられていた。テーブルの中央には小鹿の丸焼が皿に乗せられている。さらにはフルーツ山盛りの皿もある。


 レオンたちはさっそくとばかりに食事に箸をつける。さすがはこちらを取り込もうとしているだけはあり、どの料理もほっぺたが落ちそうになってしまう。


「お食事を楽しみながら、こちらの話を聞いてもらえると助かります」


 同じテーブルに着席している貴族が言うにはこの王都ではリゼルの街への制裁を唱える派と、手を結ぶべきだという派に真っ二つに割れているとのことであった。


「王を囲むのはリゼルの街に制裁を加えたくて、仕方のない連中ばかりです。王はその者たちの言葉しか耳に入れてはくれませんでした」


 対して、勇者を匿ってくれた貴族は友好派だと名乗ってきた。しかしながら、勇者はここで疑問を抱く。


「えっと……友好派ってのは、どういう意味なの?」

「言葉通りです。リゼルの街と友好、もしくは同盟にまで行きつきたい」

「ふーーーん。聞こえは良いけど、それって、リゼルの街を取り込こもうってことだよね?」

「はーははっ! そこまであくどいことは考えてませんよ?」

「本当に?」

「本当ですとも!」


 貴族の顔をじっくりと見てやった。しかしながら、さすがは魑魅魍魎ちみもうりょうが跋扈する貴族社会で生きてきただけはあると感じさせる。


 まるで仮面を被っているかのように、まったく表情を変えない。いつものレオンたちのおふざけなノリがまったくもって通用しない。


 レオンはついに揺さぶりをかけるのを止める。


 友好派はあくまでもリゼルの街と手を結ぶべきという主張だ。要はリゼルの街にある地上戦艦の武力を取り込みたいということだ。


(どっちにしろ、リゼルの街に自治を認める気はなさそうだな……王様と同じくこの貴族は俺にとって敵になるっ! どうしてこうなるのっ!)


 レオンたちはそもそもリゼルの街に不要な干渉をするなと宣言するために王都へとやってきた。


 蓋を開けてみれば、積極的に制裁する派と、戦力に取り込もうとする友好派の2派閥しかないことを知ることになっただけであった。


「さあ、どんどん食べてください。お代わりもありますので」

「ありがてえ! 三日も寝てたんだ。たっぷり食ってやる! バーレたちも遠慮すんじゃねえぞ! この屋敷の食物庫を空っぽにしてやるぞぉ!」

「そんなに食えねーよ!」

「なんでだよ、バーレ! いつも妹の分まで働きゃならんと、俺の3倍食ってるじゃーーーん!」

「レオンには悪いが、俺たちは毎日3食、この貴族様に食べさせてもらってたんだ!」

「なん……だと!? 俺が寝ている間にもしっかり接待されてやがったのか! ちくしょうちくしょう!」


 レオンはいつも通り、バカ丸出しのやりとりを貴族に見せつける。こうすることで、貴族の油断を誘えると考えたからだ。


 気を良くした貴族はパンパンと手を叩く。するとメイドが5人現れた。彼女たちは横一列に並び、こちらへと一礼してきた。


「ほほう。貴族様、おぬしも悪じゃのう。食欲を満たしたら次は性欲ということじゃな?」

「ふふ……さすがは勇者様。わかっていらっしゃる。好きな娘を選んでください。男の娘もこの中にいますよ?」

「いや!? 男の娘は俺の守備範囲外だから!」

「おや? 英雄、色を好むとは男色も含めてのことなのですが」

「マー――ジで?」

「マーーージです。王様も男の娘を囲っていましたぞ」

「あの王様。あぶらギッシュで性欲も強そうだと思ったら、そっちもイケるのかよっ!」


 貴族から王とはどんな存在かとくとく説明された。王の表の顔だけでなく、裏の顔、夜の顔まで親切ご丁寧に解説された。


 ミルキーは特に男色の解説で鼻息が荒くなっている。彼女から期待が込められた視線を受けた。


 だが、ここは先ほど、ベッドで自分を押し倒してきたメイドのお姉さんを選ばせてもらった。


 すると、ミルキーがエクレアとセットであからさまに汚いものを見る目で睨んできやがった。


(くそぉ! マジで俺が選ぶべき正解を教えてほしいくらいだわっ!)


 貴族はこちらの様子に気をかける素振りも見せずに、メイドのお姉さんに「しっかりと勇者様の世話をするように」と厳しめの口調で言っていた。


 貴族に対して心がざわついてくる。機会が訪れれば、この貴族の顔に拳を叩きこんで、仮面を粉砕してやろうと心に決める。


 仲間たちに断りを入れて、メイドとともに寝室へと向かう。


 エクレアはさすがに自分が何をしようとしているのか察してくれているようで、この場ではさすがにつっかかってはこなかった。


 先ほどの寝室につくなり、メイドのお姉さんが後ろ手にドアを閉め、さらにはご丁寧にドアに鍵をかけてくれた。


 そして、こちらの背中へと身体を預けてきた……。お姉さんが震えているのが伝わってくる。


「では、私の身体の隅々までご利用ください」

「あーーー、ごめん。メイドさんとはねんごろな関係になるつもりはないよ。それにそんなことしようものなら、エクレアが俺のちんこを折ってくる!」

「そうですか。では……エクレアさんには死んでもらいます!」

「ちょっと待って!? どうやったら、そういう流れになるんですかーーー!」


 寝室から退出していこうとしたメイドのお姉さんを急いで取り押さえる。寝室の床へと押し倒し、隠し持っていた果物ナイフを取り上げる。


「こわっ! このナイフで何をしようとしたわけ?」

「はーなーしーてー! 私には歳が離れた妹がいるんですぅ! 妹を守るためには勇者レオンを籠絡しなければならないのですのぉ! 全てが終わった後、自害しようとしてたのぉ!」

「もういやだーーー! 俺って、どんだけ陰謀に巻き込まれるんですかーーー!? 女神様、教えてくださいーーー!」

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