配られた手札を確認する。
ポーカーは手持ちのカードで、より強い組み合わせを作った者が勝利するゲームだ。
ヴェルダージは私たちがカードを確認したのを見ると、コインのようなものを出してきた。
「カジノなんかじゃチップを使うが、俺っちのゲームではこいつを使う。管理はこっちでするから、おまえさんたちは宣言だけしてくれ」
つまりチップを動かす工程は必要なく、枚数だけ言えばヴェルダージの方で管理してくれるらしい。
それぞれが真剣な顔で手元のカードを見ている中、不意に霜月と視線が合った。
既に良いカードを持っているのだろうか。
自分のカードを確認したあと、霜月は私を見て柔らかく微笑んだ。
「ゲームは計三回。最後にコインの総数が最も多かったやつの勝利だ。じゃあまずは霜月からだな。どうする?」
「パスでいい」
「オーケー。なら次は睦月」
「ビッド。二枚追加で」
私の宣言を聞いて、燕と時雨が驚いた表情に変わる。
リブラは何かを思案しているようで、再び手元のカードに目を向けていた。
「あいよ。次は燕だな」
「おれはコールで」
「そんじゃ燕も二枚いただくぜ」
ポーカーはビッドが出た時点で、それ以降の人はパスができなくなる。
打てる手は同じ枚数を賭けるコールか、
もしくは、さらに多い枚数を賭けて競り上げるレイズかだ。
「時雨はどうする?」
「俺はドロップする」
「いいぜ。んじゃ最後はリブラだな」
時雨はこのゲームを棄権することに決めたらしい。
おそらく、現在の手札で賭けに出るのは難しいと判断したのだろう。
ポーカーは一人勝ちのゲームだ。
賭けているコインは、言わば自分の所持金のようなもの。
つまり、今の段階においては、全員マイナスを出している状況に等しい。
ここでさらにマイナスを増やすよりは、
「僕はコールにするよ」
「ならリブラも二枚だな」
一週目が終わり、それぞれがドローを行っていく。
ドローは捨てたカードの枚数だけ、ストックされているカードから補充される仕組みだ。
ヴェルダージが捨てた枚数に応じて、カードを入れ替えてくれる。
「じゃあ二週目だが、睦月から初めてくれ」
「分かった。チェックでお願い」
二週目は、一週目で最初にビッドをした人からスタートする決まりになっている。
そして、パスがチェックという言葉に変わる以外は、同じルールで進んでいく。
燕もチェックを選び、時雨はドロップしているため順番を飛ばされた。
次はリブラの番だが──。
「ビッド。三枚追加で」
「三枚!?」
時雨から驚いた声が上がる。
この段階でビッドを選んだということは、手持ちのカードに相当自信があるようだ。
一気に枚数を稼ぐ気なのだろう。
「三枚だな。そんじゃ、最後は霜月だ。どうする?」
「コール」
霜月はドロップするかと思っていたが、コールを選ぶらしい。
「これで一通り終わったな。今残っているやつらは、手札を公開してくれ」
「じゃあおれから見せるね!」
「お、フルハウスか。やるな燕」
ヴェルダージの声かけで、燕が真っ先に手札を公開した。
燕のカードは7が三枚、Qが二枚のフルハウスだ。
続けて、霜月がカードを見せてくる。
「ストレートフラッシュ……」
「運まで味方かよ」
ストレートフラッシュとは、同じマークのカードで、なおかつ数字が順番に並んでいるものを言う。
霜月のカードには、6から10までの数字がずらりと並んでいた。
ヴェルダージの驚く声に続き、時雨のげんなりした声が響く。
ストレートフラッシュは、ポーカーにおいてほぼ最強に近い組み合わせだ。
かなり絶望的な状況だが、リブラは何やら小刻みに震え出すと、手持ちのカードを勢いよくテーブルに広げた。
「残念だったね! 僕のカードもストレートフラッシュなのさ!」
「おお! やるじゃねぇかリブラ!」
絶句する時雨の横で、燕がパチパチと手を叩いている。
「ふふふ。僕のカードは8からQ。つまり、僕の勝ちってことだね!」
「
喜ぶリブラの向かいでは、律が何とも言えない表情で呟いている。
ほぼ最強に近いストレートフラッシュだが、同じ組み合わせが出た場合、最後の数字が高い方の勝利となるのだ。
綺麗に並んだカードを見ていると、ヴェルダージが気遣うように話しかけてきた。
「あー、睦月はまだ出してなかったよな。違反が検知されない限り、俺っちにもカードは見えないようになってるんだ。この雰囲気の中で悪いが、見せてもらえるか?」
「ごめんね睦月さん。ゲームはまだ二回あるから、次のとき……」
申し訳ない気持ちより、嬉しさの方が
口元がにやけていたリブラだったが、私のカードを見た途端、表情が硬まった。
「ロイヤル……ストレートフラッシュ……」
「どうなってんだこのゲーム!?」
「睦月ちゃんすごい!」
ヴェルダージはテーブルの上を歩き、私のカードを直接覗き込んでいる。
そして、カードのマークがスペードかつ10からAで揃っているのを確認すると、口をぱかりと開けたまま動かなくなってしまった。
霜月が嬉しそうに微笑みかけてくる。
おそらく、最後のターンでのコールは、私が勝つと分かった上で選んだのだろう。
そうすれば、霜月の分も私の勝ち数として計算されるから──。
「信じられない光景ね……。こんなにも手札が
「そう言えば、睦月ちゃんはデートの時もゲームで全部当たりを引いてたんだよ! 幸運の持ち主なのかも!」
「たしかに異様な当たり具合……って、おい! 燕!」
テーブルが一瞬にして