6日の間、お互いに作るべきものを一心不乱に作り続け、目標の数を揃えることが出来た。ほんの少しだけ時間が余ったので、全員で畑に種芋を植えておいた。
作ったものを荷車に積んで、クルルを繋ぐ。剣の方はともかく、槍は数があるというのもあるが、長いのもあって流石にかさばる。少し苦労して積み込んだ。
出発の準備が整ったらさっさと出発してしまうことにする。もうすぐ雨期になるらしいが、今の所はそんな気配もなく森の中は爽やかな空気だ。
虎の心配はほとんどなくなったようなのだが、熊はわりとこの辺りもうろついていることがあるらしいので一応警戒はしておく。鼻が利くのがいるので、過剰に警戒する必要はないとも思うけどな。
無事に森から出ると街道になる。こちらももうすぐ雨期であることを感じさせない青い空と、こちらは雨を楽しみにしているのだろうか、背を伸ばした草原が広がっている。異世界でなかったら普通にのんびりとしてしまいそうな景色だ。
だが勿論、治安の良さは前の世界の日本とは段違いである。警戒を怠るわけにいかないことには変わりない。弓と投げ槍があるにせよ、そもそも使わないに越したことはないのだ。
時折ガサゴソと草原の一部が動いたりしていて、その度に警戒している全員が反応するが、ほぼ「多分うさぎか何かの野生動物」である。今のところこっちまで狩りに来る必要はない(森の生き物で事足りるし)ので、お目にかかることはまずないだろう。
そうして緊張と弛緩を繰り返し、街にたどり着く。ハルバードを持った衛兵さんに会釈をする。いつか使い心地を聞いてみたいところだ。マリウス経由で聞いてみようかな。
今まで結構な割合で視線を俺たちに向けていた街の人たちは、もうほとんど気にしなくなってきている。時折、他所から来たと
カミロの店に到着して、いつもの通りに商談室へ向かう。今日はかなり早く到着した。今日に関してはこの時間に来る可能性はかなり高かったし、予測はしてたんだろう。
「よう、どうだ商売の方は」
「まだなんとかなってるよ」
俺とカミロは軽口で挨拶を交わす。それもそこそこに本題だ。
「それで、言ってた数は用意できたのか?」
「もちろん」
「流石だな。助かるよ」
「仕事だからな」
俺はニヤッと笑って言った。カミロもニヤリと笑う。カミロはそのまま番頭さんに目を向けると、番頭さんは頷いて部屋を出る。
「革命の話なんだが」
番頭さんが出ていったことを確認して、カミロが話を始める。
「革命自体には影響がないらしいんだが、困ったことを聞いてな」
「困った話?」
「ああ」
カミロは頷く。
「今のところは大丈夫だと思うが、どうも帝国軍の動きがおかしいらしいんだよな」
「どこかから情報が漏れてる?」
俺が聞くとカミロは再び頷いた。
「帝国もバカじゃない。諜報員もいるだろうし、動こうとすればある程度気取られるのは仕方ない」
「ふむ……」
「さっきも言ったが、革命には影響がない。問題なのは……」
カミロは一瞬ためらったあと、言葉を続けた。
「どうもヘレンが帝国側に捕まったらしい」