翌日、仮の荷物置き場という名目で目標の裏側にある倉庫を1週間借りることにした。
手続きはフランツさんが行う。勿論偽名だ。
フランツさんはそのまま倉庫で作業をするという体で目標を見張る。
俺たちは一昨日までの通り、自由市で出店している。営業も通常のままだ。
先だっての2日間でそこそこの評価を得たのか、修理の持ち込みがそこそこある。
「昨日は居なかったから、どうしようかと思ったよ。今日は居てくれてよかった」
そんな事を言ってくれるお客さんもいる。鍛冶屋としては嬉しいが、今とその後の状況を考えると複雑ではある。
カミロもなかなかの売れ行きのようだが、少し浮かない顔なのは俺と同じ心境なのだろうか。
「それにしても修理が多いな」
俺は預かった剣を金床において叩きながらカミロに声をかける。
「そうだな。これだけ修理された剣が必要ってことは、もしかすると……」
カミロは返事を途中で濁す。武器が大量に必要で、あんまりおおっぴらに話せないことと言ったら、1つしか思いあたることはない。
「あれか」
「ああ」
革命の決行が近いと考えれば武器が大量に必要なのも納得はできる。
この街は商業都市ではあるが、逆に言えばカネや物が大量に集積されているところでもある。
そこをおさえれば補給が有利になるだろうし、逆に言えば帝国側の補給を厳しくしやすいということでもある。
おさえるのも帝国の補給を止めるだけなら、何も完全に制圧する必要もない。混乱を起こして機能不全に陥らせればいいのだ。
ただし、そうは言ってもなかなか広い街だから、一定の人数はいるだろう。
修理を依頼してくる人間に共通点はないようだが、それもいろんな立場の人間が必要としているとすると納得ができる。
いろんな立場の人間が一斉に必要になるということは、今の状態の俺では原因は1つしか考えられない。
「ちょっと気をつけたほうが良さそうだな」
「そうだな」
そう言葉を交わし、俺とカミロは自分の仕事に戻った。
結局営業時間中にフランツさんが駆け込んでくるようなことはなかった。
その日の夜、翌日の夜には押し入ってでも決行するという話を3人でして俺は自分の部屋に戻った。
そうして眠りこけていると、部屋の扉がドンドンドン!と強く叩かれ、俺は飛び起きる。
「誰だ!」
「俺だよ!」
誰何の声に答えたのはカミロだ。俺は慌てて扉を開ける。
「どうした?」
「聞こえないか?始まったんだよ!」
寝ぼけていたのと動転していて気が付かなかったが、耳を澄ませればカンカンと鐘の音が鳴り響いている。
そうか、始まったのか。俺は急いで外に出る準備を済ませ、3人で宿の外へと飛び出した。